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少年ジャンプがアンケートの結果を無視し、人気漫画を無理やり終わらせたことがあるのか問題を検証する! [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

少年ジャンプといえば、アンケート至上主義、恐怖の10週打ち切りで知られている。
大御所でも、過去にどんな実績があろうと、アニメ化の話があろうと、
アンケートの結果によって容赦無く打ち切られてしまう。

良く言えば平等である。
それで数々の名作も生まれている。
どんな漫画だろうと、アンケートの結果さえ良ければ連載を続けることができる。

ところが、打ち切られた漫画家から、アンケートの結果が良かったのにという証言が出てくることもある。本当だろうか?調べてみた。(ちなみに連載を自ら辞めたいばかりに本当はアンケートの結果が良かったのに、悪くて打ち切られたと偽証する漫画家もいる。

一人目の証言者は巻来功士。
1986年連載の「メタルK」がアンケート結果を無視した掲載順位に追いやられていたことを、自伝「連載終了!」で述べている。
打ち切り不正?1.png
「アンケートは下から数えた方が早かった」
そして2回目「エッなにコレ!?」
「マツイさん、2回目からいきなり巻末ってどういう事ですか!?」
「アンケートの結果を見てやったにしては早すぎるじゃないですか!?」
「…そうだよ。どうやら最初から決めていたみたいだね。」

打ち切り不正?2.png
「…決め…てた…!?」
「…どうやらこの漫画を…いやもしかしたらオレの担当の漫画を嫌っている人が編集部内にいるのかもしれないね」
「…そ、そんな事…。漫画は皆、平等に読者の人気で判断するのが少年ジャンプじゃなかったんですか?…そんな…嫌うだなんて…」

例によってコミックゴン1号でメタルKの掲載順位を調べると
1・16・16・16・16・16・16・15・16・17

…かなりあからさまである。
普通は2週目で「早くも大人気!」とか言って嘘でも人気を煽るものだが。
なんとしてでもこの漫画を終わらせてやる!という少年ジャンプの熱意が感じられる。
こんな極端な順位は見たことがない。

最後の週だけ17位になっているが、コレはなぜか連載枠が一つ増えたため。メタルK終了により、また16枠に戻る。ちなみにメタルKが一度だけ15位に上がっているが、この週の最下位はメタルKより1週早く始まった「はなったれBoogie」。9週目の打ち切りだった。

打ち切りが既定路線になった「メタルK」だったが、意に反しアンケート順位が上がっていき、編集部で本当に打ち切るかどうか議論になったらしい。実際、第一話は自分の周囲では話題沸騰で、ヒロインの決め台詞を真似して遊んでいたぐらいである。
打ち切り不正?3.png

しかしすぐに次回作を描かせろという話にはなるので、才能は認められたのだろう。
思うに、題材が悪かったというのはあると思う。
メタルKは残酷描写が凄まじく、しかもヒロインがすぐ裸になる。
すぐに抗議が来そうな漫画ではある。
メタルK.png
作者の巻来功士は「連載終了!」の巻末で元編集長の堀江信彦と対談しているが、
このエピソードの謎については触れられていない。なんでやねん。


二人目の証言者は前回記事にした、ひらまつつとむの「飛ぶ教室」
核戦争後の世界を生き抜く少年少女をリアルに描いた異色作。
飛ぶ教室1.png
15回で打ち切られているが、作者がホームページで「人気はまずまずで、(人気が、なく打ち切られたといううわさは間違いです)」と書いている。

「核、放射能という重いテーマ性を、持った「飛ぶ教室」は、驚異的な飛躍の、まっただなかにある当時のジャンプにはリスクがある」そう編集部に言われ、打ち切りとなったそうです。

…うーん、「飛ぶ教室」を読み返してみて、そんなにリスクがある漫画かなあという疑問がある。原発事故のあった近年なら分かるけど。いったい編集部は何を恐れていたのか。かつては「はだしのゲン」も連載していた少年ジャンプなのに。

