中山美穂は弟AD中山の名曲「ラストコンテニュー」をどう聞いたか。 [あの人は今]
過去記事を「note」に移植中です。近いうち、新記事もそちらで書きます。
中山美穂が突然亡くなられた。
寒暖差で起こるお風呂の事故、ヒートショックだったらしい。
ヒートショック怖い。
実家ではこの時期、脱衣所に電気ストーブつけている。
正直それでも寒くて辛い。
金持ちならこんな思いはしなくて済むのにと思うのだが今回の件で、
中山美穂クラスでもちゃんとした暖房完備の脱衣所のあるとこには住めないのか?そう思ったのだが、
どうもそういうことではないらしい。
湯船に入る時、一気に胸まで浸かってしまうのがいけないようだ。
ネットで見たのだが、水島新司のドカベンで、なぜかちゃんとした湯船の浸かり方が紹介されていた。
足をつけてから胸まで3分ぐらいかけて浸かるのが良いらしい。
中山美穂は入浴時酔っていて、その辺ができなかったのではという分析もネットではされていた。
さて中山美穂といえば、天下とったアイドル歌手の一人。
私はその世代ではないのだけれども、ファミコンの「中山美穂のトキメキハイスクール」は当時すごい話題になった。アドベンチャーゲームが好きだからという理由で自分も遊んでいた。
「中山美穂のトキメキハイスクール」は、
ゲームシナリオの要所要所を、画面から指定する番号に電話して補完するというコンセプトのゲームだった。
子供心に電話が億劫で、
最初は電話せずゲームを進めてたのだが、当然話がよく分からなくなる。
仕方がないので意を決して電話をかけてみたら、電話の向こうからイラついたオッサンの声が。
「もしもし…もしもし!だーれーなーの?」
イラつくオッサンの声。
やばい、番号間違えた!
と思ってしどろもどろで謝ったところ、
中山美穂がマネージャーから受話器を奪って、
「ごめんね、今仕事中だったの」
…そんなユーザーを驚かそうという演出だったのでした。
「やられた!」と思いました。
でえ、
ツイッターXを見ていたら、
ゲームセンターCXのポンコツADとして有名な中山(智明)が、
中山美穂の弟だという情報が回ってきた。
マジだ!Σ(°Д°;
こんな時期に不謹慎だとは思うが、驚き倒してしまった。
なにせAD中山が番組に登場してからもう10年以上も経つだろうか。
全くの初耳だったのである。
誰かに似てるなーとは思ってたんだよ。
中山美穂と中山忍、そんなカリスマお姉さんが二人もいる家に生まれるなんて、運がいいやら悪いやら。
浮世離れした性格も、なんか全部腑に落ちた。
名曲、ラストコンテニューも中山美穂が目を細めながら視聴していたのかと思うとなんかいい。
まあこの時期に不謹慎な話ですけども、ずっと内緒にされてたんだからしゃあない。
水くさいぞ中山!
おそらく「ファミコン」というキーワードに引っかかって去年自動録画されてたやつ。
— shinyaman (@shinyaman2) December 11, 2024
消さずに残してた。
中山美穂さんがスーパーマリオをプレイしてる貴重な映像。
さすがにアイドルとして忙しかった時期にファミコンで遊ぶということ自体してこなかったんだろうねw pic.twitter.com/V4TNUOBDlm
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ニセ札犯から転身した漫画家、赤瀬川原平という人がいた!Σ(°Д°; [あの人は今]
この年になっても漫画は知らないことばかりだ。
偽札犯の名前は赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)という。
まずその存在を知ったのは「現代漫画博物館1945-2005」という本。
終戦直後から60年間、漫画史に残る750タイトルを選び紹介する内容だ。
偽札犯、赤瀬川原平は1970年を代表する20本の中に「櫻画報」(さくらがほう)で選ばれている。
菫画報の元ネタ?
その櫻画報を紹介するために引用されたコマは、つげ義春「李さん一家」のパロディ。
紹介文を読むと風刺漫画っぽい。
「文藝春秋漫画賞の47年」を調べてみたが受賞もノミネートもない。
ただ「孤独のグルメ」の久住昌之が1999年に「中学生日記」で受賞した際、
「赤瀬川原平に師事」と書かれていたことから、赤瀬川原平がそれだけ高名な人だというのは伝わる。美学校の講師をしていたらしい。
さらにウィキを調べてみて、
赤瀬川原平が「表面だけの千円札」を作ったとして、有罪判決を受けたと知ったのである。
厳密にいうと偽札犯では無く、「紙幣と間違える紛らわしいものを作った罪」なのではあるが、色々込み入った話なので簡潔にさせていただく。本人も「千円札を印刷したら起訴されて有罪になっちゃいました」と書いているし。
要するに赤瀬川原平は前衛芸術家なのだ。
千円札裁判終了後、弁護した瀧口修造に赤瀬川がお礼に送った千円札オブジェが4分18秒に登場する動画。
赤瀬川原平は執行猶予になった後、つげ義春「李さん一家」を読んで深い感銘を受け、「ガロ」で「御座敷」という漫画を発表。同誌の人気漫画家だった佐々木マキが推薦されて朝日ジャーナルで作品を発表し、手塚治虫以外に好評だった流れで赤瀬川原平にも朝日ジャーナル連載のオファーがくる。
そこで赤瀬川原平は前述の「櫻画報」を始めるのだが、その中で朝日新聞を揶揄する漫画を描いたことが上層部で問題になり、掲載号は回収され2週間の休刊、編集長は更迭、61人が人事異動を喰らう大混乱をもたらした。すごい風刺であり、アートだと思う。
ルバング島に潜伏していた日本兵も「偏向しとる」と思ったぐらい朝日はアカイのである。
この「櫻画報」の文庫版を購入してみた。
本の冒頭、序文が終わったらまた序文が始まるのを繰り返す。
計4度、18ページにわたって、新装版が出るたび書いた序文を収録しているのだから人を喰っている。
