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プルートゥの声は皆口裕子が演じるべきだった理由。浦沢直樹「PLUTO」 [この人気漫画が面白くない]

PLUTO デジタルVer.(1) (ビッグコミックス)

PLUTO デジタルVer.(1) (ビッグコミックス)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2022/10/28
  • メディア: Kindle版

鉄腕アトムの「地上最大のロボット」を読んだあとは浦沢直樹「PLUTO」全8巻を読んだ。

「PLUTO」は数々の漫画賞を受賞。
単行本1000万部。
アニメがネットフリックスで配信。
ハリウッドで実写映画化の話もあるという。

だから俺一人ぐらい批判的な感想を書いても構わんだろうと思う。
まあいつもの浦沢直樹批判です。

浦沢直樹の「MONSTER」風にアトムを脚色した漫画という感想をもったのだが、選択したエピソードが「地上最大のロボット」で正しかったのかどうかというのがまず引っかかる。

「地上最大のロボット」は他のエピソードと比べて話にそれほど深みがない。
プルートウも初っ端から姿を読者に見せているし、目的も明確である。
浦沢→手塚の順番で読んだ人は、あまりの話の単純さに驚いてしまうことだろう。
ちなみにPLUTOは単行本全8巻だが、地上最大のロボットのページ数は1巻分に足りない。

ちじょうさいだいのもつれ6.png

だからPLUTOのMONSTER風の味付けは、針小棒大に無闇矢鱈に風呂敷を広げた、いつもの空虚なサスペンスに思えてしまう。もっとMONSTER的アレンジがふさわしいエピソードが他にあったのでは無いか?たぶんあったのだろう。

「地上最大のロボット」を選択したのは、作者自身子供の頃に読んだ中で特に思い入れがあったから。それは分かる。手塚治虫も楽しんで描いたと語る、作中屈指の人気エピソードだ。同じように「地上最大のロボット」を元ネタにしたからこそ惹きつけられた読者も多かったことだろう。

他のエピソードのアレンジでは、ここまでのヒット作にならなかったのかもしれない。
この辺を間違えないのが、さすが浦沢直樹だと思える。

が、やはり「MONSTER」的な味付けがイマイチしっくりこないのである。
「地上最大のロボット」の元ネタである「伊賀の影丸」がスポーツ忍者漫画みたいなテイストだったので、「YAWARA!」的な味付けの方が面白く思えたかもしれない。

スイスナンバーワンロボット、モンブランを投げ飛ばした謎のロボットがいた!それをスクープしたドイツの刑事ロボットゲジヒト!「7人のロボットを次々に倒して金メダルぢゃ!」「おじーちゃん!(CV:皆口裕子)

YAWARA! 完全版 デジタル Ver.(1) (ビッグコミックス)

YAWARA! 完全版 デジタル Ver.(1) (ビッグコミックス)

  • 作者: 浦沢直樹
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/12/28
  • メディア: Kindle版

浦沢直樹は作画のセンスも一流だが、この世に存在しないメカの描写はイマイチ過ぎると思う。
20世紀少年の時も思ったことだが。
西原理恵子もPLUTO4巻巻末のオマケ漫画で同じようなことを書いている。
※=通常盤で確認

ちじょうさいだいのもつれ7.png

単行本2巻の巻末、手塚眞の解説によると、プレゼン時にはもっと手塚寄りの作画だったので、それをやめるように勧めたという。どんなだったのか見てみたい。

そのせいかどうか分からないが、PLUTOのロボットたちは人間と変わらないデザインにアレンジされたものが多い。しかもそのロボットが家に帰ると、人間と全く変わらない、いつもの浦沢的な家族の団欒を表現して見せるのだ。サラダを苦手そうに食べるし、お尻ペンペンして子供ロボをしつけるロボット。いったいぜんたい、どんなふうに作られたのだろう?高級なロボットほど人間くささを再現すると言っても限度があると思う。本当ならこれ一本で大河漫画にできてしまう。ある意味シュールで、読んでいて妄想が止まらなくなり、ページをめくる手が止まってしまう。

ちじょうさいだいのもつれ2.png

原作でもそうなのだが、アトムの世界ではロボットにも人権が認められている。
いかにも漫画らしい、手塚治虫の作風だと気にならない牧歌的な設定なのだ。
しかし手塚よりリアルな描写に比重を置いた浦沢直樹の作画では浮いた設定に思えてしまう。

ロボットに人間らしい暮らしを保障したこの世界は、失業者や居住スペースはどうなってるのだ?
浦沢作画だと、どこまでも気になってしょうがない。
繰り返すが本来、これだけで1本長編漫画が描けてしまう深淵なテーマであり、それこそまさにSFである。
そんな漫画が私は読みたかった。

 
「PLUTO」を読み終えた後は、U-NEXTで過去3回アニメ化されたアトムの「地上最大のロボット」を、それぞれ鑑賞した。とくに良かったのは3回目のアニメ!当時もすごいと思ったが、作画が豪華すぎて劇場用アニメのようだった。デザインを見比べてみるのも楽しいと思う。

オープニングにもプルートウが登場している。声は大塚明夫


浦沢直樹「PLUTO」で一番面白かったのは、
お茶の水博士がパトカーのデザインを犬型に決めるところである。

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原作では何の説明もないが、犬の頭の形をしたパトカーが登場する。タイヤのないエアカーなので、なかなか車には見えない。なぜこのようなデザインになったのか?車の作画が面倒だったのか?原作を読んでる時も、このシーンはいつもページをめくる手が止まってしまう。

ちじょうさいだいのもつれ5.jpg
パースもおかしい。

若い漫画家と手塚のやりとりで、
Q「どうやって車を描いてるんですか?」A「模型を見て」というやりとりがあった。
意外と苦手だったのかな。

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