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40代※が選ぶマンガ・ベスト47!作田啓一「マンガの主人公」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

マンガの主人公 (1965年) (至誠堂新書)

マンガの主人公 (1965年) (至誠堂新書)

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  • メディア: 新書

「マンガの主人公」という批評本がアツい!
40代の高学歴な漫画好き3人による共著で、
彼らが価値あると思う漫画47タイトルを挙げている。

…と言っても、昭和40年初版の本。

その47本のラインナップがすごい。
君の好きな漫画は入っているかな?

人の一生岡本一平
「ひとり娘のひね子さん」長崎抜天
団子串助漫遊記」宮尾しげを
ズク小僧一代記」厳谷小波/岡本帰一
正チャンの冒険」織田信恒/樺島勝一
ノンキナトウサン」麻生豊

長靴の三銃士」井本水明/牧野大誓
のらくろ」田川水泡
「黄金バット」加太こうじ

スピード・太郎宍戸左行
蛸の八ちゃん」田川水泡
「男やもめの厳さん」下山凹天
「甘辛新家庭」田中比佐良
「運藤一家」柳瀬正夢
「あわてものの熊さん」前川千帆
只野凡児・人生勉強」麻生豊
「無軌道父娘」下山凹天

「荒馬奥さん」前川千帆
冒険ダン吉」島田啓三
赤ノッポ青ノッポ」武井武雄
「半田半介・青春バンザイ」サトウハチロー/田中比左良
タンクタンクロー」坂本牙城
コグマノコロスケ」吉本三平
「ハツメイハッチャン」武井武雄

日の丸旗之助」中島菊夫
「思ひつき夫人」平井房人
「推進親爺」松下井知夫
「ガンガラがん太」帷子進
フクちゃん」横山隆一

サザエさん」長谷川町子
ヤネウラ3ちゃん」南部正太郎
ふしぎな国のプッチャー横井福次郎
デンスケ」横山隆一
「アホダラ兄弟」加藤芳郎

おトラさん」西川辰美
轟先生」秋好馨
「かっぱ川太郎」清水崑
プーサン横山泰三
少年ケニヤ」山川惣治

アッちゃん」岡部冬彦
まっぴら君加藤芳郎
「月光仮面」川内康範/井上球二
ポンコツおやじ富永一朗

ロボット三等兵」前谷惟光
鉄腕アトム」手塚治虫
忍者武芸帳 影丸伝白土三平
クリちゃん」根本進

さくちゃん2.png

そこには「あしたのジョー(※1967年)」も、「鉄人28号」も、
水木しげるも藤子不二雄も赤塚不二夫も石ノ森章太郎もなかった。
最近、漫画史を調べている俺ですら知らないタイトルがチラホラ。
同じ漫画好きなのに話が合わなそう!

…というか、
俺の好きな漫画も、若いやつからはこういう風に見られるのか!
と思うとショックである。

普通の人が理解できるのはサザエさん、鉄腕アトムぐらいだろう。
月光仮面、黄金バット、のらくろ、などは懐かしのTV番組とかで取り上げられる機会が多いので、まだ知ってる人も多そうだ。

手塚治虫の作品が一作しか無いのに対し、
麻生豊、田河水泡、横山隆一、下山凹天、武井武雄、前川千帆、田中比左良が二作取り上げられている。

「鉄腕アトム」の項も純粋に作品批評であり、手塚治虫の作家性については一切言及がない。
やはり手塚治虫は戦後だったからこそ受け入れられた漫画家なのか。

終戦直後の漫画好き少年は思った。「手塚治虫の新宝島は漫画の退化だ」comic新現実Vol.4

 
この本を書いているのは
作田啓一(1922-2016年)94歳没(当時43歳)

多田道太郎(1924-2007年)83歳没(当時41歳)

津金沢聡広(1932-2022年)89歳没(当時33歳)

さくちゃん1.png

全員がウィキペディアに項目があり、全員大学教授になっとる!Σ(°Д°;
ちなみに、選ぶ漫画がなぜ47作なのかというと、
忠臣蔵四十七士からな訳で、まあ年寄りくさい。

さすがインテリなだけあって、漫画論が賢い。
「近頃の漫画はダメになった」みたいな、チンパンジーみたいな老害意見に陥らない。
「誰だって、若い頃に読んだ漫画が一番!」という真理に到達している。

-----------------以下引用-----------------
そこでわかったことは
マンガの読書はそれぞれ幼少期の思い出にかたく結ばれており、
それ以後の「成長」はみられないということだ。

ひとが思い出のマンガをなつかしむのは、
自分の幼いたましいそのものをなつかしむのである。
マンガの主人公のまわりに、ひとは幼いたましいの思い出を粘品させている。

いや世代の思い出さえそこに結晶させているのである。
「冒険ダン吉」を愛した世代、「ロボット三等兵」を愛した世代、そして「鉄腕アトム」を愛する世代。

日本文化は各世代でするどい断層でたちきられている。
そのことを思いしらせるのも、マンガの歴史の一教訓だ。

ひとは、幼年のたましいをなつかしむと同時に、
歴史のながれにたって自分のたましいそのものを客観視することができる。
自分のすきなマンガを先輩後輩の愛するマンガの群のなかにおけば、
昭和史に位置ずけられた自分のたましいを見さだめることができよう。
---------------引用ここまで---------------

この「日本文化は各世代でするどい断層でたちきられている。」という指摘は鋭いと思う。
意外と世代を超えられる名作というのは少ない。
厳密に言えば、存在しないのかもしれない。

 
どうでもいいがこの本、誤植が多い。
「スピード太郎」を「スピード小僧」と書いてたり、
「運一家」を「運一家」と書いてたり、
横井福郎を横井福郎と書いてたり、他にも微妙な間違いが散見される。

編集に関わってる人があまり漫画に興味がない気がする。
主人公を紹介する、というコンセプトも意思疎通ができてないのではないかとも思う。
自分が入手したのは初版だが、一応増刷もかけられたようである。

 
冒険ダン吉は「こち亀」などにも名前が出てくる作品なので、
知ってるけど読んだことがないという人が多いと思う。

さくちゃん4.png

南の島に漂着した少年が、原住民相手に戦争ごっこみたいなことをする漫画らしいのだが、
「マンガの主人公」の解説によると、少年の頃にこの漫画を読んだ読者が大人になって、
実際に南の島に派兵されてリアルダン吉体験をした、
「ある意味予言の書である」みたいな解説を読んで背筋が寒くなった。

さくちゃん3.png
(画像は あおむら純「少年少女日本の歴史」20巻

なので冒険ダン吉を購入して読んでみることにしました。





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