コミックゴン1号で掲載順位を調べると、
1・8・12・14・12・13・13・11・15・12・14・15・16・17・16
…となっていた。

メタルKとは違い、リアルな順位に見える。
実際の順位が反映されているかどうかは確かめようもないが、反映されているのだとしたら、あまり「まずまず」の人気という風にも見えない。別に作者が嘘をついているとも思わないが、記録があるのなら実際の順位を教えて欲しいと思う。貴重な資料になる。

 
思えば「飛ぶ教室」が始まった85年は車田正美の「男坂」が打ち切られた年なのである。
アニメ化されてない作品の方が少ないという黄金時代である。下ばっかり激しく循環している。参考にしたコミックゴンにも「10週打ち切りの当たり年」と分析されている。寺沢武一、平松伸二、ちば拓、次原隆二、桂正和、徳弘正也など、過去に実績があった漫画家も打ち切りを喰らっているのだ。

「飛ぶ教室」は描いた意義はあるし、インパクトもあった。
しかし正直リアルタイムで読んでいて終わって当然の漫画だと思っていた。
内容が固すぎる。ジャンプ的ではないと思う。
中途半端な「まずまず」の人気だったらさっさと終わらせたかったというのがジャンプ編集部の本音だったのではなかろうか。そういう意味で純粋にアンケート結果が反映されず、強制打ち切りにあったという話にはリアリティがある。

ちなみに「飛ぶ教室」と同時期に始まった新連載は他に2本。

1つは天沼俊の「すもも」。
1・5・7・9・13・7・10・14・16・17で10週打ち切り。
「飛ぶ教室」よりもアベレージが高いにもかかわらず、それより5週も早く終わっている。

もう一つが宮下あきらの「魁!!男塾」だった。
男塾は1・4・4・1・6・11・5・11・6・6・7・9・1…と圧倒的に抜きんでた結果を残している。
誰もが知るように、男塾はメガヒット作品となり、現在も数々のフォロー作品が生まれている。

こうして実際の掲載順位に照らし合わせると、
結構「飛ぶ教室」は優遇されているように見えるが。。。?

 
ところで土田世紀の「編集王」ではこの苛烈な新連載生き残り競争をアコギな感じに演出してコミカライズしている。
打ち切り不正?4.png
「春の新連載が4本スタートするわな…。その4本のうち必ず一発は命中させる…。それが俺の成功のカギなんだよ。部数を確実に伸ばし続けているヤングシャウトのな。」
 

連載終了!  少年ジャンプ黄金期の舞台裏

連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏

  • 作者: 巻来功士
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2016/02/07
  • メディア: コミック



飛ぶ教室 1 (少年ジャンプコミックス)

飛ぶ教室 1 (少年ジャンプコミックス)

  • 作者: ひらまつ つとむ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1986/02
  • メディア: 新書



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コメント 2

ヨシアキ

初めまして。ジャンプのアンケートシステムは有名ですね。多少アンケートで人気があっても、編集方針にそぐわない作品は切るようにしてるんでしょうかねえ。「コブラ」の寺沢武一氏は緻密すぎるゆえに遅筆で、ある程度描きためてから連載をスタートさせ、ストックがなくなると中断、という形で終わるようにしていたためにようやくアンケートで人気が上昇する頃になると終わってしまう作品だったそうですが、当時の編集長だった西村繁男氏のお気に入りだったらしく、人気アンケートの結果ではなかなか数時には出ないものの、単行本にまとまると息長く売れるということもあって「編集長枠」ということで例外だったようです。
by ヨシアキ (2020-03-17 20:33) 

hondanamotiaruki

こんにちわ。おそらくアンケートは絶対なんでしょうけども、ある程度は伸び代を見て裁量が効かせるんだろうなと思います。その辺で作者によっては不公平感を感じさせてしまう…と。メタルKは残酷描写が凄まじかったので、クレームを恐れたんでしょうね。

西村編集長は暗黒神話を絶賛してたって話が好きです。ジャンプ創刊前からちばてつやに張り付いて漫画を学んだと言うし、いい漫画が好きな人なんですね。それで商業的にも当ててるのが凄い。
by hondanamotiaruki (2020-03-18 01:51) 

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