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巨匠の魂の還る海。横山光輝「闇におどる猫」 [名作紹介]


横山光輝初期作品集 第6集 闇におどる猫 (横山光輝愛蔵版初期作品集 第 6集)

横山光輝初期作品集 第6集 闇におどる猫 (横山光輝愛蔵版初期作品集 第 6集)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/01/23
  • メディア: コミック


横山光輝の「闇におどる猫」を読んで背筋が寒くなった。

鉄人28号が始まった翌年の執筆という、かなり初期の作品。
いい漫画のアイディアが浮かばず弱っていく横山光輝自身が主人公、という珍しい漫画。
内容的には今ひとつピンとこない。猫がおどってない。

タイトルからしてコナンドイル原作の横山作品、
「夜光る犬」みたいな本格ミステリーを連想してしまうせいかもしれない。
実際はホラー漫画。

読んで背筋が寒くなったというのはお話が怖かったからでなく、
現実の横山光輝の死を連想させる内容が次々と展開していくからである。

タバコの火の不始末。(このあと消さずに降車する)
やみにまぎれて生きる猫5.jpg

自宅が火事。
やみにまぎれて生きる猫6.jpg

そして死亡。

 
ところで、
最近あったマンガ原作者死亡のニュースの関連リンクから、
こんな見出しを見つけた。

日本テレビでアニメ化された漫画家 自宅で全身やけどで死去 妹が発見
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f58bc80011ab212de91fd712c819c4baa67b4cb

やみにまぎれて1.jpg

誰のことかとクリックしてみたら、横山光輝の死亡記事だった。
2004年の記事がまだあるものなのだな。

「鉄人28号」「魔法使いサリー」 横山光輝さん自宅火事で全身やけどで死去
https://www.daily.co.jp/gossip/flash/20130914330.shtml

【2004年4月16日のデイリースポーツ紙面より】
「鉄人28号」「魔法使いサリー」など多数の人気作品を描いた漫画家の横山光輝(本名光照)さんが15日午後10時29分、死去した。69歳。神戸市出身。横山さんはこの日午前6時10分ごろ、東京都豊島区千早2ノ26ノ14の自宅で起きた火事で全身やけどを負い、意識不明のまま都内の病院へ入院していた。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。

横山さんは「鉄人28号」「魔法使いサリー」以外にも忍者ブームを作った「伊賀の影丸」など多数の作品を描き、91年には「三国志」で日本漫画家協会賞優秀賞も受賞した。

火は横山さんの寝ている2階洋間のベット付近で出ており、目白署はベッド脇に灰皿が置いてあったことから、横山さんのたばこの不始末が出火原因の可能性があるとみて調べている。家の中にいた横山さんの妹2人もけがをした。

横山さんは約3年前に足を骨折し、足が不自由で最近は自宅療養中。普段は母、妹と3人暮らしだったが、この日は別の妹が介護のため泊まっており、横山さんの部屋で物音がしたため確認に行き、ベッドが燃えているのを見つけ119番通報した。

 
ちなみに漫画「闇におどる猫」での横山光輝の死因は、
タバコなどの過剰摂取による中毒症状が引き起こしたノイローゼによる自殺。

やみにまぎれて生きる猫4.jpg

横山の友人らが禁煙を決意する教訓がオチ。

やみにまぎれて生きる猫9.jpg
(左の人物は、かつてノンタン原作者の一人だったオオトモヨシヤス

まさかこの時、
横山光輝が禁煙を決意して描いたとは思えないが、
もし禁煙していたら…と思うと残念でならない。

 
ところで「闇におどる猫」の中で、
精神的に追い詰められてボヤ騒ぎを起こし入院までする横山光輝は友人らに勧められ、
ぶらり途中下車の旅に出る。

やみにまぎれて生きる猫7.jpg

ふと横山は神戸の須磨に途中下車する。
須磨海岸の砂浜に寝そべり海を眺めてリフレッシュする横山。
あれ、このシーンなんか見たことあるぞ…と思った。

やみにまぎれて生きる猫8.jpg

横山光輝の自伝漫画、「まんが浪人」に出てきた海岸じゃん!

やみにまぎれて生きる猫3.jpg
(「まんが浪人」は「横山光輝超絶レアコレクション」に収録されている名作。)

こちらに描かれた横山光輝は、イメージ通りの淡々としたキャラクターだが、
「闇におどる猫」の横山と同様に、須磨海岸に腰掛け、海を眺めている姿が印象的だ。

やみにまぎれて生きる猫2.jpg

横山光輝は神戸市須磨区の出身。
市内の公園には実物大の鉄人28号のモニュメントがある。

漫画の中で横山光輝は、
将来のこと、仕事で悩んだ時に須磨海岸にたたずむ。

やみにまぎれて生きる猫1.jpg

もちろん友達と楽しい時間を過ごす場所でもあった。

 
「闇におどる猫」はフィクションだが、
横山光輝が創作に思い悩む姿はどこかリアルな感じがある。

普段ドライなイメージの横山が、思わず漫画に描いてしまった故郷の海。
ここに良い意味で「弱さ」が表れてしまったのではないか。
そう思うとこの「闇におどる猫」は巨匠の本音が垣間見える貴重な作品と思える。

須磨海岸は横山光輝の魂の還る場所なのかもしれない。

そう思うと一度行ってみたくなる。
何ヶ月後になるかは分からないが、そのうち訪れてみたい。

 
<追記>
実際に行ってみた記事はこちら。

 
タグ:横山光輝
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