コンセプトは櫻画報そのものが本体の独立した雑誌であり、
掲載誌の朝日ジャーナルは包み紙にすぎないというものだ。
その中でゼロ円札を有料で交換するということもやっている。
欄外の煽りの、「善は急げ!悪も急げ!!」がなんかツボ。
肝心の漫画の内容であるが、正直よく分からない。
コマ漫画というより、グラビア漫画といった感じだ。
絵柄は水木しげるっぽく、かなり上手い劇画タッチだと感じた。
ちなみに水木しげるのアシスタントが描いた「水木先生とぼく」にも、
赤瀬川原平が水木プロを来訪する客として、つげ義春らと一緒に登場する。
(中央が赤瀬川原平)
櫻画報だけだとよく分からないので、赤瀬川漫画の代表作としてよく挙げられる「御座敷」「おざ式」を読まないと肝心なことは分からないと思ったので、大枚はたいて「赤瀬川原平漫画大全」を購入。赤瀬川原平が亡くなった翌2015年に出版されたもので定価が2800円。中古相場はその倍だ。
デビュー作「御座敷」は良かったが、テンションはそこがピークだったと感じた。
やはり本業は芸術家で、そこまで漫画にのめり込むというほどのものでは無かったのだろうと思う。
こち亀でも出てくる「トマソン」を始めたのも赤瀬川原平だったというからすごい。
他にも「老人力」を流行らせたり、
今でいう、みうらじゅんみたいな人なのだ。
とりみき「トマソンの罠」という短編にも赤瀬川原平の名前が。
と、そんなことをやってる折、
他にも漫画史を調べている過程で、そろそろ読まねばならないと思った本が出てきた。
風刺漫画で投獄されたりした宮武外骨(みやたけがいこつ)を紹介した本、「外骨という人がいた!」である。
この本、小学生ぐらいの頃に父から「面白いから読め」と勧められていたが、文字だけの本が苦手なので読まずにいた。しかし「外骨」という名前のインパクトは、ずっと記憶に残っていた。
購入の際、「外骨という人がいた!」の著者が赤瀬川原平だったのでビックリした。
こんな昔から俺は赤瀬川原平に触れていたのか!
櫻画報にも宮武外骨の滑稽新聞の引用が多数あったので気になってた。
ちなみに赤瀬川原平は直木賞作家でもある。
実家の居間の壁一面を本棚にしたほどの読書家の父が赤瀬川原平にどういう印象をもっていたのか興味深いが、数年前に死んでしまっているので聞くことはできない。
「外骨という人がいた!」は面白く、
全25巻で定価20マン以上する宮武外骨全集を散々悩んで購入してしまった。
親父も読みたかっただろうなと、その中の数冊を仏壇に供えたのだが、
そのせいか夢の中で親父から「迎えに行く」とメールがきたので、ここ数日死なないようにしている。
●2024年7月18日追記
誤字修正しました→正:赤瀬川原平/誤:赤瀬川源平
赤瀬川原平: 現代赤瀬川考 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/10/28
- メディア: ムック
ドブに沈んだ19歳新人漫画家。豊島雅男「不眠症」 [あの人は今]
「ガロ」編集長―私の戦後マンガ出版史 (ちくま文庫 な 4-1)
- 作者: 長井 勝一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1987/09/01
- メディア: 文庫
長井勝一 「ガロ編集長」を読んだ。
さまざまな漫画家を世に送り出してきた名編集者の自伝本だ。
満州で山師をしていた話から、赤本、貸本漫画、ガロ。その人生は漫画の歴史そのもの。
面白くないわけがない。
(水木しげるの漫画に出演する長井勝一)
本の中で、長井氏の記憶に残るさまざまな漫画家を紹介しているのだが、
その中で一人、えええええーっ!っと驚いてしまう人物が挙げられていた。
その名は豊島雅男。
誰だ。
名前だけじゃ自分だってピンとこない。
しかし長井さんの文章を読んでいくうちに、
水木しげるの漫画の出てきた人だ!と気づいたのである。
漫画界のレジェンドである水木しげる、つげ義春、池上遼一、
彼らの顔にタバコの煙を吹きかける、
とんでもなく横柄で、嫌われ者のアシスタントとして豊島雅男は描写されている。
(豊島にタバコの煙を吹きかけられている三毛は、つげ義春がモデル)
(豊島は豊川名義になっている。タバコの煙を吹きかけられているのは池上遼一がモデル)
自分は、豊島が出てくる漫画が収録された水木しげるの単行本を三冊持っている。
それぞれ微妙に違うが、ほとんど同じ話だ。
おそらく1973年に描かれた「ドブ川に死す」がオリジナルなのだろう。
自分が先に読んだのは、オリジナルの2年後に描かれた「漫画狂の詩」。
どちらも「ビビビの貧乏時代」に収録されている。
「漫画狂の詩」ではタバコの煙を吹きかける豊島の奇行にただ驚かされただけだったが、
「ドブ川に死す」での豊島は、最後にラリってドブ川に落ちて死んでいたので驚いた。
豊島の訃報を知った水木だったが意に介さず。
それよりも朝食のパンが焦げたことに心を動かされる。
この漫画のラストがなんか好きだ。
佐藤まさあきにとっても豊島は印象的なアシスタントだったらしく、
自伝「劇画の星をめざして」を読んだら豊島のことが描かれていて驚いた。
>水木しげるから「アシスタントを一人回すから使ってやってほしい」という電話が入った。「どんな人物や。あんたとこで持て余したからこっちへ回すのと違うか?」と冗談で言ったのだが、水木の返事は「ううう…、そ、そんなことはナイっす」と、どうも歯切れが悪い。後から知ったことだが、この男は水木の顔にタバコの煙を吹っかけたり、当時、水木プロにいた池上遼一やつげ義春なんかを、人を人とも思わぬ態度で、水木も持て余していたらしい。それで、「あんた佐藤プロへ行ったらどう?」と言って厄介払いをしたということだった。
豊島が辞めないなら自分らが辞める。
アシスタントが口々に言うので、ついに豊島は水木プロ追放となる。
(このコマの藤山プロは佐藤プロがモデルだと思われる)
