絶頂の少年ジャンプが逃した大魚!小林よしのりの「おぼっちゃまくん」 [心に残る1コマ]
ここんとこ立て続けにネタにしている少年ジャンプ三代目編集長、西村繁男。
最初に認識したのは今から20年前に読んだゴーマニズム宣言2巻に収録されているエピソードだった。
小林よしのりが「東大一直線」を打ち切られた時期、酒の席で西村繁男に罵倒されまくってジャンプの専属契約を切った。それ以後、公の席で出会っても、互いにシカトを決め込んでいた二人だったが、小林よしのりが「おぼっちゃまくん」で社会現象を巻き起こし小学館漫画賞をとると、西村がさりげなく寄ってきて祝辞を述べたという話。
このエピソードが今更ジワジワきている。
と、いうのも、西村繁男の編集方針として、くどいほど少年向けにこだわってきたというのを知ったからだ。サンデーがラブコメで部数を伸ばしてきたとき、あえてそれに追随せず、少し泥臭く、少し時代遅れの少年漫画にこだわった。
(画像は次原隆二「少年リーダム」)
(画像は島本和彦「アオイホノオ」11巻。おそらく少年ジャンプ5代目編集長、堀江信彦がモデルになっているキャラの独白。サンデーとジャンプの編集者の脳内OSの相容れなさを表現しているコマ)
ある意味、任天堂的だなと思う。他ハードがギャルゲーを乱発する中、ひたすら子供ファンを大事にしてきた姿がかぶるのだ。まあよくよく考えてみれば、小利口な大人を相手にするより、子供向けの方がヒットの際の爆発力が違うのかもしれない。
そんな西村が、「おぼっちゃまくん」のポテンシャルがあった小林よしのりを結果として見限る形となってしまった。その悔しさは想像するに余りある。
おぼっちゃまくんが漫画賞を受賞した1989年はすでに西村も編集長の座を退き、ジャンプはあと200万部発行部数を伸ばすことになる。しかし西村は編集長辞任後も青春の少年ジャンプの行く末をひたすら案じ続けていた。そこにおぼっちゃまくんの空前の大ヒットで、西村の言語不一致ともいうべき特大のミスが発覚したのだ。
よくネットでは「進撃の巨人を見抜けなかった少年ジャンプ」みたいな言われ方をされるが、そんな話とはワケが違う。少年ジャンプには三田紀房の持ち込みすら断るポリシーがあるのだ。しかしおぼっちゃまくんはジャンプが産んだ作家が、ジャンプ以外でかっ飛ばした、全くジャンプに必要な、西村が渇望していた作品だったのである。
西村の絞り出すような「おめでとう…良かったね」の声。
実に味わい深い。
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- 作者: 小林 よしのり
- 出版社/メーカー: 小学館
- メディア: コミック
ここまで来ると逆に、西村氏の一連の弁明も聞きたいところだ。
by お名前(必須) (2024-04-07 04:54)
自分がゴーマニズム宣言に描かれたことについても触れている西村繁男の「マンガ編集術」で小林氏について振り返ってますが、「タイプ的には苦手な漫画家」「その後を予想してたら専属に固執した」と描かれていました。
永井豪も描いてましたけど、西村氏は酒飲んで絡むクセがあったみたいですね。梶原一騎とも喧嘩になったとかゴーマニズムに書いてあったような。
by hondanamotiaruki (2024-04-07 10:20)