藤子Aと荒木飛呂彦が愛読した?「銀の仮面」とその引用構造 [心に残る1コマ]
前回の記事、「パクリを指摘するための高いハードルとは」にて触れた、イギリス人作家のヒュー・ウォルポールの短編小説、「銀の仮面」をモチーフにしたと思われる作品たち。そのほかに「銀の仮面」も簡単に紹介してみます。
『魔太郎がくる!!』(連載期間:1972〜1975年)作者:藤子不二雄A
電子版では12巻にされている「不気味な侵略者」。
主人公の魔太郎の父親が酔った勢いで、見ず知らずの男を家に連れ込む。
一見謙虚だがギリギリの図々しさの男に、なかなか面と向かって帰れといえない魔太郎の両親。
男の家族が迎えにきたと思ったら、家族もなかなか帰らない。そして図々しい態度。
男たちの家族は、こんな方法で徐々に他人の家の乗っ取る生活を繰り返すヤドカリ一家だった。
魔太郎は超能力で男を操り、金持ちそうな別の酔っ払いと男を出会わせ、そっちに寄生してもらうことで解決するというスゴいオチ。
『魔少年ビーティー』(連載期間:1982〜1983年)作者:荒木飛呂彦
前後編の最終回、「そばかすの不気味少年事件の巻」。
準主役の男の子、公一の父親が車庫からバックで車を出そうとすると物音が。車を出て確認すると、そこにはそばかすの少年が鼻血を出して倒れていた。人身事故か?一同戦慄するが、そばかす少年は少し休めば大丈夫だと言って安心させる。
そばかす少年を家で休ませることで穏便に済ませたい公一の両親は、少年の図太い態度に徐々に我慢を強いられる。ついにそばかす少年の家族が迎えにきたと思ったら、今度は家族に因縁をふっかけられ、公一の両親は完全に萎縮してしまう。
そばかす少年は自らの家族がこれまでそうやって他人の家の乗っ取りを繰り返してきたと公一とビーティーに勝利宣言。このあとビーティーは機転を効かせ、そばかす少年一家を合法的に病院送りにする。
<備考>ウルトラジャンプ2021年11月号にて、続編の短編『魔老紳士ビーティー』(脚本:西尾維新/作画:出水ぽすか)にて、そばかす少年との再対決が描かれた。
『銀の仮面』(1933年)作者:ヒュー・ウォルポール(小説)。
結婚適齢期をとうに過ぎた孤独な独身女性が主人公。
お金持ちなので、趣味の美術品に囲まれて生活している。
ある日、貧しいイケメンの男に施しをしたことから、彼の身内が徐々に女性の家に集まり出す。最終的に女性は監禁されて家を乗っ取られるというバッドエンド。
彼女の愛した美術品のひとつ、「銀の仮面」は監禁部屋の壁にかけられたまま、ただ事の成り行きをじっと見つめているだけであるというオチ。
<備考>荒木飛呂彦は著書「荒木飛呂彦の漫画術」の冒頭で、ヘミングウェイの短編「殺人者」を引用している。この短編は1961年に刊行された「世界短編傑作集〈第4〉」の冒頭に収録されているが、同じ本の巻末に収録されているのが「銀の仮面」であるので、荒木飛呂彦がこの本を所有していた可能性が高い。
『ジョジョの奇妙な冒険』(第一部の連載期間1986〜1987年)作者:荒木飛呂彦
イギリスの貴族、ジョージ・ジョースターはかつて交通事故にあった際に介抱してくれた男の息子、ディオ・ブランドーを養子とし、家に招き入れる。しかしディオは巧妙にジョースター家の乗っ取りを狙っていた根っからの悪人だった。そのことでジョージの実子、ジョナサンと衝突を繰り返すことになる。
ディオとジョナサンの対決の行方を見つめる壁掛けの美術品、「石仮面」。この石仮面にはある秘密があり、その秘密に気づいたディオは一世一代の賭けに出るのだった。
<備考>魔少年ビーティーは連載第3回で打ち切りがほぼ確定。しかし最終回で銀の仮面と同じ骨子の「そばかすの不気味少年事件の巻」を描いて初めて大きな反響を起こし、次回の連載につながったと自著で語っている。が、その次作「バオー来訪者」も短命に終わる。
最後のチャンスとも言える「ジョジョの奇妙な冒険」は成功体験である「そばかすの不気味少年事件の巻」をさらに膨らませ、さらに「銀の仮面」から仮面のエピソードまで取り入れたというのが創作の流れとして考えられる。
ちなみに「銀の仮面」が収録された「世界短編傑作集〈第4〉」には「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」という奇妙なタイトルの短編も収録されている。ここからジョジョの奇妙な冒険というタイトルが生まれたと考えるのは流石に強引すぎで考えすぎだろうか。考えすぎですね。