しかし佐藤プロはあまりにもハードだったらしく、豊島は水木プロに逃げ帰ってしまう。
「劇画の星をめざして」にはこう続いている。
>ところが三日ほどもした朝、事務所に出てみると、布団がきちんと畳んであって、本人は影も形もない。再び水木のところへ逃げ帰ってしまったのだ。その男が帰って水木に言うには、「あそこは地獄プロです。夜中の4時まで仕事をさせられて、やっと眠ったと思うと朝の9時にマネージャーの兄貴が叩き起こしにきます。あそこではとても身体がもちません。もう一度ここに置いてください」と言ったそうである。さすがの水木プロの持て余し者も、佐藤プロでは通用しなかったようだ。それにしても根性がない。うちでは近藤も村松も川崎も文句を言わず、平気で仕事をしていたものを…。余談だがこの男は、のちにフーテンの仲間に入り、ある朝、新宿御苑の池の中に落ちて死んでいたそうである。シンナーかなにかの吸いすぎということだった。
ちなみに「ドブ川に死す」では豊島水死のきっかけになった薬物はシンナーではなく、
睡眠薬となっている。
話を最初に戻す。
そんな豊島雅男が「ガロ編集長」にも印象深い人物として登場していたから驚いたのだ。
なんと豊島はガロで入選を果たしていたのである。
「漫画狂の詩」でも、17歳で二科展に入選した経歴が紹介されていた。
人格はともかく、才能あった人だったのだ。
しかし長井が言うには、
絵は新人離れしていたが作風はあまり個性的とは言えず、
処女作以降はパッとせず、苦しんでいたと言う。
「ガロ編集長」を読んでさらに驚いたのが、
豊島が結核もちだったと書かれていたことだ。
長井も結核で何度も死にかけた過去があり、水木と一緒に相談にのっていたという。
長井は生活保護を受けてでも治療に専念すべしとアドバイスしていたが、
豊島はその決心がつかないままズルズルと日々を過ごし、悲惨な結末を迎えてしまったという。
自分の知る限り、豊島の出てくる水木作品は改稿含めて3本あるが、
いずれも結核だったとは描かれていない。
なぜ水木しげるは豊島の結核エピソードを描かなかったのか。
おそらく読者に同情する余地を与えたくなかったのではないか。
そこまでのものが豊島のキャラクターにあったのだろうか。
結核とは肺病である。空気感染する。
肺病持ちがタバコ吸うのもすごいが、
うつる病気なのに相手の顔に煙を吹きかけてたというのも、
嫌われて当然すぎてよく分からない話だ。
ほとんど暴行罪。
そんな豊島雅男が描いた漫画とはどんなだったのか。
せっかくなので、豊島の作品が掲載されたガロ1967年11月号を購入してみた。
月刊漫画 ガロ 1967年11月号 (通巻39号) 白土三平カムイ伝㉟ 林静一処女作掲載号
- 出版社/メーカー: 青林堂
- 発売日: 2024/02/11
- メディア: 雑誌
作品タイトルは「不眠症」。
読んだ感想は長井さんとあまり変わらなかった。
ネタバレになるのだが、
ようやく眠れたと思ったら死んでいたと言うのがオチで、
睡眠薬の服用による事故で死んだ豊島の最期を暗示した作品と言えないこともない。
この豊島作品が掲載されたガロには、
先輩アシスタントの池上遼一と、師匠の水木しげるの作品も掲載されている。
また、豊島と一緒にこのガロ11月号でデビューした林静一はその後、
漫画「赤色エレジー」や、小梅ちゃんのパッケージイラストを描いて有名になった。
豊島雅男にも、いろんな可能性があったのは間違いない。
しかし全てはドブに捨てられたのである。
水木作品には 水木しげる 先生の家族や知人など身近な人が多く登場するが、アシスタントも水木漫画のキャラクターになってしまう。池上遼一 氏の事を描いた作品もあるし、どぶ川で亡くなった豊川こと 豊島雅男 氏の話もある。実際の写真と比べると特徴をよく捉えたデフォルメなのがわかる#水木しげる pic.twitter.com/yF0KnGYLAo
— 福井宏明【ケセラセラなギター弾き】 (@37eWBvYBKB4hMhZ) November 1, 2023
裁判中に千秋でアニメ化。ノンタンといっしょだった漫画家、オオトモヨシヤス [あの人は今]
オオトモヨシヤスという名前が出てくる。
オオトモヨシヤスは漫画家の弟子なのだが、その後どうなったかは分からないまま。
あとで劇画漂流の文章版「劇画暮らし」を読んだら、
オオトモヨシヤスがのちのノンタンの作者と書かれていて、ビビってたじろいだ。
ひどいよノンタンひどいよ。
辰巳ヨシヒロはいわゆる天才漫画少年だった。
手塚治虫や大城のぼるが原稿を預かって、出版化を交渉するぐらいの天才。
ちなみに大城のぼるについて説明しておくと、
手塚より先に漫画に映画的手法を持ち込んだとも言われる漫画家。
オオトモヨシヤスはその大城の内弟子の一人。
多忙な大城はオオトモに代筆させて、辰巳と交流をしていた。
横山光輝「闇におどる猫」に出演するオオトモヨシヤス。
岸本は岸本修。
そんなオオトモさんが描いたと劇画漂流に書かれているノンタン。
千秋が声優を務めたアニメ版で記憶している人も多いのでは無いでしょうか。
子供の頃にアンパンマンと同じぐらい何度も読み返しましたけども、
正直言って作者の名前を意識したことはありませんでした。
改めてネットで書影を確認してみると、表紙に書かれた名前はキヨノサチコ。
オオトモヨシヤスの名前はどこにもありません。
ウィキを調べてみたら、オオトモヨシヤスは本名が大友義康。
大友はキヨノサチコの元旦那さんで、漫画の師弟関係でもあったそう。
「二人でノンタン」という本も出している。共同執筆者だったのだ。
しかし離婚をきっかけに著作権をめぐって9年間も争う裁判に。
大友の死後、キヨノが勝訴してノンタンの著作権者に一本化されたと書いてありました。
裁判が始まったのが1990年で結審したのが1999年。
千秋版が放送されたのが1992年から1994年の間だったという。
よくアニメ化できたな!
