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いいも悪いも版元しだい、鉄人本よどこへ行く?横山光輝「鉄人28号」を55冊買ったワケ [心に残る1コマ]

所有する鉄人28号が55冊になった。
横山作品としては「三国志」60巻に次ぐ多さ!
事情により、光文社文庫版、潮出版原作完全版、秋田コミックスセレクト版と買い集めてしまいました。

なぜこんな事になったのか?

いくつもの出版社から単行本が刊行されているような名作を購入する場合、
なるべく安く、封印未収録回&修正が少ないやつを選びたいわけで、
過去にもそんな葛藤をブログに書きましたけど、鉄人が特に難しかった。

そもそも購入のきっかけは、
鉄人の掲載誌だった光文社の漫画雑誌「少年」の傑作集を読んで面白かったから。

なので候補の中から最初に選んだのが1996年から刊行された、
光文社文庫「鉄人28号」全12巻と、「・鉄人28号」全13巻。

鉄人28号 全12巻完結(文庫版) [マーケットプレイス コミックセット]

鉄人28号 全12巻完結(文庫版) [マーケットプレイス コミックセット]

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • メディア: コミック

「続」ってなんだろう、という疑問はありましたけど、まあ光文社ですよ。
かつての自社に多大な利益をもたらした鉄人を復刻するわけですから、間違いないと思うじゃないですか。

間違いありまくりだったわけですよこれが。

びっくりするぐらい絵がひどい!
生原稿は印刷したら破棄されてしまうのが、鉄人発表当時の業界の慣習。
なので印刷されたものを生原稿として複製するしかないわけで、ひどくなるのはしょうがない。

しょうがないのですが、
同じ光文社から出版されているのに、
1989年に「少年傑作集2巻」に再録されたものと比べて
1996年の鉄人の方が印刷が汚くなるのは理解不能!

<比較参考画像1>2005年:潮出版「原作完全版」より。
もともとはこんな絵だったと思われる。
アシスタントがトレスして描き起こししたもの。
べつじん28号1.png

<比較参考画像2>1989年:光文社「少年傑作集2巻」より。
かすれてはいるが、線はそれほど潰れていない。
べつじん28号2.png

<比較参考画像3>1996年:光文社「光文社文庫 鉄人28号」より
そしてこれが問題の鉄人。
べつじん28号3.png

線が接触し、電灯のかけアミ線が潰れてしまっている。
左のヒゲの男性の目玉とまぶたが完全に癒着し、真っ黒になってしまった!

 
実はこの問題の光文社文庫版「鉄人28号」、20年ぐらい前に数冊購入したことがある。
購入したことがあるのだが、読むのが辛いと挫折してしまっていた。
そりゃ辛いわ。

ここにはどんな絵が描かれているのか?コマによってはニュアンスがまるで伝わらないのだ。

べつじん28号5.png

なので「少年傑作集」で鉄人を読み返してみたとき、
「あれ?思ったよりもスラスラ読めるぞ?」と不思議に思っていたのでした。
加齢で自分の許容範囲が広がったのかな、という風に理解していたのですが…。
なぜ同じ出版社なのに、こうも出来が違うのか。同じ素材を使えなかったのか理解に苦しむ。

 
で、光文社文庫版は掲載順もやばいみたいなことを教えていただいたので、
掲載順が真っ当だという潮出版「鉄人28号 原作完全版」全24巻を購入するに至るわけである。
これを最初に選択しなかったのは、アシスタントが新たにトレスしたもので絵が違うからである。
光文社文庫全12巻と全13巻。原作完全版24巻で、この時点で鉄人の単行本は49冊になった!