『魔太郎がくる!!』(連載期間:1972〜1975年)作者:藤子不二雄A
電子版では12巻にされている「不気味な侵略者」。
主人公の魔太郎の父親が酔った勢いで、見ず知らずの男を家に連れ込む。
一見謙虚だがギリギリの図々しさの男に、なかなか面と向かって帰れといえない魔太郎の両親。
男の家族が迎えにきたと思ったら、家族もなかなか帰らない。そして図々しい態度。
男たちの家族は、こんな方法で徐々に他人の家の乗っ取る生活を繰り返すヤドカリ一家だった。
魔太郎は超能力で男を操り、金持ちそうな別の酔っ払いと男を出会わせ、そっちに寄生してもらうことで解決するというスゴいオチ。
『魔少年ビーティー』(連載期間:1982〜1983年)作者:荒木飛呂彦
前後編の最終回、「そばかすの不気味少年事件の巻」。
準主役の男の子、公一の父親が車庫からバックで車を出そうとすると物音が。車を出て確認すると、そこにはそばかすの少年が鼻血を出して倒れていた。人身事故か?一同戦慄するが、そばかす少年は少し休めば大丈夫だと言って安心させる。
そばかす少年を家で休ませることで穏便に済ませたい公一の両親は、少年の図太い態度に徐々に我慢を強いられる。ついにそばかす少年の家族が迎えにきたと思ったら、今度は家族に因縁をふっかけられ、公一の両親は完全に萎縮してしまう。
そばかす少年は自らの家族がこれまでそうやって他人の家の乗っ取りを繰り返してきたと公一とビーティーに勝利宣言。このあとビーティーは機転を効かせ、そばかす少年一家を合法的に病院送りにする。
<備考>ウルトラジャンプ2021年11月号にて、続編の短編『魔老紳士ビーティー』(脚本:西尾維新/作画:出水ぽすか)にて、そばかす少年との再対決が描かれた。
『銀の仮面』(1933年)作者:ヒュー・ウォルポール(小説)。
結婚適齢期をとうに過ぎた孤独な独身女性が主人公。
お金持ちなので、趣味の美術品に囲まれて生活している。
ある日、貧しいイケメンの男に施しをしたことから、彼の身内が徐々に女性の家に集まり出す。最終的に女性は監禁されて家を乗っ取られるというバッドエンド。
彼女の愛した美術品のひとつ、「銀の仮面」は監禁部屋の壁にかけられたまま、ただ事の成り行きをじっと見つめているだけであるというオチ。
<備考>荒木飛呂彦は著書「荒木飛呂彦の漫画術」の冒頭で、ヘミングウェイの短編「殺人者」を引用している。この短編は1961年に刊行された「世界短編傑作集〈第4〉」の冒頭に収録されているが、同じ本の巻末に収録されているのが「銀の仮面」であるので、荒木飛呂彦がこの本を所有していた可能性が高い。
『ジョジョの奇妙な冒険』(第一部の連載期間1986〜1987年)作者:荒木飛呂彦
イギリスの貴族、ジョージ・ジョースターはかつて交通事故にあった際に介抱してくれた男の息子、ディオ・ブランドーを養子とし、家に招き入れる。しかしディオは巧妙にジョースター家の乗っ取りを狙っていた根っからの悪人だった。そのことでジョージの実子、ジョナサンと衝突を繰り返すことになる。
ディオとジョナサンの対決の行方を見つめる壁掛けの美術品、「石仮面」。この石仮面にはある秘密があり、その秘密に気づいたディオは一世一代の賭けに出るのだった。
<備考>魔少年ビーティーは連載第3回で打ち切りがほぼ確定。しかし最終回で銀の仮面と同じ骨子の「そばかすの不気味少年事件の巻」を描いて初めて大きな反響を起こし、次回の連載につながったと自著で語っている。が、その次作「バオー来訪者」も短命に終わる。
最後のチャンスとも言える「ジョジョの奇妙な冒険」は成功体験である「そばかすの不気味少年事件の巻」をさらに膨らませ、さらに「銀の仮面」から仮面のエピソードまで取り入れたというのが創作の流れとして考えられる。
ちなみに「銀の仮面」が収録された「世界短編傑作集〈第4〉」には「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」という奇妙なタイトルの短編も収録されている。ここからジョジョの奇妙な冒険というタイトルが生まれたと考えるのは流石に強引すぎで考えすぎだろうか。考えすぎですね。
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