アニメのオープニングには原作者の表記がなかった。
ウィキによると、ノンタンの累計発行部数は3300万部超え。
一冊で100万部超えてるのもたくさん。200万部超えもある。
すごいよノンタンすごいよ。
オオトモヨシヤスは裁判中の1995年に61歳で他界。
キヨノサチコは2008年に60歳で亡くなる。
ウィキには二人でノンタンの原型となる企画の持ち込みをしたとあるが、
公式のノンタン誕生のページにはオオトモヨシヤスの名前は無い。
ひどいよノンタンひどいよ。
伝説のオレよりトーンを使った漫画、悠宇樹「マジカルトワイライト」 [あの人は今]
「どんな漫画ですか?」
「読んだことないのでタイトルも内容も分からないんですけど。」
「内容も分からない?」
「はい。ただ、ある漫画家の絵にそっくりらしいんです。
そして、その人よりもスクリーントーンを使ってるらしいんです。」
「ははあ、アレかな。」
悠宇樹(ゆうき)
「マジカルトワイライト」
伝説のエロ漫画である。
麻宮騎亜が「サイレントメビウス」3巻のオマケ漫画で触れて、知る人ぞ知る作品となった。
当時、中高生に大人気だった麻宮騎亜だが、
悠宇樹の絵はそれにそっくりで、しかもエロ漫画なのである!
中高生はときめくしかない。
どちらが麻宮騎亜で悠宇樹かお分かりだろうか。正解は記事の一番下。
ただし当時はインターネットもない時代。
地方の書店のエロ漫画の流通量などたかが知れている。
作者のペンネームも、タイトルすら分からないのだ。
人に聞くのもはばかる内容だし。
麻宮騎亜そっくりのエロ漫画があるらしいと、半ば伝説と化していた。
本物を見たのは、高校の同級生が学校に持ってきていたのを見た時。
グループが違ったので、チラッとしか見ることができなかった。
ネット全盛の時代になってから、
時々思い出してはちょくちょく調べてはいたのだが、なかなか芯をくった情報に辿り着けず。
(ちなみに冒頭の会話はフィクションです)
最近、ツイッターで情報が流れてきたので検索してみたら、
問題の作品がAmazonで紙の本と電子書籍で販売されていることがわかった。
紙の本も、絶版だがそれほど高騰はしていない。
オンデマンド印刷のペーパーバック版も、エピソード単位から購入できるようだ。
ただ、いくつか単行本がある中で、
どれに問題の漫画が載っているのか分からなかったので、
思い切ってそれらしいのを三冊購入してみた。
「マジカルトワイライト」
「スウィートパーティー」
「トロピカルアイズ」
読んでみた結果、
マジカルトワイライトが正解だったようだ。
奥付を見るとマジカルトワイライトは1ヶ月経たずに3刷になっている。
他二冊も全て重版。いずれも1992年の刊行。超売れっ子だ。
ちなみに悠宇樹原作のビデオアニメ作品に「マジカルトワイライト」があるが、
そのアニメの原作本ではない。
購入した三冊はいずれもエロ漫画の短編集で、
探していたサイレントメビウスそっくりの作品はマジカルトワイライト収録の「待ってよダーリン!」。
犯人を捜索するサイバーポリスの婦警が、逆に手篭めにされてしまうという内容。
それにしても絵がそっくりだ。勿論見比べると画力の差は圧倒的なんだけど。
麻宮騎亜だけでなく、
「電影少女」を大ヒットさせていた桂正和の影響を感じる作品もある。
こちらの再現度はそれほどでもない。
エロ漫画としては、
当時の主要ターゲットをお値段以上満足させるものだったと想像が出来るが、
この年になって読むと陳腐に感じてしまうのはしょうがない。
(画像は「スウィートパーティー」)
中高生の性への憧れがふんだんに描写されていて、読んでいて微笑ましくもある。
作者だって当時の俺たちとあまり年齢が変わらなかったのだろう。
若者が妄想を膨らませて描いたリアリティの無いエロを、
大人はあまりめくじら立てて取り締まらなくてもいいんじゃ無いかと思った。
<クイズの答え>左が麻宮騎亜、右が悠宇樹
みんなが「ハイチャ!」と挨拶していた時代の漫画たち [あの人は今]
なんだこれ、どういう日本語?
光文社「少年」傑作集4巻収録の関谷ひさしの「愛犬クマ」(1960年)の中のセリフなんですけど。
まさかDr.スランプ(1980年)のバイちゃの誤植ではないよね?
調べてみると、
幼児語で「はい ちゃいなら」の略。昔は常識的な言葉だったらしい。
かわいくないか?女子高生の間で流行りそう。
「ハクション大魔王」(1969年)や「奥様は魔女」(1966年)、「ルパン三世カリオストロの城」(1979年)の中でも使われているとか。
カリオストロの城を見てみたが、
司祭に化けたルパンが結婚式をぶち壊してズラかる場面で
「でわー、ハイチャっ!」と山田康雄の声で言っている。
全然気づかなかった!
カリオストロの城におけるハイチャ pic.twitter.com/X6lHlbGB4i
— ムゲンホンダナ(本棚持ち歩き隊) (@hondanamotiaru) July 2, 2023
ということは、Dr.スランプの「バイちゃ」は「ハイチャ」をもじったギャグなのだろう。
あまりにもバイちゃが普及したせいで、アラレちゃん終了後にバイちゃと一緒にハイチャも死語になった、そういうことなのではないかと思うが皆様はどう思われるか。
杉浦茂「少年西遊記」では「ハイチャイ」を発見。1956年ごろの作品。
鉄腕アトム「アトム対ガロン」にも「はいちゃ」があった。これは1962年の作品。
白土三平「サスケ」でも使われているという情報をいただいた。1961年開始の漫画
この項は新しい情報が入り次第、追記していく予定。
それでは はいちゃ!
