釣りする人は太公望。横山光輝「殷周伝説」の続きを19年ぶりに読む。 [歴史漫画]
えらい王様が、えらい学者先生をスカウトするために、
釣りが終わるまで黙って待ち続けたという太公望のエピソード。
それを最初に見たのは「三国志」すら知らなかった頃に読んだ本宮ひろ志「赤龍王」。
自分を太公望に見立てて周の文王を待っていると答える韓信を、項羽がホラ吹きだと大笑いする。
韓信は内心「そう思うのは、項羽が周の文王に及ばないからだ」とほくそ笑む。
知識が無いので子供心になんのこっちゃと思うしかない。
今読むとすごい面白いけどマニアックだな!
(赤龍王は読み放題サービスKindle Unlimited対象作品)
その少し後に読んだ横山光輝の「三国志」にて、
天才諸葛亮孔明をスカウトするシーンで太公望エピソードがまたまた登場。
その後、この太公望エピソードはずっと「なんか有名らしいぞ」という感覚しかない。
学校の歴史の授業でも教わらないし、他のメディアで引用されることもほぼない。
詳細を知ることは一切なかった。
何十年を経て、
横山光輝「史記」にも登場するぐらいか。
(ちなみに上のコマで太公望のそばにいるのは文王ではなく弟子の武吉と思われる)
そんな太公望エピソードの、
待望のコミカライズが横山光輝「殷周伝説」なわけですよ。
(この漫画の文王は、別日の不在時には待っていたが、太公望と会えた当日は即、話しかけている)
思えば三国志→項羽と劉邦→史記→殷周伝説と、
殷周秦漢を逆行して横山光輝は中国史を語ってきたわけですな。
三国志が1971年開始だから、約四半世紀かけて!
ちなみに殷周伝説で太公望が登場するのが全22巻の中の4巻。
釣りのエピソードが描かれるのが6巻。けっこうかかっている。
そんな「殷周伝説」を自分は4巻までしか買ってなかった。
横山漫画を200冊近く所有している自分が、
殷周伝説をなぜ4巻で買うのをやめたかというと、色々ツラい内容だったからである。
そもそも元ネタとなった封神演義が、ほうぼうで荒唐無稽と言われる内容。
封神演義は天女だの悪霊だの仙人だの大暴れする話らしい(らしい、そういえば原作よく知らん)。
子供がピョンピョン飛び跳ねて戦場で武将を討ち取る。
三国志から史記までで積み重ねてきたリアリティラインを大きく崩す内容になっている。
流石に4巻で我慢できなくなって買うのをやめてしまった。
他に気になっていたのは作画のクオリティのこともある。
殷周伝説に取り掛かった横山光輝は当時60歳になっていた。
亡くなるのは9年後で、実質この作品が遺作となった。
連載中に色々体も悪くし、休載していた時期もあったらしい。
体力気力の他に、歳をとればほとんどの作者は「目」をやられる。
そんな状態で、
ここ数十年積み重ねてきたノウハウから逸脱した新作を描くのは本当に大変なことだと思う。
悪いことに同時期に同じテーマを扱った藤崎竜「封神演義」が少年ジャンプで始まっていた。
連載開始は殷周伝説が封神演義より二年早かった。
しかし殷周伝説の単行本の刊行開始は諸事情により遅れに遅れ、
封神演義全23巻の刊行が終了してから3年も経った頃だった。
自分が殷周伝説を読んだのは単行本化されてからなので、
横山光輝「殷周伝説」には余計に古さを感じたのだ。
