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漫画を読むのが辛くなる本、アルテイシア「フェミニズムに出会って長生きしたくなった。」を読んだ。 [モテる漫画]


フェミニズムに出会って長生きしたくなった。 (幻冬舎文庫)

フェミニズムに出会って長生きしたくなった。 (幻冬舎文庫)

  • 作者: アルテイシア
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/08/05
  • メディア: Kindle版

なにかフェミニズムの本を読んで勉強しときたいなシリーズ第二弾。
59番目のプロポーズで知られるアルテイシアの
「フェミニズムに出会って長生きしたくなった。」を読んだ。

これまでアルテイシア氏の本を4冊ぐらい読んでいたと気づく。
(59番目のプロポーズ、続59番目のプロポーズ恋愛格闘家モタク
けっこう読んでるなと思うが、最後に読んだのが10年前か。

Kindle Unlimitedで久しぶりに見つけた彼女の著作
紙でも買うぐらい面白かったので、それはこないだブログに書いた。

その時、彼女が描いたフェミニズム本も面白いだろうと思って一緒に購入していた。
しかし今回紹介するそのフェミ本は半分ぐらい読んでイヤになってしまった。
(がんばって読破したけど)

紙の本でも買うぐらい面白かった本の方にも、
著者のフェミニズムに関する思想が少し書かれていて、
それを読んだ時からイヤな予感はしていた。

そこにはこんな風に書いてあった。
とある酒場に行ったら男二人が「男性専用車両も作ってほしい」という会話をしていた。
これに著者はブチギレ。帰宅して旦那に離婚だなんだとネチネチと八つ当たりしたという。

ひどい嫁さん、いや奥さん、いやパートナーさんだなと思うしかない。
わたしゃ情緒安定してない人が死ぬほど苦手。
しかも旦那さんは全く性差別感覚とか無い人だそうだ。
こんなんDVですよ。

まあ終始そんなテンションで書かれた本なんですな。

これを踏まえておくと色々理解しやすいのだが、
性被害者に異議を唱えるのはフェミニズム的には超タブーであるらしい。
冤罪事件などは全く別の次元の話だとフェミニストは捉えている。

 
件のフェミニズム本、なんか既視感があるなと思ったら、
むかし学生時代の友人が突然訪ねてきて置いていった新興宗教信者のための漫画と似てる。
読んでいると善行を積まなきゃと強迫観念に近いものを植え付けられる。

差し当たって漫画を読むのが辛くなってくる。

この表現はセーフ?アウト?と、
いちいち読みながら考えてしまうようになる。
私は下戸であるが、酒がまずくなる、酔えない、みたいな感覚なのかな。

著者のアルテイシアさんは漫画好きで、前回読んだ本は4割ジョジョな印象だった。
それでもエロ表現は性犯罪を増加させてると問題提起している。
特にお風呂のぞくシーンに厳しい。

あるふぇみ2.png

なぜフェミニストは漫画を燃やそうとするのかという問題。
過去の悪書追放運動と何が違うのかという興味。
漫画のグローバル化により近い将来起こるであろう、
もっと大規模な世界的表現規制運動に備えて考えなければいけない。

ところで、
一般的な社会人感覚を持っていれば、
このアルテイシア氏のフェミ本は特に読む必要はないと思う。
ネットで見かけるフェミニストから受ける印象と大差ない。
ましてや漫画を読むのが辛くなってまで。
 
漫画を読んでいて色んな表現が引っかかるようになるのは、
感覚がアップデートしてるから良いのでは?という捉え方もあると思う。
だが聖者が、宗教家が漫画を読むだろうか?

漫画は基本的に低俗なものである。
庶民に向けた、粗野なものだからこそ面白いのだ。

だからこそ広く浅く受け入れられ、
受け入れた世代が管理職になったときに、その作品は世の中に大きな意味をもつ。

あるふぇみ10.png
(画像は「味いちもんめ」10巻 倉田よしみ/あべ善太)

そこをノウハウに出来れば金鉱なのだが、
感覚的で安定しておらず困難がゆえに価値のあることなのである。

意識高い人はそこをよく間違えて、
意識高くすれば作品が良くなると勘違いして高尚なものを出してきて爆死する。
流行りのYouTuberの何が面白いのかわからねえ、TVのバラエティくだらねえとか言って得意がってるようではダメだ。

「ジャンプでフェミ漫画を始めれば売れる可能性むちゃ高い」
と言った有名フェミニストがいたが、とんでもない的外れな意見だ。
アルテイシア氏のフェミ本も、だいたいそんな論法に陥っている。

 
アルテイシア氏のフェミニズム本を読んで、
不味くなった酒の中には著者の過去作品もある。
ここにアルテイシア論の問題の本質がある。

17年前に書かれた著者の代表作「59番目のプロポーズ」で紹介されてた旦那さんの、
非モテの肥大化した被害者意識を表した独身時代のエピソードを紹介する。

「…前の会社に『職場でNo.1の美人』って言われてた人がいて、まあ本当に綺麗でモテ系なんだけど、俺にとっては敵認定したから、会うたびに『今日も化粧が濃いですね!もうマスク取れかけでフェイスフラッシュが出てますよ』とか言うんだけど、向こうは屁でもないって感じで。こっちなんて虫以下だからさ。