<2023年10月21日追記>
つげ義春初期傑作長編集2巻「忍法秘帳」1961年
https://t.co/gjEHRL6mf9 pic.twitter.com/BBE0WifR2r
— ムゲンホンダナ(本棚持ち歩き隊) (@hondanamotiaru) March 17, 2024
みなもと太郎の弟子、大塚英志の責任編集「comic新現実」で風雲児たちアニメ化の逸話 [あの人は今]
タイトルは「comic新現実」。2004年発行で、「多重人格探偵サイコ」の大塚英志が編集長を務める雑誌なのだそうだ。
Comic新現実 v.2―大塚英志プロデュース (単行本コミックス)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2023/07/06
- メディア: コミック
読んで、まず目についたのがアニメ「Mr.味っ子」「Gガンダム」「ジャイアントロボ」の今川泰宏監督インタビュー。みなもと太郎ファンなら今川監督が「風雲児たち」をアニメ化してくれればいいのにと思いながら読んでいたら、なんと今川監督は解体新書編の頃に「風雲児たち」のアニメ化を打診していたという!
なななななんだってー!
しかもみなもと太郎はそれを断ったという!
「まだ本筋に入ってないから」と言う理由で!
なななななんて勿体無いことを!
しかもあんた本筋に入ったの、それから何十年年後よ?
結局40年連載を続けた「風雲児たち」は完結しないまま、品質に見合った人気を得られないまま、みなもと先生は亡くなられてしまった。結局、解体新書編は三谷幸喜によって2018年にNHKドラマになった。
解体新書編の前野良沢は、作者本人の性格が表れているのでは無いかと思った。
懲りずに今川監督は、その後も「レ・ミゼラブル」のアニメ化を何度も企画していたんだと。
さらに衝撃の事実。
手塚治虫の「ブラックジャック」の元ネタはみなもと太郎かもしれないという。
BS漫画夜話で「ブラックジャック」の回が放送された時に、「ある本で手塚治虫がブラックジャックキャラクターはみなもと太郎からいただいたと言っていましたが本当でしょうか?」と言う書き込みがあったという。
この話の時点で「ある本」は発見されておらず、現在においても発見されてるか不明。文章もよく読むと、手塚治虫本人が言ってるのを本当でしょうかと問うのは変で、書き込んだ本人がソースを見たわけではないのかもしれないという考え方もできる。
しかしブラックジャックの3年前に描いた「さすらいのむこうきず」の主人公デザインは確かにブラックジャックそっくりのキャラクターだ。スポーンのハンバーガーヘッドのようでもある。
ブラックジャック本編にも、みなもと太郎のパロディがある。
(ブラックジャック秋田文庫版3巻「赤ちゃんのバラード」)
手塚治虫は「ルードヴィッヒB」の中でも、みなもと太郎を天才の一人だと紹介している。ここは素直にブラックジャックの元ネタはみなもと太郎として良いと思うのだが、みなさんはどう思われるか。
非常にマニアックなムック、comic新現実は6号で終了。(当初の予定通りと強調してる)
毎号、みなもと太郎と大塚英志のディープな漫画対談があるので、全号購入してしまった。
なんと大塚英志はみなもと太郎の元アシスタントだというから驚きだ。
comic新現実は他に、かがみあきら、吾妻ひでお、あすなひろしなどを特集している。
5号は貞本義行特集。単行本未収録の漫画2本「DIRTY WORK」「System of Romance」を再掲載している。
パタリロ!削除されたタマネギ部隊初登場回のミステリーと、作者すら忘れた真実 [あの人は今]
「パタリロ!」の魔夜峰央が謝罪した件を調べていた時のこと。
「魔夜峰央」「謝罪」で調べていたら、別件が引っかかった。
なんとパタリロ!の中の一編が、読者が読むことができない封印回になっていたというのだ。
2014年ごろに解決した話だそうだが、全然知らんかった。
既知の人にはしばらく退屈な話が続くが我慢して読んでいただきたい。
その一編は、単行本4巻に収録された「マリネラの吸血鬼」。
心臓の弱い資産家の老婦人の財産を狙った甥っ子が、ラジオ等を使って老婦人を殺してしまう話。
ラジオから「おお…」と死んだはずの人の声が聞こえてくるコマが印象的でよく覚えている。
これは実はアガサ・クリスティーの短編、「ラジオ」が元ネタで、
ある大学のミステリー研究会から、盗作だから原作者にチクると手紙がきて、
以降単行本から削除され、文庫版でも未収録のままだったという。
その後、権利者の許可をもらい2014年にパタリロ!文庫版50巻で復活再掲載。
手持ちの単行本4巻を確認すると「マリネラの吸血鬼」が収録されていた版だった。
びっくりしたのはこれがタマネギ部隊の実質的な初登場回だということ。
これが欠番になってたというのは作品的にかなりのダメージなんじゃなかろうか。
文庫版50巻には当時の回想と、その後の経緯にふれた漫画が掲載されてるというので取り寄せてみた。
ついでにクリスティーの「ラジオ」が収録されているという短編集、「闇の猟犬」も購入。
本が届くのを待ってる間にネットで見つけた、
アガサ・クリスティーの人柄が分かる情報を紹介する。
クリスティーの家に一泊した日本人読者がいたらしい。
その人は数藤康雄さん。
大学時代、テープレコーダーを研究する研究室に所属していた時のこと。
1926年の小説「アクロイド殺し」に録音機を使ったトリックが存在することを知り、
当時にそんなトリックに使える録音機はないだろうとクリスティに手紙を送ったところ、
3週間後に「デクタフォンってのがありましたよ。」と返信が来て感激したという。
その後、文通のようになり、
ロンドンに行くので会えないかと送ったら「別宅なら一泊どうぞ」という話になったらしい。
TBSラジオで紹介された話で、クリスティとの2ショット写真も公開されている。
原作は読んだことないが、
三谷幸喜の「黒井戸殺し」を見てデクタフォンがすごく印象に残っていた。
原作は1926年。初めて邦訳されたのが29年後の1956年だという。
書いた当時が舞台の作品に、時代考証が間違っていると恐らく英文でクレームをつけてしまうとはすごい恥ずかしい話である。にもかかわらずこのアガサ・クリスティーの寛容な態度。
アガサ・クリスティーがそういった人物なのだということはまず心に留めておきたい。
さて、文庫版パタリロ!50巻と死の猟犬が届いたので話の続きを。
当時を回想した書き下ろし漫画はその本の巻頭、マリネラの吸血鬼の冒頭に挿入されていた。
ページ数は2ページ。その次のページに原作者、アガサ・クリスティーのクレジットが入っている。
よく見ると事実関係は割ととあやふやに書かれている。
魔夜峰央は漫画の中で、
「4巻目が発売されてすぐ」、と書いている。
さらに、
「がんばってパタリロコミックス10巻を目指そう」
と、編集長から言葉をもらったと描いている。
なんか引っかかるなと思って手持ちの単行本の奥付を確認すると、
初出が1980年の花とゆめ5号。
単行本4巻の初版が1980年5月25日。
ん?1982年6月25日の10刷???
