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昭和5年のカリオストロの城、宍戸左行「スピード太郎」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

オートジャイロに乗ってえ…

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塔に幽閉されたお姫様を助け出してえ…

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世界経済を牛耳ろうとする伯爵の戴冠式を邪魔する…。

スピード太郎8.png

カリオストロの城じゃん!!

昭和5年(1930年)の児童漫画、宍戸左行「スピード太郎」を読んで驚いた。
カリオストロの城が「やぶにらみの暴君」(1952年)から引用されたことはよく言われるが、この「スピード太郎」との類似性は誰も指摘していない。

宍戸左行は児童漫画も描く風刺漫画家。
名前の読み方は「さぎょう」だったり、「さこう」だったり資料によってまちまち。
苗字は「ししど」が定説のようだが、「ししと」説もある。

9年間のアメリカ生活を経て帰国。
今回紹介する「スピード太郎」は1930年から1934年まで、読売新聞社の媒体で連載された。

その映画的な漫画スタイルは手塚治虫も魅せられ、
「新宝島」に取り入れたことは本人もインタビューで語っているのだが、あまり広まっていないようだ。

スピードワゴン太郎4.png

「スピード太郎」には時計塔も出てくるが、
これはカリ城というより、ジョジョの奇妙な冒険である。

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太郎が敵兵に捕まり、死刑執行時間が迫るなか、それを阻止すべく仲間のクマさんが道を急ぐがどうにも間に合いそうもない。そこでクマさんは時計塔を投石で破壊。執行時間がわからなくなり、処刑が中止されるという展開。荒木飛呂彦の担当編集者の椛島良介は大正時代の人気漫画家の孫でありその辺に理解が深いので、可能性としては低いと思うが全くのゼロではない。

購入した「スピード太郎」は1991年に出版された復刻版。
定価は4500円もするが、中古で安く購入できた。


スピード太郎 (少年少説大系)

スピード太郎 (少年少説大系)

  • 作者: 宍戸左行
  • 出版社/メーカー: 三一書房
  • 発売日: 1999/09/01
  • メディア: 単行本

いきなり読み方を間違える(コマに読み順が描いてあるのに!)
コマの大きさが揃っていないが、4コマ漫画のように上から下に読んでいき、左に移動していくという文法のようだ。セリフの吹き出しは基本右が先だが、時々左優先があったりと、あまり統一されていない。

セリフは基本、手書き文字のカタカナで読みづらい。
フォゴットンワールドかよと思う。
これは戦前、子供が最初に習う文字が平仮名ではなくカタカナだったことによる。
時々漢字があり、ルビがふられている。

「ヰ」と言う文字は「イ」or「ウィ」と読むようなのだが、
「オマエハ クラヰヲ モタヌカラ」「ヒトリデ ツイテコイ」と、どちらの文字も存在する。
使いどころがよく分からない。

基本的に1コマづつ、ほぼ同じ時間が流れていて、その辺は劇画以前の漫画という感じだ。とにかく慣れるまで読みづらい。アメコミもそうだが、1コマづつ時間をかけて読むのがコツだと思う。

主人公のスピード太郎はさまざまなアイテムやメカ、超人的身体能力を駆使して国家間の陰謀に挑む007のような子供なのだが、途中で戦争反対を訴えたりもする。第二次大戦前の漫画だが、その辺も今風で優等生っぽくて鼻につく。

スピードワゴン太郎1.png

…と思ったら、
人が激しく出血してバラバラになるような残酷なシーンも出てくる。

スピードワゴン太郎b1.png

…かと思うと、
魔法の薬でバラバラになったのを蘇生したりと、やっぱり子供漫画っぽい描写がある。

スピードワゴン太郎b2.png

…と思いきや、
テンパったクマさん(顔が怖い!)バラバラになった部位をあべこべに接着してしまうという、とんでもないブラックな展開になり、私は一発でこの作品の虜になってしまった。いやあ、戦前の児童漫画って表現に寛容ですね!

スピードワゴン太郎b3.png

時節柄、不謹慎ですみません。

裸婦像のおへそに隠し通路のスイッチが…、
と言いつつ押してるのは乳首だったり、宍戸左行という漫画家が堅物ではなく、シャレのわかる人だということが伝わる。もう大好き!

スピードワゴン太郎7.png
単行本化の際に修正されたようです

なので「スピード太郎」を復刻した三一書房のこの復刻シリーズ「少年小説体系」を漫画選集だけ買ったよ!3冊買って定価が7040円、8800円かける2。もちろん中古で買ったんだけど、新品だったらとても手が出なかった。ハードカバー700ページの分厚く重い読みにくい本で、どれも新品同様だった。マニア以外に読み継がれてないのも分かる気がする。

 




長編マンガの先駆者たち――田河水泡から手塚治虫まで

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  • 作者: 小野 耕世
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/05/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



手塚治虫の『新宝島』その伝説と真実

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  • 作者: 野口 文雄
  • 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ(小学館)
  • 発売日: 2007/11/27
  • メディア: 単行本



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コメント 2

智

カリオストロの城大好きですが、全く知りませんでした、「スピード太郎」。というか本当に誰も指摘してないですね。
偶然の一致か、引用元なのかはたまた幼少期の宮崎駿が読んだ潜在意識の産物なのかはわかりませんが、興味深いです。
クマさんだけ楳図かずおみたいな作画で恐怖を感じました。
by 智 (2023-10-30 01:33) 

hondanamotiaruki

宮崎駿はアニメ「スーパーマン」からのダイナミック引用も有名なので、この時期はその辺が無頓着だったのではないかなと。ちなみにスピード太郎は戦後にリメイク版が出ているそうです。

クマさん、この辺の2コマだけ、クマさんの顔に影が入ってるんですよね。微妙ですけど、おそらく意図的にやってると思います。恐るべし宍戸左行!
by hondanamotiaruki (2023-10-31 06:43) 

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