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今なお水木しげる完コピを目指す漫画家、村澤昌夫「水木先生とぼく」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]


水木先生とぼく (角川文庫)

水木先生とぼく (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/06/10
  • メディア: Kindle版


村澤昌夫「水木先生とぼく」を購入した。
とにかく背景絵の緻密さがすごいのだ。

みずきせんせいとぼく8.jpg

拡大するとこんな感じ。
「うわーッ」の文字のちょい上あたり。

みずきせんせい.jpg

この漫画は特にヨーロッパに渡ってからの作画が過剰すぎる。
こんなのネットでは伝えきれない。ぜひ紙の本を手に取っていただきたい。

みずきせんせいとぼく6.jpg

こういう高度に発達しすぎたプロアシの仕事は美術館に飾ってもいいのではないかと思う。
どれぐらいの時間をかけているのだろう。
商業誌ペースなのだから、スピードもあるはずだ。

みずきせんせいとぼく5.jpg

村澤昌夫「水木先生とぼく」は、
水木プロダクション所属の漫画家による、水木しげる回想録だ。
人物なども水木しげるそっくりに描かれている。
 
BS漫画夜話の「悪魔くん」回を見ていて、いしかわじゅんが水木しげるについて、
「作者そっくりに描けるアシを何人か抱えてる」みたいなことを言っていた。
その時、いしかわが提示したのが元水木プロの森野達弥の作品。



なるほど、映像はボヤけているがそっくりだ。
そもそも自分はホラー系が苦手なので、それほど水木作品は読んだことがないのだが、
お気に入りの「カランコロン漂泊記」も水木本人の筆じゃないのかもしれないと思うと、ちょっとショックだったりもするのだった。

しかしですね!
トシとって目をやられて絵が劣化していくのは自然の摂理であるわけで、
師匠そっくりに描ける弟子を育成しておくのは大事なことなんじゃないかなとも最近思うわけです。

そんな感じで、
水木漫画を読んで「オレだったらもうちょっと似せて描ける」と思った人がいた。
それが「水木先生とぼく」を描かれた村澤昌夫なのである。

みずきせんせいとぼく1.jpg

水木先生曰く、「彼は当たり」

みずきせんせいとぼく2.jpg

あんな作画が過剰だから、
水木さんは「浮浪雲」を読んで背景を簡略化することも考えたそう。
それについて村澤氏は反対したという。

みずきせんせいとぼく3.jpg
そもそもデフォルメされたキャラクターに対し、背景を描き込むことで商業作品として成立させているというのは作者本人や批評家も認める水木スタイルであるらしい。

作中にも登場する京極夏彦の巻末解説によると、
村澤氏は水木タッチを完全再現するための研究に今なお余念がないという。

似てないと言いたいわけではないが、村澤氏のタッチは見覚えがある。
以下の「中古(ちゅうぶる)」、これは村澤氏の作画ではなかろうか。
いしかわじゅんの発言を聞いて以来、若干注意深くなっていたから思ったことである。

 
他にもこの漫画の見どころとして特に推したいシーンが、
つげ義春一家が出てくるところである。
つげ漫画でお馴染みの藤原マキさんがカメラ越しに水木先生に挨拶する。

みずきせんせいとぼく7.jpg

マキさんの「私の絵日記」を読んで、亡くなられてしまっていたことにショックを受けた。
この本についてもいずれ書きたい。

 

私の絵日記 (ちくま文庫 ふ 46-1)

私の絵日記 (ちくま文庫 ふ 46-1)

  • 作者: 藤原 マキ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫



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