…「4巻が発売されてすぐ」の話じゃなかったの?
「すぐ」から2年経過しているのに、手持ちの10刷にはマリネラの吸血鬼が掲載されてる!
もちろん削除の決定から実行に移すまである程度、時間はかかるだろう。
それにしたって2年は時間経ちすぎだし、10刷は刷りすぎだ。
おまけに10刷になった1982年はパタリロ!がアニメ化された年で、マリネラの吸血鬼も第12話でしっかりアニメ化されているのだ!
法的に揉めそうとわかって封印を決めた作品を2年後にアニメ化するだろうか。
ありえない。
じゃあ1982年の10刷以降に封印が決まったのでは?と仮定する。
すると今度は編集長にもらった言葉、
「10巻まで出そう」に矛盾が生じる。
1982年5月にはパタリロ!は13巻まで刊行されているからだ。
ひょっとして編集者が削除すると言っておいて削除しなかったのかもしれない。
本当に「マリネラの吸血鬼」未収録のパタリロ!4巻は存在するのだろうか?
何か載ってないかとAmazonの書評を調べると、マリネラの吸血鬼未掲載の4巻を買った人のレビューを発見。
それによるとマリネラの吸血鬼が未収録になったのは15刷からであり、
(※これを書いている現在、ウィキペディアには16刷以降と書かれている)
それ以前のものはコレクター価格になっているという。
自分が現在所有している10刷は中古でまとめて安く買い直したものなのだが、ラッキーだった。
書評は2006年のもので、アニメ版「マリネラの吸血鬼」にも触れられているが当時は事情が明らかにされてなかったのか若干の勘違いが見られる。
>なにが問題だったのかは詳しくは分かりません。放送禁止用語だったり精神病院の描写がまずかったといわれています。(中略)アニメでは第12話「マリネラの吸血鬼」で放送されていますが、内容は差し替えられています。
念の為、アニメ版「マリネラの吸血鬼」を見てみたが基本的に忠実にアニメ化されていると思う。
ただしクライマックスは
「甥っ子はゾンビではなく吸血鬼のマスクを被る」
「パタリロが犯人のトリックを見破る」
「老婦人が死んでない(遺書焼失の後に明らかになる)」
というエンタメ的で、至極真っ当な脚色が加えられている。
(タマネギ部隊のエピソードは無かったが、アニメでは1話からメーキャップした隊員が複数登場する)
10刷(左)と文庫版50巻(右)の修正箇所。
ちなみにアニメでも「入院」に修正されているがハーケンクロイツはそのまま。
さらに「桃井かおりです」はアニメでは「薬師丸ひろ子です」に変更されている。
さて原作の「ラジオ」も読んでみた。
原題は「ワイヤレス」。無線だね。
1971年の版で、翻訳は小倉多加志。
以下、ネタバレありです。
心臓の弱い資産家の老婦人の財産を奪おうと、甥っ子がラジオを使って死んだ夫の声を聞かせてショック死させる。遺言状が焼失してしまい計画がパア、というのは同じ。
原作では「死んだはずの夫がお迎えにやってくるかも?」という恐怖を描いているのだが、
パタリロ!ではそれを吸血鬼に変更している。
しかしこれでは作品のキモである「ラジオを使った殺害」が全く無意味になる。
吸血鬼の声がラジオから聞こえてきても、吸血鬼の声!…とは思わないだろう。
だからパタリロ!では原作通り、ラジオから夫の声が聞こえてくる事にしている。
そのために伏線として「夫の墓から死体が消えた」「きっと吸血鬼に魅入られたのだ」という情報を入れている。
ちなみに「ラジオ」には探偵役が登場しないし、甥っ子は財産は得られなかったものの完全犯罪である。
ただし、二、三ヶ月後までにまとまった金額を工面できなければ甥っ子は刑務所に行くことになっていることが結末で明かされる。老婦人は数年生きると主治医から聞かされていたので、甥っ子は殺害を急いだのだが、主治医から聞かされていた診断は実は気休めで、実際は二ヶ月の命だったことも明らかになり、甥っ子は絶望するというオチ。
何か引用をはっきり示す痕跡みたいなもの(例えば固有名詞が同じだとか)が見つかれば「マリネラの吸血鬼」はオマージュと言い切れたのだろうけど、残念ながらそういったものを見つけることが出来なかった。
さて今回の話のまとめ。
こうなると逆に15刷以降のパタリロ!4巻を手に入れたくなってきた。
単純にページ数が少なくなった単行本なのだろうか。それとも何か他の話を入れたとか?
※15刷以降にしか掲載されてない短編が代わりに収録されているそうです。
Amazonの中古では何刷かまでは確認できない。
かといって、それを確かめるためだけに新品買うほどの物好きではない。
新品には「マリネラの吸血鬼」が再録されてる可能性もあるし。
近所のブックオフでチェックしてみたのだが、パタリロ!の取り扱いはとても少なかった。
80巻以降が数点あるぐらいだった。まあ今後コツコツと探していくことにする。
魔夜峰央がクレームが入った時期を勘違いしているのは間違いない。
あと単行本が発売して2年も経ってクレームが入るというのもなんか妙じゃなかろうか。
俺は漫画ではなく、2年経って始まったアニメ化が原因なのではないかと推測する。
アニメは関東では視聴率8%だが、関西では20%もあったという。
アニメ「パタリロ!」の視聴率
— 山田マリエ (娘) (@MAYA_MUSUME) March 15, 2019
実は関東と関西でだいぶ差があったんです!
