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アトム、鉄人が掲載された覇権少年漫画誌。光文社「少年」傑作集 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

ちょっと前のことである。
「最も偉大な漫画家3人って誰だと思う?この問いに、手塚治虫と藤子Fをあげないやつは3人目を語る資格がない という漫画読みの問いかけがあったんだけど、」というツイートが話題になっていた。

語る資格がないとまで言い切るその漫画読みが誰なのか探してみたけど分からなかった。 典型的なトキワ荘史観な漫画の捉え方だと思う。しかも排外的。俺は語る資格がある、ないやつもいるというわけだ。俺はNO MANGA NO LIFEですけど、たかが漫画だぜ?よろしかぁない。(だいたいこの人選の流れだと三人目に自分世代の好きな作家を入れる余地なんかないぞ?)

なぜ漫画読みはイキってしまうのかという疑問がある。
ほとんどの人は自分世代の漫画しか読まない。ほぼ全員が食わず嫌いというジャンルである。
それでも結構な量があるから、あたかも漫画作品全部を把握したような気になるのではないか?

趣味の入り口としてハードルがとても低いし、人と競ったり協力し合いながら楽しむものでもない。
なので、ある種の錯覚を起こしながら世間に出品されてしまう人が現れてしまうのは仕方ないことなのかもしれない。

 
古い漫画を読むと、自分世代の漫画家たちが影響を受けた痕跡を発見することが多い。
例の「伊賀の影丸」は驚きまくった。この年になっても漫画は知らないことばかりだ。
その古い漫画家たちにも、憧れて真似した作品があったはずなのだ。

むかしはよくある表現だったものが、その中から後世に1作品しか残らなかったためにいらんとこまでオリジナルだと誤解されるケースもある。「快球Xあらわる!!」と「丸出だめ夫」が消えて、「ドラえもん」しか残らなかったように。

元ネタを全てを追跡するのは不可能。
そのことがわかった上で考えてほしいものである。
君たちはどうイキるのかを。

 
そんなわけで、
後学のためになんとなく古い漫画の傑作集みたいなものの詰め合わせをオークションで落としてみた。
その中にあった光文社の「少年傑作集」が面白かったので、全5巻+別冊1巻のセットで再購入してみた。

少年傑作集 コミックセット (光文社文庫) [マーケットプレイスセット]

少年傑作集 コミックセット (光文社文庫) [マーケットプレイスセット]

  • 作者: 光文社文庫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1989/08/01
  • メディア: 文庫

光文社の月刊漫画誌「少年」は、「鉄腕アトム」「鉄人28号」が連載されていた雑誌なのだそうだ。
まあ覇権だよな。そんな覇権漫画誌も、週刊漫画雑誌のブームに贖えず滅んでいったらしい。
少年ジャンプを読んで育ったが、それ以前の覇権誌など知らずに漫画を語ってきた私です。

傑作集1巻に収録された「鉄腕アトム」は、前身となる「アトム大使」の予告から数話掲載されている。
予告では「てづかはるむし」表記だったり、「鉄人アトム」だったり面白い。

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広告もそのまま掲載されていて素晴らしい。ガム会社の広告がなぜか多い。
ロッテ、明治、キング・トリス製菓とガムだけで複数に渡っている。

長い宇宙旅行の末にたどり着いた、ロボット文明が栄えたもう一つの地球。
アトム(アトム大使)ってこんな設定だったのかと驚く。
これがあまり人気がなかったものの、「アトムを主人公にして仕切り直せば売れる」というテコ入れで、漫画やアニメ史に残る傑作が誕生した、という流れなのだそうだ。

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(画像は「鉄腕アトムプロローグ集成」

ちなみに自分はこれまで漫画版アトムに触れた経験がなく、この少年傑作集収録のものが初めての漫画アトム体験となった。これきっかけでサンコミックス版の単行本を購入してみたが、かなり改変が加えられていて驚いた。いい順番で読めたなあとも思ったのである。

鉄腕アトムがメガヒットになった手塚の元には原稿依頼が殺到。少年編集部も手塚に気軽に原稿依頼できなくなった。もっとロボットものが欲しいと思った少年編集部は、手塚のアシスタント経験がある横山光輝の「鋼鉄人間28号」を改題して売り出す。これがアトムに匹敵するメガヒット漫画、「鉄人28号」である。編集者が有能すぎる。

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(画像は「横山光輝超絶レアコレクション」収録「まんが浪人」より)
 
少年傑作集の1巻はアトム、2巻は鉄人がメイン。
3巻は関谷ひさしの「ストップ!にいちゃん」がメインだった。
全く知らない漫画だったが、読んでみるととても面白く、復刻完全版の全巻BOXを購入してしまった。