それでその人が結婚退職することになって『送別会来てくださいね!その日は最後だからお触りもオッケーですよ』とか言われて…

死んでもいくもんかと。職場で俺だけが行かなかった。『意地悪言ってて本当はあの人も私のこと好きだったのね』なんて思わせてたまるか!と思って。それで最後の寄せ書きに『チンポコ』って書いたら上司に呼び出されて怒られた」

最後しょーもなくてすごい笑えるんだけど、
フェミニズム的にはもちろんアウトということになる。

アルテイシア旦那の寄せ書きが、
一生の傷になったと女性が訴えでたら
「ですよね、かわいそう」と言うしかない。
人を傷つける笑いだ!性暴力だ!と言われてしまう。

しかしだ。
この寄せ書きのエピソードを面白いと思うことは、
そんなに罪悪なのだろうか?

人間の複雑な心理というものをリアルに表している名エピソードだと俺は思う。
聖職者にこんな説話は作れない。フェミニストにも書けない。

こんな表現が許されなくなっていく世の中でいいのか。
いいものしか見ないという世の中は、同時になにかを失っていくディストピアだ。
きれいはきたない、きたないはきれい。

 
ついでに、最近読んで引っかかったので紹介するが、
同じくフェミニストだと思われる峰なゆかの漫画「AV女優ちゃん」もそう。
峰なゆかもアルテイシアも単行本の巻末でフェミニストの代表格、田嶋陽子と対談してる。

SPA!2022年12月6日号(Kindle Unlimited対象)「AV女優ちゃん」
「平凡な女の幸せルート」に乗ってくれると期待していた妹が、
12歳年上の古紙回収業の30歳に妊娠させられて落胆するというエピソードがある。

あるふぇみ3.png

まず古紙回収という職業差別的な笑いに加え、
保護者が良かれと推し着せる「平凡な女の幸せルート」的な表現もフェミニズム違反に抵触するだろう。
もちろん漫画としてはリアルな人間を描いていて面白い。

そうやってフェミニストは山崎ケイの「ちょうどいいブス」や、
酒井順子の「負け犬の遠吠え」を血祭りに上げてきたことがアルテイシア氏の本には書かれている。

わたしゃ所作で艶を醸し出す山崎ケイの芸風がすごい好きだったんだけど。

 
世の中の不幸を全部無くそうとしたら、
オウムになってハルマゲドン起こすしかない、と言った人がいる。

もともとは「良いことをしよう」という素朴な発想だったのに、
その思考がどんどん先鋭化しておかしくなっていく。
アルテイシア氏の旧作新作を読み比べてみて、そんなことを感じた。

おむつ替えをしていた会社の先輩に、
「見てこのツルツルのお尻!触ってみる?」と言われ、
赤ちゃんの肌に触れて感動したエピソードが氏のフェミ本にある。

これもイカンらしい。
プライベートパーツだから赤ちゃんの了承なく見たり触ったりはダメという理屈だ。
…わからんでもないけども!

「XXちゃんのお母さん、美人だよね〜」
アルテイシア氏の本によると、こんな親子の会話もアウト。
流行りのルッキズムというやつだ。
人を見た目で判断しないという素朴な考えが、どんどん先鋭化していっている。

 
いったい何のために、どこを目指しているのだろうか。
こういった話題で度々友人たちと絶交だ何だと軋轢を引き起こしていることも本には書かれている。
やっぱり宗教にハマった人みたいだ。

そのうちアルテイシアという名前を返上する日も来るかもしれない。

富野由悠季が創造したキャラクターから名前を借りているのは、
フェミニズム的にはふさわしくないという考え方もできるからだ。

あるふぇみ.png
(画像は「ガンダムを創った男たち」大和田秀樹)

 
アルテイシア氏は今後どうなっていくのか。
本の中で「ヘルジャパン」というワードが出てくる。
最初はおもろいなーと笑って読んでいたのだが、あまりにも何度も出てくるので不安になってくる。

彼女の近況はいったいどうなっているのか。
最近ちょこちょことチェックしている。
私個人の印象だが、氏は左傾化していってるのではないかと思う。

これも私の印象だが、左翼的な人は情に熱く、親切な人が多いと思う。
だから悪くすると善行に対する強迫観念と、「しがらみ」でやられていく。

あちらにも不幸、こちらにも不幸、
見てみぬふりする自分はずるいんじゃないかと色んな市民運動に手を出し、
そのうち政治運動することそのものが目的の人みたくなっていく。

彼女は些細な悪を見逃さない的な宣言も本の中でして、自分を追い詰めている。
立派かもしれないけど、新興宗教のカモにされる人を連想したりもする。

自分が救えるのは自分と、周囲の少しの人だけという利己的な考え方も時には必要だ。
そして白黒はっきりさせるのではなく、グレーも世の中を支えている重要な色だという認識も大事。
漫画のスキャンも白黒2階調ではなく、グレースケールの方がキレイに取り込める。

まあ旦那さん、いやパートナーさんの59番がいる限り、彼女は最悪なことにはならないと思う。

あるふぇみ4.png
 
不定期で、続く。
 

フェミニズムに出会って長生きしたくなった。 (幻冬舎文庫)

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  • 作者: アルテイシア
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2021/08/05
  • メディア: Kindle版



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59番目のプロポーズ キャリアとオタクの恋

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