ニセ札犯から転身した漫画家、赤瀬川原平という人がいた!Σ(°Д°; [あの人は今]
偽札犯から漫画家に転身した人がいたと知った。
この年になっても漫画は知らないことばかりだ。
偽札犯の名前は赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)という。
まずその存在を知ったのは「現代漫画博物館1945-2005」という本。
終戦直後から60年間、漫画史に残る750タイトルを選び紹介する内容だ。
偽札犯、赤瀬川原平は1970年を代表する20本の中に「櫻画報」(さくらがほう)で選ばれている。
菫画報の元ネタ?
その櫻画報を紹介するために引用されたコマは、つげ義春「李さん一家」のパロディ。
紹介文を読むと風刺漫画っぽい。
「文藝春秋漫画賞の47年」を調べてみたが受賞もノミネートもない。
ただ「孤独のグルメ」の久住昌之が1999年に「中学生日記」で受賞した際、
「赤瀬川原平に師事」と書かれていたことから、赤瀬川原平がそれだけ高名な人だというのは伝わる。美学校の講師をしていたらしい。
さらにウィキを調べてみて、
赤瀬川原平が「表面だけの千円札」を作ったとして、有罪判決を受けたと知ったのである。
厳密にいうと偽札犯では無く、「紙幣と間違える紛らわしいものを作った罪」なのではあるが、色々込み入った話なので簡潔にさせていただく。本人も「千円札を印刷したら起訴されて有罪になっちゃいました」と書いているし。
要するに赤瀬川原平は前衛芸術家なのだ。
千円札裁判終了後、弁護した瀧口修造に赤瀬川がお礼に送った千円札オブジェが4分18秒に登場する動画。
赤瀬川原平は執行猶予になった後、つげ義春「李さん一家」を読んで深い感銘を受け、「ガロ」で「御座敷」という漫画を発表。同誌の人気漫画家だった佐々木マキが推薦されて朝日ジャーナルで作品を発表し、手塚治虫以外に好評だった流れで赤瀬川原平にも朝日ジャーナル連載のオファーがくる。
そこで赤瀬川原平は前述の「櫻画報」を始めるのだが、その中で朝日新聞を揶揄する漫画を描いたことが上層部で問題になり、掲載号は回収され2週間の休刊、編集長は更迭、61人が人事異動を喰らう大混乱をもたらした。すごい風刺であり、アートだと思う。
ルバング島に潜伏していた日本兵も「偏向しとる」と思ったぐらい朝日はアカイのである。
この「櫻画報」の文庫版を購入してみた。
本の冒頭、序文が終わったらまた序文が始まるのを繰り返す。
計4度、18ページにわたって、新装版が出るたび書いた序文を収録しているのだから人を喰っている。
コンセプトは櫻画報そのものが本体の独立した雑誌であり、
掲載誌の朝日ジャーナルは包み紙にすぎないというものだ。
その中でゼロ円札を有料で交換するということもやっている。
欄外の煽りの、「善は急げ!悪も急げ!!」がなんかツボ。
肝心の漫画の内容であるが、正直よく分からない。
コマ漫画というより、グラビア漫画といった感じだ。
絵柄は水木しげるっぽく、かなり上手い劇画タッチだと感じた。
ちなみに水木しげるのアシスタントが描いた「水木先生とぼく」にも、
赤瀬川原平が水木プロを来訪する客として、つげ義春らと一緒に登場する。
(中央が赤瀬川原平)
櫻画報だけだとよく分からないので、赤瀬川漫画の代表作としてよく挙げられる「御座敷」「おざ式」を読まないと肝心なことは分からないと思ったので、大枚はたいて「赤瀬川原平漫画大全」を購入。赤瀬川原平が亡くなった翌2015年に出版されたもので定価が2800円。中古相場はその倍だ。
デビュー作「御座敷」は良かったが、テンションはそこがピークだったと感じた。
やはり本業は芸術家で、そこまで漫画にのめり込むというほどのものでは無かったのだろうと思う。
こち亀でも出てくる「トマソン」を始めたのも赤瀬川原平だったというからすごい。
他にも「老人力」を流行らせたり、
今でいう、みうらじゅんみたいな人なのだ。
とりみき「トマソンの罠」という短編にも赤瀬川原平の名前が。
と、そんなことをやってる折、
他にも漫画史を調べている過程で、そろそろ読まねばならないと思った本が出てきた。
風刺漫画で投獄されたりした宮武外骨(みやたけがいこつ)を紹介した本、「外骨という人がいた!」である。
この本、小学生ぐらいの頃に父から「面白いから読め」と勧められていたが、文字だけの本が苦手なので読まずにいた。しかし「外骨」という名前のインパクトは、ずっと記憶に残っていた。
購入の際、「外骨という人がいた!」の著者が赤瀬川原平だったのでビックリした。
こんな昔から俺は赤瀬川原平に触れていたのか!
櫻画報にも宮武外骨の滑稽新聞の引用が多数あったので気になってた。
ちなみに赤瀬川原平は直木賞作家でもある。
実家の居間の壁一面を本棚にしたほどの読書家の父が赤瀬川原平にどういう印象をもっていたのか興味深いが、数年前に死んでしまっているので聞くことはできない。
「外骨という人がいた!」は面白く、
全25巻で定価20マン以上する宮武外骨全集を散々悩んで購入してしまった。
親父も読みたかっただろうなと、その中の数冊を仏壇に供えたのだが、
そのせいか夢の中で親父から「迎えに行く」とメールがきたので、ここ数日死なないようにしている。
●2024年7月18日追記
誤字修正しました→正:赤瀬川原平/誤:赤瀬川源平
この年になっても漫画は知らないことばかりだ。
偽札犯の名前は赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)という。
まずその存在を知ったのは「現代漫画博物館1945-2005」という本。
終戦直後から60年間、漫画史に残る750タイトルを選び紹介する内容だ。
偽札犯、赤瀬川原平は1970年を代表する20本の中に「櫻画報」(さくらがほう)で選ばれている。
菫画報の元ネタ?