江口寿史の「ストップ!ひばりくん」は、この作品にあやかっているという。
アトムと鉄人に匹敵する人気だったそうだが、これまで聞いたことがなかった。
そういう情報が断絶されてしまった作品は、アニメ化されてないものが多いと思う。

関谷ひさしは自作のアニメ化を断り続けた漫画家だという。
アニメ化は良し悪しあるだろうが、漫画の宣材としてはとても優秀だと思う。
視聴率1%でも漫画の読者数を凌駕するし、映像作品を見るのは漫画と違って特別なスキルがいらない。
海外で日本以上のメガヒットになるケースも多い。
50年後に誰にも語られなくなることを考えれば、アニメ化しておいた方が無難だと思う。

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(画像は「漫画家誕生。」収録の石ノ森章太郎「風のように…」)

少年傑作集4巻は堀江卓の「矢車剣之助」がメイン。
世代ではないが、学研の偉人伝漫画で堀江卓の漫画はよく読んでいた。
少年傑作集のメンツをみると、学研は第一線でやってた人に仕事を依頼していたのがわかる。クオリティが高いわけだ。

偉人伝漫画は現在もいろんな出版社が出しているが、大抵は表紙詐欺である。漫画っぽいものが描ければ人選は問わないぐらいのノリでやっているところも多いのではと思う。もっと学研を見習ってほしい。まあ、時代も違うのでかけられる予算も違うのかもしれないが。

5巻は藤子不二雄Aの「忍者ハットリくん」。
まんが道の続編「愛…しりそめし頃に…」でシルバークロスが打ち切られた話が出てくるが、その後にハットリくんを描いていたようだ。シルバークロスは少年傑作集1巻にも収録されている。「愛…しりそめし頃に…」は脚色なのが事実誤認なのか、漫画に書かれていたことは事実そのままでは無いようだ。

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(画像はビッグコミックスペシャル版「愛…しりそめし頃に…」6巻)

少年傑作集に収録された作品は、基本的に「良い子のまんが」という作風の作品が多いのだが、スリの世界を描いた永島慎二「地下鉄サム物語」なんて漫画もある。調べてみたら少年休刊の年の掲載。劇画ブームに押されていた故の足掻きだったのだろう。そういう漫画に激怒しそうな寺田ヒロオの作品も少年傑作集には収録されている。以下がそのリストである。

1巻
がんばりガンちゃん/福井英一
ナガシマくん/わちさんぺい
シルバークロス/藤子不二雄
ミスターロボット/杉浦茂
どんぐり天狗/うしおそうじ

青銅の魔人/江戸川乱歩 山川惣治
密林の大怪船/南洋一郎 梁川剛一

ダルマくん/田中正雄
高荷義之戦争イラスト名作集

2巻
鉄人28号/横山光輝
がんばれガン太/太田じろう
テキサスヒットの助/倉金章介
海底人8823/久里一平(原作:黒沼健)
<絵物語>第二の地球/小松崎茂
まかせて張太/赤塚不二夫
地下鉄サム物語/永島慎二
ポテト大将/坂井れんたろう
<絵物語>ジャングル巨人/山川惣治
幽霊船/石森章太郎

3巻
ストップ!にいちゃんふたたび/関谷ひさし
ストップ!にいちゃん/関谷ひさし
航空母艦/画:伊藤展安 文:北川幸引古
ロボット一家/前谷惟光
ザ・シャドウマン/さいとうたかを
山彦小太郎/武内つなよし
もうれつ先生/寺田ヒロオ

グランプリ野郎/横山光輝
発明ソン太/浅野りじ
ガン・キング/堀江卓
鉄腕アトム/手塚治虫

付録全リスト

4巻
矢車剣之助・堀江卓
口絵傑作集/小松崎茂 伊藤展安 中西立太
電人アロー/一峰大二
愛犬クマ/関谷ひさし
動物百科/浅野りじ
名探偵正ちゃん/小野寺秋風
光速エスパー/浅野りじ
絵でみる西部劇事典/高荷義之
竜車の剣/横山光輝
テスターZ/久里一平
プロペラブンちゃん/わちさんぺい
Z/石森章太郎
鉄腕アトム/手塚治虫

5巻
忍者ハットリくん/藤子不二雄A
戦車/平野光一 北川幸比古
少年テンスケくん/横山隆一
黒い風/石森章太郎
忍者/藤尾毅 北川幸比古
大城塞/影丸譲也
かみなりゴロスケ/そのやましゅんじ
とびだせ鉄平/高野よしてる
幽霊牧場/山川惣治
ハンマーキット/堀江卓
電光少年/桑田次郎
地獄くん/ムロタニツネ象
鉄人28号/横山光輝

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