というわけで光文社文庫版と、原作完全版を交互に読み進めていたのですが、
光文社文庫版の「掲載順が違う」、というニュアンスを自分が完全に理解できてないことが分かりました。

 
鉄腕アトムやブラックジャック、
伊賀の影丸、サイボーグ009などはエピソードの順番がシャッフルされているものがあり、
光文社文庫の鉄人もそういう感じなのかと思っていましたが、そんなレベルじゃなかった。

光文社文庫はエピソードの途中で話を完全にカットして、
続きを1年後に刊行を始めた「続・鉄人28号」に収録しているのだった。
で、そちらでまた途中で終わっているので、無印の鉄人本に戻って続きを読む。
何を言ってるのかわからねーだろうが、そういうことだった。

ドラゴンボールで例えると、
ベジータがやってくる!というところでその巻が終わり、
次の巻はベジータが仲間になってるところから始まる、そういう編集をしている。

よくよく読むと毎度巻末に、
光文社文庫COMIC SERIES「鉄人28号」全12巻は、雑誌「少年Jに昭和31年7月号から昭和41年5月号までの11年にわたって掲載された作品から、現在刊行されている新書判に収録された部分を除き、例月号に連載されたストーリーを完全復元したものです。
とある。

この「現在刊行されている新書判に収録された部分を除き」というのが読者に対する説明というわけだ。わ、分かりにくい。そもそも新書版とは何社の本を指すのか。新書版は鉄人の11年の連載のどの辺を収録しているのか。光文社文庫版には1巻に鉄人連載年表など掲載しているにも関わらず、その辺の説明が一切ないのは奇妙な編集方針である。

ちなみに、この「現在刊行されている新書判」というのは、秋田書店から1970年に出版されたサンデーコミックス版「鉄人28号」全10巻。現在もAmazonで新品で購入できる大ベストセラーである。


【コミック】鉄人28号(全10巻)

【コミック】鉄人28号(全10巻)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: コミック

理解が追いつかないので、
サンコミとほぼ同じ内容である秋田コミックセレクト版「鉄人28号」全6巻を購入してみる。
こういう経緯で所有する鉄人の単行本が55冊になったわけである!

すると秋田コミックセレクト版は、光文社文庫版で割愛されたあたりから話が始まっていた。
鉄人年表で確認したところ、連載3年目のモンスター編。そんなんありか!
鉄人誕生の経緯とか、これまでの話のあらすじとか説明一切なし!※
※しかしサンデーコミックス版は現在も売られてるぐらいだから、なんか評価が高いのである

秋田書店のこの思い切った編集も、
光文社文庫の説明文「現在刊行されている新書判に収録された部分」を、よりわかりにくいものにしている。
というか光文社の説明文は、サンデーコミックス版を読んだ人にしか伝わらない説明に留まっているのだ。

話を光文社文庫に戻すが、
この先は削除されています。続きは秋田書店の本でお読みください」とか注釈をつけるべきだったのだ。かなり不親切な編集方針だと思う。というか原作者がこれを許すのか、と首をひねってしまう。出版された1996年はもう四半世紀以上も昔のことになるが、それなりに洗練された出版文化だったはずだけど。。。

そもそも1958年に鉄人が最初に単行本化された時から話にカットされた部分があり、
5度目の単行本化でそれを初めて復刻させたというのが光文社文庫版の価値だそうなのですが、
それからさらに選択肢が増えた今現在、名作を蔵書に加えたいと思って購入するには光文社文庫版はかなり辛いものがありました。

ある程度原稿が溜まったら単行本にして出版する、という現在当たり前に行われている商習慣ですが、定着したのは1966年あたりから。そんなものが売れるわけない、と当時の人は当たり前に思ってたというから驚きです。しかし社会現象を巻き起こした鉄人ですら最初の単行本は7巻で途中終了というのが歴史的事実。横山先生も刊行が途中でストップしたのは「売れなかったからではないか」とコメントを残している。

鉄人の単行本史を調べると、想像以上の試行錯誤があって驚く。
出費はかさんだけども有意義であった。

というわけで、現在は光文社、潮出版、秋田書店と3社を並行して読み進めています。
あと飯城勇三「鉄人28号大研究」も同時に。その辺の単行本検証も詳しく書いてあるので、まずコレを読むべきだったのかも。ただし光文社文庫版が最新の鉄人単行本だった頃の本なので、現在はさらに新しい鉄人単行本が出ています。








鉄人28号フィギュア鉄人26号ノスタルジックヒ―ロ―ズ

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  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
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