その櫻画報を紹介するために引用されたコマは、つげ義春「李さん一家」のパロディ。
紹介文を読むと風刺漫画っぽい。
「文藝春秋漫画賞の47年」を調べてみたが受賞もノミネートもない。
ただ「孤独のグルメ」の久住昌之が1999年に「中学生日記」で受賞した際、
「赤瀬川原平に師事」と書かれていたことから、赤瀬川原平がそれだけ高名な人だというのは伝わる。美学校の講師をしていたらしい。
さらにウィキを調べてみて、
赤瀬川原平が「表面だけの千円札」を作ったとして、有罪判決を受けたと知ったのである。
厳密にいうと偽札犯では無く、「紙幣と間違える紛らわしいものを作った罪」なのではあるが、色々込み入った話なので簡潔にさせていただく。本人も「千円札を印刷したら起訴されて有罪になっちゃいました」と書いているし。
要するに赤瀬川原平は前衛芸術家なのだ。
千円札裁判終了後、弁護した瀧口修造に赤瀬川がお礼に送った千円札オブジェが4分18秒に登場する動画。
赤瀬川原平は執行猶予になった後、つげ義春「李さん一家」を読んで深い感銘を受け、「ガロ」で「御座敷」という漫画を発表。同誌の人気漫画家だった佐々木マキが推薦されて朝日ジャーナルで作品を発表し、手塚治虫以外に好評だった流れで赤瀬川原平にも朝日ジャーナル連載のオファーがくる。
そこで赤瀬川原平は前述の「櫻画報」を始めるのだが、その中で朝日新聞を揶揄する漫画を描いたことが上層部で問題になり、掲載号は回収され2週間の休刊、編集長は更迭、61人が人事異動を喰らう大混乱をもたらした。すごい風刺であり、アートだと思う。
ルバング島に潜伏していた日本兵も「偏向しとる」と思ったぐらい朝日はアカイのである。
この「櫻画報」の文庫版を購入してみた。
本の冒頭、序文が終わったらまた序文が始まるのを繰り返す。
計4度、18ページにわたって、新装版が出るたび書いた序文を収録しているのだから人を喰っている。
コンセプトは櫻画報そのものが本体の独立した雑誌であり、
掲載誌の朝日ジャーナルは包み紙にすぎないというものだ。
その中でゼロ円札を有料で交換するということもやっている。
欄外の煽りの、「善は急げ!悪も急げ!!」がなんかツボ。
肝心の漫画の内容であるが、正直よく分からない。
コマ漫画というより、グラビア漫画といった感じだ。
絵柄は水木しげるっぽく、かなり上手い劇画タッチだと感じた。
ちなみに水木しげるのアシスタントが描いた「水木先生とぼく」にも、
赤瀬川原平が水木プロを来訪する客として、つげ義春らと一緒に登場する。
(中央が赤瀬川原平)
櫻画報だけだとよく分からないので、赤瀬川漫画の代表作としてよく挙げられる「御座敷」「おざ式」を読まないと肝心なことは分からないと思ったので、大枚はたいて「赤瀬川原平漫画大全」を購入。赤瀬川原平が亡くなった翌2015年に出版されたもので定価が2800円。中古相場はその倍だ。
デビュー作「御座敷」は良かったが、テンションはそこがピークだったと感じた。
やはり本業は芸術家で、そこまで漫画にのめり込むというほどのものでは無かったのだろうと思う。
こち亀でも出てくる「トマソン」を始めたのも赤瀬川原平だったというからすごい。
他にも「老人力」を流行らせたり、
今でいう、みうらじゅんみたいな人なのだ。
とりみき「トマソンの罠」という短編にも赤瀬川原平の名前が。
と、そんなことをやってる折、
他にも漫画史を調べている過程で、そろそろ読まねばならないと思った本が出てきた。
風刺漫画で投獄されたりした宮武外骨(みやたけがいこつ)を紹介した本、「外骨という人がいた!」である。
この本、小学生ぐらいの頃に父から「面白いから読め」と勧められていたが、文字だけの本が苦手なので読まずにいた。しかし「外骨」という名前のインパクトは、ずっと記憶に残っていた。
購入の際、「外骨という人がいた!」の著者が赤瀬川原平だったのでビックリした。
こんな昔から俺は赤瀬川原平に触れていたのか!
櫻画報にも宮武外骨の滑稽新聞の引用が多数あったので気になってた。
ちなみに赤瀬川原平は直木賞作家でもある。
実家の居間の壁一面を本棚にしたほどの読書家の父が赤瀬川原平にどういう印象をもっていたのか興味深いが、数年前に死んでしまっているので聞くことはできない。
「外骨という人がいた!」は面白く、
全25巻で定価20マン以上する宮武外骨全集を散々悩んで購入してしまった。
親父も読みたかっただろうなと、その中の数冊を仏壇に供えたのだが、
そのせいか夢の中で親父から「迎えに行く」とメールがきたので、ここ数日死なないようにしている。
●2024年7月18日追記
誤字修正しました→正:赤瀬川原平/誤:赤瀬川源平
赤瀬川原平: 現代赤瀬川考 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/10/28
- メディア: ムック
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