24時間戦えますか？諸葛亮孔明に次ぐ蜀軍ズ・ビジネスマン、ぼくらの李厳を知っているか？：ムゲンホンダナ（本棚持ち歩き隊!!）：SSブログ

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24時間戦えますか？諸葛亮孔明に次ぐ蜀軍ズ・ビジネスマン、ぼくらの李厳を知っているか？　[歴史漫画] [編集]

横山光輝「三国志」を読んでいた時、ショックだったシーンがある。
35巻。劉備が蜀の侵攻を始め、蜀軍の李厳（りげん）と、劉備軍の黄忠が一騎討ちを始める。

それを見て諸葛亮のショッキングなひとこと。
「ふむう。腕は互角だな。」

ガーン！

…黄忠やぞ！
五虎将軍の！
老いて益々さかんと呼ばれた！
関羽と堂々と渡り合った！

それがこんなモブ顔と…互角！
仲間になった李厳がその後、猛将として活躍すればいいのだが全く出演しないのである。
それなのに、忘れた頃に名前がチョロチョロ出てくる。
なぜか顔は一向に出てこない。まるで顔出しNGの人みたいに。

顔出しの再登場はおそらく57巻の１コマだけ。全60巻だから、かなり終盤だ。

ロングショットなので判別がつきづらいが、なんか違う顔にも見える。
虞翻のときのように、横山光輝に忘れられてしまったのではなかろうか。

　
この李厳、最近知ったのだが、かなり蜀軍の中では出世した武将らしい。
諸葛亮に次ぐナンバー２クラスだという解説もある。
武官というより文官で、知識があり政治能力は諸葛亮も絶賛するほどだったという。
さらに土地の名士だったのか、蜀内における影響力も高かったという。

しかしちょっと困ったちゃんで、たびたび己の影響力を鼻にかけるような行動が目立ったという。

李厳が問題児として再登場するのは56巻。
北伐をやっている時、苟安（こうあん）という酒好きの文官が食料の補給の仕事を怠ったとして処分しなきゃいけないという話になる。しかし周りは苟安が李厳と親しいとして諸葛亮に減刑を求める。

諸葛亮は李厳の機嫌を損ねないよう、罪を減じる。
苟安は逆恨みして寝返り、敵の司馬懿と内通して諸葛亮を陥れることに成功する。

唐突に存在をほぼ忘れている李厳の名前が出てきて、
あの泣いて馬謖を切った諸葛亮をも厳罰を躊躇させる。
三国志初見の読者は絶対ポカンとするシーンである。
それなのに李厳の顔は相変わらず出てこない。

57巻ではついに李厳が食料補給に失敗し、それを誤魔化すために諸葛亮に罪を擦り付けようとしたが恥の上塗りになる。事件の当事者なのにやっぱり顔が出てこない。上級国民なのか？

ちなみに李厳の舎弟の苟安は架空の人物で三国志演義にしか登場しないので、おそらくこの李厳のやらかしの前振りとして必要となり創作された人物なのだろう。冒頭の黄忠との一騎討ちも演義の創作なんだそうだ。正史で李厳は劉備の蜀攻めで投降した者の中の一人だったが、重要人物なので登場シーンを印象付けるべく話を盛られたんだと思われる。（それに利用される黄忠って…）

李厳は死刑にされるべきところを、やっぱり影響力を恐れられ平民に落とされるのだった。財産もそのまま。息子の李豊も処罰せず、出世させてしまう温情処置。横山光輝三国志には描かれていないが、李厳は「こりゃワンチャン復職あるな」とまで自惚れたという（かなわなかったが）。この平民に落とされ都落ちするシーンが例の顔の判別がつかないロングショット。36巻以来、21巻ぶりの再登場であった。

ちなみに息子の李豊は52巻に登場している。

諸葛亮が北伐を開始し、それを知った元蜀軍の孟達が寝返ってくれることをお知らせする使者として登場。その時、李厳の息子として紹介されるのだ。

36巻で黄忠と一騎討ちで互角という華々しいデビューを飾った李厳。
その後52、56、57と名前が出てくるものの、重要人物にもかかわらず顔がほとんど出てこない。
なぜか？

たぶん魏延とキャラがかぶるからではないか？
横山光輝がそこまで計算して構成しているかはちょっと疑問だけども。
結果的に失敗してると思うし。
　
　
問題児ばかりだけど人材不足で使わざるを得ない蜀軍。
管理職の悲哀、染みる人も多いのではなかろうか。

諸葛亮は「泣いて馬謖を切る」で有名だけども、
泣いて馬謖を切ったのは蜀軍の中でも特に李厳に対する警告の比重は高かったのかもしれない。

　