藤崎竜「封神演義」は実に今風、コミケ風、コスプレ風に大胆に原作を脚色している。
当時藤崎竜は25歳。光輝60歳。感覚のみずみずしさで叶うはずがない。
(藤崎竜「封神演義」での太公望の釣りシーンは4巻。この漫画の文王は1秒も待たない)
そんな自分がつい最近、殷周伝説全22巻を買い揃えた。
それが何故かといえば、横山氏本人が作画の荒れに苦心し、
加筆修正のために単行本の刊行を遅らせていたというエピソードを知ったから。
そもそも単行本化しないという選択肢もあったそうだ。
本人も気づいていたのか…。
結局、全て修正することが叶わぬまま、
2004年の4月15日、寝タバコによる火事で横山光輝氏は亡くなったのだそうだ。
享年69歳。
そんなわけで巨匠の苦悩を噛み締めつつ殷周伝説を再読する。
4巻の刊行が2003年だから、19年ぶりに続きを読むことになる。
意外に違和感なくスムーズに読める。
続きが気になり、毎日2冊づつ裁断して電子化しては読む、ということを繰り返した。
19年経って藤崎竜「封神演義」の記憶がだいぶ薄れているというのもあると思う。
藤崎竜「封神演義」も5巻ぐらいで買うのをやめていたのだが、
殷周伝説と比較したくなって、こちらも単行本を買い揃えてしまった。
そんなわけでついに太公望の故事の前後を知ることができた。
フィクション要素が多いのだろうが、何らかの事実の影響を受けてる可能性もある。
周の成り立ちを理解してから「史記」を読むとまた味わいが違う。
実際の殷がどんな文化レベルだったのか創造するのも楽しい。
ちなみに殷周伝説6巻の太公望の釣りのシーン。
太公望はえらい王様を待たせただけでなく、
自分が乗った馬車を王様に引かせるなんてことも要求したそうだ。
相手が張飛だったら殺されてますよ!
釣りが終わるまで黙って待ち続けたという太公望のエピソード。
それを最初に見たのは「三国志」すら知らなかった頃に読んだ本宮ひろ志「赤龍王」。
自分を太公望に見立てて周の文王を待っていると答える韓信を、項羽がホラ吹きだと大笑いする。
韓信は内心「そう思うのは、項羽が周の文王に及ばないからだ」とほくそ笑む。
知識が無いので子供心になんのこっちゃと思うしかない。
今読むとすごい面白いけどマニアックだな!
(赤龍王は読み放題サービスKindle Unlimited対象作品)
その少し後に読んだ横山光輝の「三国志」にて、
天才諸葛亮孔明をスカウトするシーンで太公望エピソードがまたまた登場。
その後、この太公望エピソードはずっと「なんか有名らしいぞ」という感覚しかない。
学校の歴史の授業でも教わらないし、他のメディアで引用されることもほぼない。
詳細を知ることは一切なかった。
何十年を経て、
横山光輝「史記」にも登場するぐらいか。
(ちなみに上のコマで太公望のそばにいるのは文王ではなく弟子の武吉と思われる)
そんな太公望エピソードの、
待望のコミカライズが横山光輝「殷周伝説」なわけですよ。
(この漫画の文王は、別日の不在時には待っていたが、太公望と会えた当日は即、話しかけている)
思えば三国志→項羽と劉邦→史記→殷周伝説と、
殷周秦漢を逆行して横山光輝は中国史を語ってきたわけですな。
三国志が1971年開始だから、約四半世紀かけて!