大阪のみなさんがとても驚かれていたので
それをネタにしたやつを置いておきますね#パタリロ#魔夜峰央#魔夜の娘はお腐り申しあげて pic.twitter.com/iyJjpSYfx5
関東の視聴率1%で38万人というから、8%でも304万人が見ていた計算だ。
漫画の読者数など軽く吹き飛ぶ影響力だ。
だからこそクレームを入れた大学のミステリー研究会の目にとまるまでになったのではないか!?
封印回になったせいでアニメの内容も変わったとAmazonの書評に書いていた人がいたが、
実際はアニメになったからこそ封印回になったという仮説。
なんとも面白い。
Twitterを見て、娘さんの漫画も読みたくなってきたので購入したよ!
<2023年4月5日追記>
パタリロ!35巻収録の151話にアガサ・クリスティーの血を引くキャラクターを発見。
初出は騒動から5年経過した1987年。どういう心理が働いているのだろう。。。
37年ぶりの再会!池田邦彦「シャーロッキアン!」と名探偵ホームズ「青いルビー」の謎 [あの人は今]
シャーロキアン漫画家の関崎俊三による「ああ探偵事務所」を読んで得た知識だ。
ところで自分は原典となるホームズをちゃんと読んだ事がない。
しかしシャーロキアン小説家の赤川次郎による人気シリーズ、
「三毛猫ホームズ」は子供の頃にかなり夢中になって何冊も読んでいる。
変な話だ。そこからジ・オリジンを読もうという気にはならなかったようだ。
三毛猫ホームズの推理 「三毛猫ホームズ」シリーズ (角川文庫)
- 作者: 赤川 次郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
それでも脳内になんとなくしっかりとしたホームズ像を捉えているのは、
シャーロキアン漫画家の藤子F不二雄による「ドラえもん」の、
シャーロックホームズセットの話のおかげに違いない。
そういえば愛読している荒木飛呂彦の「魔少年ビーティー」も、
シャーロック・ホームズを下敷きにしていると「荒木飛呂彦の漫画術」の中で語られており、
我々は日々、知らないうちにホームズスピリットを摂取しているのかもしれないとも思う。。
それにしてもこれだけ有名な作品で、
児童向けのコミカライズの決定版みたいなものが無いとは、これまた不思議な話だ。
石ノ森章太郎がホームズの一編、「まだらのひも」をコミカライズしているが、
かなりキャリア初期の作品のようである。
まだらのひもといえば、「ドラゴン拳」で知られるシャーロキアンの小林たつよしは
「まだらのひも」を2回もコミカライズしており、その2回分がまとめてKindle Unlimitedで読み比べできる。トーン指定の青鉛筆あとや、写植貼った影が写りこんでいるラフな作り。
さらに吉田戦車の「伝染るんです」にも「まだらのヒモ」が出てくるが、
吉田戦車もシャーロキアンなのだろうか。
さて、遅れてやってきた池田邦彦マイブーム。彼もきっとシャーロキアン。
前回の「カレチ」に続いて購入した池田作品はズバリ「シャーロッキアン!」だ。
小さい「ッ」が気になるが、本場イギリス流の発音なのだろうか。
調べてみたらイギリスではシャーロキアンのことをホームズィアンというらしいので違った。
シャーロッキアン! : 1 シャーロッキアン! (アクションコミックス)
- 作者: 池田邦彦
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/30
- メディア: Kindle版
「シャーロッキアン!」はホームズ好きな大学教授と、その生徒によるホームズ解釈人情漫画。
どんな名作にも多かれ少なかれ話の矛盾がある。ホームズも例外ではない。
例えばホームズの記録を探偵小説として後世に残したワトソンは、
従軍したアフガニスタンでケガをした経歴をもつ。その怪我の位置が作品によって異なるという。
そういった矛盾を、いかに好意的に解釈するかというのがこの漫画のキモである。
本当の作者であるコナン・ドイルが間違えた…という解釈はシャーロキアン失格。
「シャーロッキアン!」では、ワトソンの本当の怪我の位置は股間だったので、
羞恥心からその都度咄嗟に偽ったのではないか?という解釈が採用されている。
また、そういった話から、
「こないだ友達に嘘をつかれて傷ついたけど、そういった羞恥心からついた嘘だったのでは」
と、仲直りする人情噺につなげて事件が解決する、変則的な推理漫画になっている。
でえ、
「シャーロッキアン!」全4巻中の2巻に「青いルビー(紅玉)」の矛盾が登場して震える。
「ルビーの色の中で青いものがサファイア。つまりルビーが青かったらそれはサファイア」という、
「パタリロ!27巻」に収録された中の一編、「ウエディングベル」に書いてあった豆知識!
まさかこの話がより深く掘り下げられているとは!なんか嬉しい!
