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つまらない映画は途中退場してFIRE!で炎上、三田紀房「インベスターZ」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

株で大儲けして毎日漫画だけ読んで過ごしたい私。
でもきっと株は向いてない。熱くなるアブドゥルみたいな性格だから。

インベスターZ(1)

インベスターZ(1)

  • 作者: 三田紀房
  • 出版社/メーカー: コルク
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: Kindle版


三田紀房「インベスターZ」をPRするツイートが物議を醸している。
インベスターZは株取引漫画。講談社モーニングで2013年から2017年に連載された。
高校生が部活で株取引をする内容で、最初は集英社少年ジャンプに持ち込まれたという。

炎上したのは2巻に収録されている「テスト・オブ・ムービー」という話。
部活の先輩からの指示で、自腹でつまらない映画を独り劇場で鑑賞させられた主人公。

始まった映画が腹が立つほどのつまらなかったので途中退席してしまうのだが、
実はそれは株取引に重要な才能である「損切り」のセンスが主人公にどれほどあるのかを判別する、
部活のイニシエーションだったというオチ。

「大抵の人は面白くない映画を観ていても席を立つことはない…なぜか
 それはチケットを買ってしまったからだ。
 (中略)退屈でなんの楽しみも得られない全て無駄な時間を過ごしているにもかかわらず…

 投資もこれに当てはまる。
 100万円で買った株が50万円まで下がったとする…
 50万損した状態で『終わり』にするのが我慢できず売らずに持ち続けてしまう」

わかる話である。
が、これに反発するのが一部の映画ファン。

「ドンデン返しがある『猿の惑星』を途中離席してレビューを書いて恥を書いた批評家がいるぞ」とか、
「つまらないものは何故つまらないか学ぶ機会を逃している」とか、
「全て見て判断するのが礼儀」とか、まあそんな感じ。

こういう意見も分かるが、
株取引マンガで、「映画は最後まで見ないと分からない」なんて教訓が出てくるわけもない。
プロ作家の中には今回炎上した件に関して「お客さんはシビア。途中で切られるのは当たり前に何度も経験すること。」という意見も見かけた。

株で損切りができない人は、
映画館に通い詰めて途中退場を繰り返せばトレーニングになるのかもしれない。

そういえば自分はインベスターZ全21巻中、13巻で損切りしてたのであった。ギャフン。

興味深かったのは、
「映画は半ば強制的に見させられるのが良さでもあった」という意見。

どういうことか?
思い出すのはコミッカーズで連載していた高寺彰彦の連載だ。
ワンダと巨像の上田文人も読み返したくなる高クオリティな漫画論だが、単行本化はされてない。

名作と言われてる映画を見ても、良さが分からないということがある。
その原因のひとつに視聴環境の違いがあることを高寺は指摘している。

たかでランド 1.jpg

たかでランド 2.jpg

むかし映画は映画館でしか見ることが出来なかった。
いまは家庭でも見ることができる。しかしそこでは邪魔が入る。
誰かが訪ねてきたり、スマホの通知が気になって、映画の大事なセリフや場面を見逃したりする。
そんな時は巻き戻ししたり、一時停止すればいい。

しかし映画館ではそうはいかない。
ほとんど一発勝負。しかも決して安くないお金を払っている。
集中力が違う。

言い換えれば、昔の映画は作り手優位に作られているのだ。
だから少し見逃しただけで、話のスジや演出の意図が分からなくなってしまい、名作映画の良さが分からないことが起こりうるのだと高寺氏は書き記している。

「洗い物しながら見ている人もいるんやで」と松本人志が言っていた。
集中を強いる映画と違い、TV番組はそういうフォーマットで作られている。
本来、映画とTVドラマはそれぐらい演出に違いがあるものなのだ。

悪い言い方をすれば、
映画は不親切で、TVドラマはバカでも分かるように作られていると言える。

わかりやすいに越したことはないが、やり過ぎるとチープになるので難しい。
最近では配信限定で作られるような作品も「映画」とされるようだが、
そういう意味で映画の作り方も、よりテレビドラマに近づいているのだろう。

古典映画の良さを知りたいと思うなら、
見る際に邪魔が入らないように気をつけて視聴しよう。
それでも良さが分かるとは限らないけども。

 

こちトラ自腹じゃ

こちトラ自腹じゃ

  • 作者: 井筒 和幸
  • 出版社/メーカー: ワニマガジン社
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 単行本



こちトラ自腹じゃ!: 101本斬り

こちトラ自腹じゃ!: 101本斬り

  • 出版社/メーカー: テレビ朝日
  • 発売日: 2004/12/01
  • メディア: 単行本



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ネスカフェ

映画の途中退出はあんまり損切りの練習にはならんでしょうね。額が少なすぎますもん。一番いいのは競馬とかパチンコとかでしょうね。高校生ではまずむりでしょうが。この作者さんの駄目なところは人が言った机上の空論を失敗とかのリスクを書かず、そのまま事実として書いちゃうところでしょうね。まあ株もしょせんはギャンブルですから。余談ですが、蛭子さんの話ではギャンブルのコツは「一攫千金を絶対視しない」「自分のだせる金額でする」「自分の頭で考える。分析を怠らない」だそうです。
by ネスカフェ (2024-05-06 10:59) 

hondanamotiaruki

「映画館の途中退場が株の練習になる理論」、
実際に高校生が言ってたら可愛い感じがしますけど、
読んでるとつい高校生ってことを忘れてしまいがちなので、
そう考えるとその辺失敗してる感じもしますね、インベスターZ。

インターハイなのに、ツールドフランスに出場してるぐらいの精神論を語る弱虫ペダルみたいな漫画の王道ではありますけど。
by hondanamotiaruki (2024-05-06 14:58) 

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