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その血の運命!ジョジョをヒットさせた椛島一族とは何か? [心に残る1コマ]

「ジョジョの奇妙な冒険」は氏なくしては存在しない作品である。

ジョジョ第三部のラストページで、
作者の荒木飛呂彦から謝意を伝えられたジャンプ編集者の椛島良介
その一族がジョースター家並みに濃いということは
他所でやったのにあまり広まってないようなので今回も記事化してみたい。
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第一部:椛島良介、その苦悩。

まず椛島氏は新人の頃の荒木飛呂彦に
「マイナーをやろう。メジャー誌にマイナーが載ってるから面白いんだよ!」と、とんでもない提案をしている。(「ジャンプ黄金の軌跡」で引用された週刊文春2009年6月18日号の荒木飛呂彦インタビューより)

椛島氏がなんでそんなことを言ったのか。いや分かるけども。
そんな方針でジャンプで生き残れるはずもなく、デビュー作の「魔少年ビーティー」はたったの第3回で短期打ち切りの内示をされてしまう(「荒木飛呂彦の漫画術」)。続く「バオー来訪者」も短期終了。

当時の同僚編集者の証言によると、
悩んだ椛島氏が辿り着いた境地は、「北斗の拳っぽくすれば売れる!」というものだったらしい。
カバシマ7.png
ずいぶん安易な作戦ではあるが、こういった泥臭いテコ入れのおかげで濃いファンを増やす時間が稼げ、現在我々は100巻以上にわたる傑作長編が読めるわけなのだ。

巻来功士の「連載終了!」に、その苦しい時代の椛島氏が登場する。
この漫画によると、当時のジャンプ編集部にとって巻来功士ゴッドサイダーと荒木飛呂彦(ジョジョの奇妙な冒険)どちらも大差ない冴えない評価だったようで、そのうちどちらかを打ち切りにすると、それぞれの担当編集者に内示していた。長崎新聞に掲載された荒木&椛島対談によると、打ち切り候補を脱したのは第三部からだという。
カバシマ8.png

椛島良介が出てくる漫画といえば、他にもある。
新沢基栄の「ハイスクール!奇面組」5巻のオマケ漫画だ。
ちなみに世界初のジョジョパロディ商業漫画も、おそらく奇面組である。

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顔が濃く、身長が高いのが椛島良介の外見的特徴。

おそらく荒木飛呂彦作品における「バージニアによろしく」のマット船長や、

カバシマ5.png

魔少年ビーティーの西戸などは椛島氏がモデルなのではと思う。

カバシマ4.png
 

第二部:樺島勝一、画力高き血統

前置きが長くなったかもしれないが、椛島氏の祖父は樺島勝一
超名作「まんが道」で藤子不二雄が模写するシーンが出てくるほどの大作家だった人らしい。
坂本三郎4.png

勝一の代表作、「正チャンの冒険」は近年のNHKの朝ドラ「おちょやん」でも劇中劇として映像化され、杉咲花が演じた。
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松本零士が収集した古書漫画コレクションを紹介する「漫画大博物館」という本がある。
基本的に単行本化されたものしか掲載しないのだが、その中で最も(そして圧倒的に)古い漫画が大正13年の「お伽 正チヤンの冒險」(東風人名義)だ。漫画の歴史はどこから始まっているのか?手塚治虫からとする人もいれば、鳥獣戯画まで遡る人もいる。そういう意味で、樺島勝一から始まっている説を唱えてもいいような気がする。

<2024/2/26追記>
手塚治虫は『手塚治虫漫画全集別館 対談集2』で「宮尾しげを『漫画太郎』と『正チャンの冒険』から、広い意味でのマンガの現代史がはじまるんじゃないでしょうか」と分析している。

「漫画大博物館」に掲載された小松崎茂インタビューに、樺島勝一の話が出てくる。
ぼくが直接会って、絵にピッタリだなあと思った人は樺島先生ですよ。外国人みたいな人だったですよ。背が高くてね。そうだな、クラーク・ゲーブルが歳とったような感じだった。あの先生はオランダ系の血を引いているんです。樺島勝一先生が純然たる日本人だったら、あの絵は描けない。オランダ系の人たち、たとえばレンブラントなんかがもっている血をもっているんだね。日本人はあんな影にこだわらない。北斎でも広重でも線だもの。あの人は、もっぱら影を追求していた絵描きだ。樺島先生は素晴らしい絵描きさんだと思いますよ。

 
第三部:樺島基弘、シェーッ!ミーは出っ歯ザンス!

さらに調べると、
良介の父であり、勝一にとっては息子にあたる樺島基弘は、
赤塚不二夫が恩義ある三大漫画編集者として名前を挙げるほどの人物であったという。

(2024.1.17追記:※父でなく父の弟、叔父と甥の関係という情報あり)
「心の流浪」掲載の家系図によると基弘氏は5人兄弟で、もう一人男兄弟が存在する。
良介氏が誰の息子なのか、家系図には記述がない。ついでに言うとオランダも…。
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仗助、じょうすけ、りょうすけ、良介…まさかッ!!


「赤塚不二夫のことを書いたのだ」という本の112ページに基弘氏が登場する。
以下の文章は元赤塚不二夫担当編集者だった武居俊樹によるもの。
おそらく赤塚本人から聞いた話なのだろう。自伝風に赤塚の気持ちを紹介している。
ちなみにこの本は映画化され、武居氏の役を堀北真希が演じている。

カバシマ2.png

編集者は、樺島基弘。この人のお父さんは、ペン画で少年達を熱狂させた樺島勝一画伯だ。(中略)樺島には徹底的にしごかれた。さすがのオレもベソをかいたほどだ。もっと面白くならないかと、どこまでやってもOKが出ない。そして、自分でも、アイディアをドンドン出す。

樺島が、歯の治療に通っていた時のことだ。熱心に喋りまくる樺島の口から血しぶきが飛び、ネーム用紙を真っ赤に染めた。ちょっとだけ、歯が出ていたんだ。イヤミのモデルは、この樺島記者だよ。

何本かの読み切りを描かされた後、樺ちゃんは『おそ松くん』の初代担当者として、新連載を起こしてくれた。オレは、この三人、丸さん、壁ちゃん(注:もちろん壁村耐三のこと)樺ちゃんを、一生忘れない。新人時代、文字通り心血を注いでオレを育ててくれた、魂の編集者達だ。新人漫画家なんて、編集者次第で、生きも死にもする。才能なんて、本人には判っていない。見つけてくれる編集者がいなけりゃ、輝きようがないんだ。

他にも古谷三敏の「ボクの手塚治虫せんせい」にも樺島基弘が登場する。
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(この似顔絵、「サンデーとマガジン〜創刊と死闘の15年」に掲載されてる写真と似てる)

お分かりいただけただろうか。
ジョジョのヒットは、実写版ジョースター家のその血の運命(さだめ)から来るものだったのだ。
ジョジョの第九部も待ち遠しいが、椛島家の第四部もいつかまた世の中に登場するのかもしれない。

…To be continued





心の流浪 挿絵画家・樺島勝一

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