今年は2023年。パタリロ!27巻は1986年初版なので、実に37年ぶりの再会である。
(ちなみにシャーロッキアン!の2巻は2012年に刊行)
そもそも「青い紅玉」の解釈は、シャーロキアンの間でもさまざまな議論されているらしい。
「シャーロッキアン!」によると原題は「ブルー・カーバンクル」。
カーバンクルは丸く研磨された宝石、あるいはガーネット(ざくろ石)を指す。
ガーネット 柘榴石(ざくろいし) パワーストーン 天然石【パールクリエイト】8ミリ5粒 両穴 穴あり クリスタル 高級 ハンドメイド ブレスレット アクセサリー 1月誕生石 開運
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邦訳された際に生じた誤訳、というのがシンプルで最も普及している解釈のようだ。
現在は「青いガーネット」という邦題が付けられてるという。
この件についてパタリロ!の著者の魔夜峰央が謝罪したと軽く触れているブログがあったので調べてみたところ、謝罪文は「親バカ輪舞(ロンド)」というエッセイコミックに掲載されていた事が分かった。
1998年、魔夜峰央の宝石趣味を語るシリーズの中で、再度ホームズの青いルビーはあり得ないと12年ぶりに指摘したところ、12年前には来なかったクレームが今回は複数寄せられたそうだ。
ついでに魔夜峰央が見たというアニメ「名探偵ホームズ」の該当する回も視聴してみた。
かなり原作をアレンジしているようで、青いルビーは単なる小道具にしか過ぎない扱いだった。
ちなみにこのアニメ、監督が宮崎駿なのは有名だが、青いルビーの脚本は映画「この世界の片隅に」の監督、片渕須直だった。
(アニパロコミックス15号Jean高汐「わんわん大行進」)
話を「シャーロッキアン!」に戻すが、実際には誤訳で片付けられる簡単な話ではないようで、
「(いろんな色があるカーバンクルなのに)ルビーの赤ではない青」とホームズ自身も原文で言及しており、このことから現在もファンの間で議論が続いているらしい。
そもそも原作者のコナン・ドイルが宝石に詳しくなかったのでは、と思ってしまうが、
そういう態度はシャーロキアン失格なのだろう。
ドアンザクを作画崩壊ではなく顔の長いザクだったのだと言える度量の広さと愛が必要だ。
「シャーロッキアン!」では、この青い紅玉が欲しいという女性が現れる。
これはホームズというよりかぐや姫なのではないかという推理がされる。
結末は是非、実際に漫画を読んでいただきたい!
シャーロッキアン! : 1 シャーロッキアン! (アクションコミックス)
- 作者: 池田邦彦
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/30
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シャーロッキアン! コミック 1-4巻セット (アクションコミックス)
- 作者: 池田 邦彦
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/07/12
- メディア: コミック
松本零士の訃報から読んだ「漫画歴史博物館」で若き日の田中正雄に再会する。 [あの人は今]
正直、ほとんどの作品と親しんだ事がない。
が、好きな漫画家の多くが敬愛している漫画家なので偉大さは分かる。
島本和彦や江川達也の影響でハーロックを文庫で買った事があるのだが、どこかにいってしまった。
訃報をきっかけに前から気になっていた松本零士の著作、
「漫画大博物館」(日高敏との共著)を購入。
氏は古い漫画コレクターとしても有名で、この本はその松本零士コレクションの中から、
1924年から1959年に出版された漫画単行本を紹介したもの。
2004年に出版されたこの「漫画大博物館」は、
1980年の「漫画歴史大博物館」をリニューアルしたもの。
調べても違いが分からなかったので安くて新しい方を買ったのだが、
旧版には外国漫画が掲載されており、取り扱う作品の年代も3年長い。
単純にページを削った増やしたという話ではないようで、どちらの版にも一長一短はあるのだろう。
しかしなんだか損した気分になったので結局旧版の方も購入しちゃったい。
もちろん、あまり安い買い物ではない。
松本零士先生の訃報をきっかけに、
— ムゲンホンダナ(本棚持ち歩き隊) (@hondanamotiaru) February 25, 2023
前から気になってた「漫画大博物館」を購入。
80年に出版された「漫画歴史大博物館」とどう違うのか、
調べても分からなかったので安くて新しい方を選んだ。
画像左はTwitterから拝借した漫画歴史大博物館の画像。
右が漫画大博物館の画像。けっこう違うね。 pic.twitter.com/ojeSlxGUoW
漫画読みというのは少し読んだぐらいですぐ詳しい気になって、
あれはこの作品のパクリだなんだ、やれ最近の漫画はつまらないなどと尊大な態度をとりがち。
誰でも通る道だけど。
が、この年になっても知らない作品が山ほどあることに気付かされる。
当時人気作と持て囃された作品ですら、全てを把握して記憶するのは不可能な量がある。
そんなことにちょっとでも抗いたくて、今回大枚はたいてみました。
さて、年代順に読み進めていて基本的に知らない漫画家ばかりで当然なのだが、
そんな中で子供の頃から愛読している「学研まんが人物日本史」で描いていた作家を見つけた。
田中正雄と太田じろうだ。二人の歴史漫画は今読んでも面白い。
過去の二人と再会したのは昭和23年の項。なんだろうこの感覚は。
自分が生まれる前の時代にタイムスリップした先で知ってる人と遭遇したみたいな。
不思議な感動を覚える。
田中正雄は手塚治虫と親しかったらしく、そのことを漫画にしている。
おそらく手塚が亡くなったのをきっかけにしたのだろう。
それをホームページで読むことができるのだが素晴らしい!その表現力に惚れ惚れする。
こんなの読まないのは人生の半分ぐらい損してると割とマジで思うので、
少しでも多くの人に読ませたいとブログで紹介する機会を窺っていたのだが、
「漫画大博物館」購入をきっかけにTwitterに書いたら結構な反応があった。
田中正雄の作品は前述した「学研まんが人物日本史」等なら電子で手軽に読む事ができる。
新装版は装丁がちょっと好きじゃないんですけど。
チャーリーブラウンみたいなキャラクターがかわいい。
自分が所有している作品は全て学研に描かれたもの。
「伊藤博文」「日蓮」「源頼朝」「平清盛」「平将門」「徳川家光」「日本の歴史11巻」「日本の歴史15巻」「日本の歴史16巻」
中でもオススメは「伊藤博文」。
伊藤博文の友達だったという近所のお爺さんから聞いた話を基に描いたと、最後のページで作者自ら出演して子供たちにメッセージを伝えている。
「ねえ、やる気になれば、人間一生の間にすばらしいことができるんだね。」
子供を大事にしてそうな人柄が伝わってくる。
ひとつ欠点を挙げるとすれば、作風に毒がなさすぎること。
田中正雄にかかると、女好きの伊藤博文も源頼朝も聖人君子みたいに描かれてしまう。
親が安心してお子様に買い与えられるのは間違いないが、毎回そんな感じなのでちょっとワンパターンかなと思ってしまう。
そんな田中正雄ブームだった私が、
今ハマってるんだと「日本の歴史16巻」の表紙(旧版)を知人に見せたところ、
「行くとこまで行っちゃったね」と温かい言葉をいただきました。