ちなみに殷周伝説で太公望が登場するのが全22巻の中の4巻。
釣りのエピソードが描かれるのが6巻。けっこうかかっている。
そんな「殷周伝説」を自分は4巻までしか買ってなかった。
横山漫画を200冊近く所有している自分が、
殷周伝説をなぜ4巻で買うのをやめたかというと、色々ツラい内容だったからである。
そもそも元ネタとなった封神演義が、ほうぼうで荒唐無稽と言われる内容。
封神演義は天女だの悪霊だの仙人だの大暴れする話らしい(らしい、そういえば原作よく知らん)。
子供がピョンピョン飛び跳ねて戦場で武将を討ち取る。
三国志から史記までで積み重ねてきたリアリティラインを大きく崩す内容になっている。
流石に4巻で我慢できなくなって買うのをやめてしまった。
他に気になっていたのは作画のクオリティのこともある。
殷周伝説に取り掛かった横山光輝は当時60歳になっていた。
亡くなるのは9年後で、実質この作品が遺作となった。
連載中に色々体も悪くし、休載していた時期もあったらしい。
体力気力の他に、歳をとればほとんどの作者は「目」をやられる。
そんな状態で、
ここ数十年積み重ねてきたノウハウから逸脱した新作を描くのは本当に大変なことだと思う。
悪いことに同時期に同じテーマを扱った藤崎竜「封神演義」が少年ジャンプで始まっていた。
連載開始は殷周伝説が封神演義より二年早かった。
しかし殷周伝説の単行本の刊行開始は諸事情により遅れに遅れ、
封神演義全23巻の刊行が終了してから3年も経った頃だった。
自分が殷周伝説を読んだのは単行本化されてからなので、
横山光輝「殷周伝説」には余計に古さを感じたのだ。
藤崎竜「封神演義」は実に今風、コミケ風、コスプレ風に大胆に原作を脚色している。
当時藤崎竜は25歳。光輝60歳。感覚のみずみずしさで叶うはずがない。
(藤崎竜「封神演義」での太公望の釣りシーンは4巻。この漫画の文王は1秒も待たない)
そんな自分がつい最近、殷周伝説全22巻を買い揃えた。
それが何故かといえば、横山氏本人が作画の荒れに苦心し、
加筆修正のために単行本の刊行を遅らせていたというエピソードを知ったから。
そもそも単行本化しないという選択肢もあったそうだ。
本人も気づいていたのか…。
こんな切り抜きが出てきました。平成15年に「殷周伝説」が初めて単行本化された時のインタビュー記事。作品終盤の絵の乱れが、本人としては耐えられなかったようですね。
— ひら (@hira282828) September 29, 2022
それと歴史のif物に対するコメントが先生らしくて興味深かったです。 pic.twitter.com/i8v6iqjcBt
結局、全て修正することが叶わぬまま、
2004年の4月15日、寝タバコによる火事で横山光輝氏は亡くなったのだそうだ。
享年69歳。
しかし、残念ながら先生の構想の全容がわかるような状態ではなく、このままでは最終巻の刊行ができません。仕方なく原稿を元の形に戻して連載時のまま刊行する事になりました。私は遺稿を家に持ち帰り、涙を飲んで元の形に復元したのでした。#横山光輝
— こばやし将 (@show_kob) September 19, 2022
そんなわけで巨匠の苦悩を噛み締めつつ殷周伝説を再読する。
4巻の刊行が2003年だから、19年ぶりに続きを読むことになる。
意外に違和感なくスムーズに読める。
続きが気になり、毎日2冊づつ裁断して電子化しては読む、ということを繰り返した。
19年経って藤崎竜「封神演義」の記憶がだいぶ薄れているというのもあると思う。
藤崎竜「封神演義」も5巻ぐらいで買うのをやめていたのだが、
殷周伝説と比較したくなって、こちらも単行本を買い揃えてしまった。
そんなわけでついに太公望の故事の前後を知ることができた。
フィクション要素が多いのだろうが、何らかの事実の影響を受けてる可能性もある。
周の成り立ちを理解してから「史記」を読むとまた味わいが違う。
実際の殷がどんな文化レベルだったのか創造するのも楽しい。
ちなみに殷周伝説6巻の太公望の釣りのシーン。
太公望はえらい王様を待たせただけでなく、
自分が乗った馬車を王様に引かせるなんてことも要求したそうだ。
相手が張飛だったら殺されてますよ!
自分も横山漫画大好きなんですが、「殷周伝説」は買っていませんでした。
理由は主様と同じでけっこうツライ…というか「史記」の中盤当たりで内容が「項羽と劉邦」とまる被りのあたりから既に結構つらくなって、一時期離れてしまっていたせいですね。
けど、やり過ぎお師匠さまのコマのインバクトで俄然読みたくなってきました!
絵面がもうカノッサの屈辱レベルですね・・・。
by 智 (2022-12-19 23:52)
史記は項羽と劉邦のその後を書いているのがキモですよ!
読んでないなんて勿体無い。
かぶってるところも微妙に違って読むと味わいがあります(←嫌なマニア)
https://ihondana.blog.ss-blog.jp/2016-05-22
by hondanamotiaruki (2022-12-20 03:31)