X-MENよりも2年早いミュータント漫画、石ノ森章太郎「ミュータント・サブ」 [名作紹介]
幻魔大戦 Rebirth(1) (少年サンデーコミックススペシャル)
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/05/02
- メディア: Kindle版
石ノ森版の今川ジャイアントロボな「幻魔大戦リバース」。
読んでわからなかった部分を履修中。
「幻魔大戦 神話前夜の章」のアニメを見たが、エロアニメになっていて驚いた。
サービスカットというレベルじゃなく、毎回アンアン言ってるのでさすがに見てられない。
石ノ森漫画も色々購入。
その中の一本、「ミュータント・サブ」を今回紹介する。
リバースでのミュータント・サブは、ベガやソニー(サンボ)を差し置いての大活躍だった。
オリジナルにもちょっとだけ登場する彼だが、漫画は最近まで読んだことがなかった。
読んだことがなかった理由のひとつは、やはりアニメ化されてないというのが大きいと思う。
あと名前がサブってのがどうもカッコ悪い。そっち趣味の専門誌を連想させるので苦手。
「佐武と市捕物控」って漫画もあるぐらい、石ノ森先生はお気に入りなのかもしれないけど。
(画像はメヂマ多田「アニパロスクランブル」/「アニパロコミックス」25号掲載)
ちなみにリバースで、一瞬だけサブがイナズマンのイメージと重なるコマがあった。
全然知らなかったが、ミュータント・サブの本名の風田三郎は、
漫画「イナズマン」の主人公の名前にも流用されているのだそうだ。
ただし実写版は渡五郎。企画段階では「ミュータントZ」だったのだと。(wiki)
で、
「ミュータント・サブ」を読んでみると、めちゃくちゃ面白い。
「神話前夜の章」がアニメ化されて、なぜミュータント・サブがアニメ化されてないのだ!?
エロアニメにアレンジしようがないからなのか?
ミュータント・サブはジェームズボンドのような王道的アクションも素晴らしいが、
見どころは心理的な駆け引きだ。
サブにはテレパシー能力があり、他人の考えてることが全て分かってしまう。
敵に情報を聞き出すときに自白させる必要はなく、問いかけただけで完落ちになってしまう。
心を読む相手は勧善懲悪的な悪人だけでなく、
清濁合わせ呑まなきゃいけない そこそこ善人な会社経営者もいたりするので話に深みが生まれている。
他にも、
同じコマを白黒逆転させて並べて超能力発動中を表現したり、
キャラクターに言動不一致な行動をさせて読者を戸惑わせておいて、
後で同じシーンをベタぬきで描いて解説付きでネタバラシして見せたり
石ノ森好みの実験的表現の導入もそこそこ相性良くいっていると思う。
ところで、
ミュータントとは突然変異体のことである。
ミュータント・サブの元々のお話は、
輸血の提供者が被曝2世だったことからスーパーパワーを身につけるという話だったのだそうだ。
この辺が、アニメ化せずに他作品と比べマイナーな存在になった原因かもしれない。
双葉社文庫版はその辺が修正されたもので、UFOの起こした爆発の影響という事になっていた。
ミュータント漫画といえばアメコミ「X-MEN」の開始は1963年9月。
ミュータント・サブの双葉社文庫版全2巻に収録されている最も古いエピソードは、
少年サンデー1965年正月号掲載。X-MENより1年ちょい遅い。
が、調べてみると、双葉社文庫版にも収録されていない、
「少女」という少女雑誌で連載した「ミュータント・サブ」があり、
そちらは1961年9月号から翌年1月号までの連載!
天下のX-MENより、
石ノ森章太郎の方が2年早くミュータント漫画を描いていたのだ!
アメリカよ、これが日本だ!
その単行本は、サンリオ出版から「少女版ミュータント・サブ」として出版されている。
BS漫画夜話の「サイボーグ009」回では、こんな会話があった。
夏目房之介
「ミュータント・サブが漫画に登場した頃は、まだミュータントなんて言葉を普通はしらなかった。よほどのSFマニアじゃないと。」
いしかわじゅん
「そうそう テレポーテーションとかさあ、サイコキネシスとかね、全部これで知ったもん。」
番組によると、
サイボーグという言葉を世間一般に広く認知させたのも、
石ノ森章太郎の「サイボーグ009」(1964年連載開始)だという。
小学館「現代漫画博物館1945-2005」には、
64年のサイボーグ009のページに、65年ミュータント・サブと67年幻魔大戦が一緒に紹介されている。
この辺が描かれた時期はまさに石ノ森章太郎の黄金期、神がかった時代と呼んで差し支えないのではなかろうか。
さてさて、「少女版ミュータント・サブ」の発見で安心していたら、
さらにそれより5ヶ月も早いミュータント・サブがあったことが分かった。
https://matsuzakiakemi.seesaa.net/article/471625682.html
1961年の「中学生画報」4月創刊号に掲載された「ミュータントX」である。
欄外に注目。主人公の名前がサブだ!
ミュータントXという海外ドラマもあったけども。
エックスのタイトルも石ノ森の方がX-MENより早かったとは、
スタン・リーもびっくりだ!
ややこしいのが、
石ノ森のミュータントXはのちに加筆され「X指令」というタイトルになって、
主人公の名前もケンになり、ミュータント・サブと同時期に別作品として雑誌掲載されたようだ。
購入した双葉社文庫版2巻の巻末に「X指令」が収録されていた。
コダマプレスダイヤモンドコミックスの「ミュータント・サブ」2巻にも「X指令」が収録されているのだが、では、タイトルはなぜか「地球人サブ」に再変更されているらしい。(主人公名もサブに戻っている)。
ダイヤモンドコミックス版はX指令に改題された翌年の刊行だという。
その後、この作品はタイトル「X指令」&主人公ケンに再び戻され、
ミュータント・サブ外伝として現在まで伝わっているらしい。
「少女版ミュータント・サブ」単行本巻末では珍しく石ノ森章太郎が解説を書いているが、
ミュータントXや、その辺のややこしいことには一切触れていない。
忙しすぎて忘れてるのだと思う。
もしミュータント・サブのタイトルがミュータントXのままだったら?
かなり歴史は変わっていたのかもしれない。惜しい。
ところで、
この「X指令」のケン、「地球人サブ」でいうところのサブですが、
なんか幻魔大戦の東丈にそっくりなのである。
並行世界の東丈だった可能性もあるが、
その辺はリバースで拾われていないようだ。
ちなみにX指令での主人公の表紙ポーズは同作者の「赤いトナカイ」とそっくり。
さらに言うと、
サンデーコミックス版幻魔大戦1巻の表紙と「怪人同盟」の表紙もそっくり。
巨匠は忙しい。
ミュータント・サブは掲載誌も多岐に渡っている。
以下にまとめてみた。
中学生画報
少女
週刊少年サンデー
別冊少年サンデー
別冊少年マガジン
月刊ぼくら
別冊冒険王
カスタムコミック
基本が単発掲載の渡鳥的な読み切り漫画なので、
少女版以外は全てのエピソードにオチがあることが保証されている。
そんなところも「ミュータント・サブ」は安心して読むことができるのでオススメだ。
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