SSブログ

ひゅーほほほ!貧乳という言葉も作った?安永航一郎「巨乳ハンター」 [名作紹介]

藤崎竜「封神演義」に登場する悪女、妲己が「ヒューッホホホ…」と笑うシーンがある。(単行本6巻)

ひんにゅうすくわっと1.png

この笑いは安永航一郎の「巨乳ハンター」(1989年)が元ネタではないか?かなりマニアックなギャグだ。二つの作品の時差は8年もある。

ひんにゅうすくわっと2.png

巨乳ハンターは、巨乳女性に恨みを持つアホな女子高生が、変装して巨乳女性の魚拓ならぬパイ拓をとって溜飲を下げるというギャグ漫画。変身するためには中華まんが必要。

ひんにゅうすくわっと3.png

ヌードは出てくるがいやらしさがなく、例えるならばアメリカンプロレスの客席でテンションが高まってバストトップを晒す金髪のおばちゃんみたいな陽気なノリである。

ひんにゅうすくわっと6.png
(画像はサムシング吉松「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」

「ひゅーほほほ」は作品を象徴するネームであるが、原作第一話を読み返すと「うふふふふ」「はははははは」「わはははは」「ほほほほほ」「にょほほほほ」「ふふふふふ」「おほほほほ」「どはははは」ときて、ようやく最後の最後に小さく「ひゅーほほほ」が登場する。

ひんにゅうすくわっと5.png

登場と同時に「ひゅーほほほ」を使うのは第3話からだった。その後、「うひょーほほほ」などの回もありつつ、6話と7話で巨乳ハンターの真似をする人どちらにも「ひゅーほほほ」と言わせてることから、この辺で完全に巨乳ハンターといえば「ひゅーほほほ」が定着したと考えられる。

 
巨乳ハンターは安永作品の中でもっとも知名度が高い作品ではないだろうか。
なにしろ2度も一般層向けに実写映像化されているのである。
チラッと映像を見て、「あ、コレは見なくていいやつだ」と思った記憶がある。

巨乳ハンター [Laser Disc]

巨乳ハンター [Laser Disc]

  • 出版社/メーカー: レッスンの友社
  • 発売日: 1991/03/20
  • メディア: その他

巨乳ハンター2 [VHS]

巨乳ハンター2 [VHS]

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 1990/12/22
  • メディア: VHS


かつて世の中には「巨乳ブーム」というものがあったが、
そのきっかけとなった作品ではないか?という記憶もある。

ウィキを辿って調べてみると、週刊ポストの記事に以下の様にある
「“巨乳”という言葉自体は、すでに『平凡パンチ』1967年8月28日号でジェーン・マンスフィールドの胸を表現する際に使われており、『バチェラー』でも1980年代前半から頻繁に掲載されていましたが、世の中に浸透したのは松坂季実子の出現以降です」

その松坂貴美子のAVデビューが1989年2月。
メーカーや芸能事務所が巨乳というキャッチコピーで売り出した訳ではなく、
写真週刊誌FLASHの記者だった肥留間正明という人が取材してそう論評したことからブームになったらしい。
(ちなみに肥留間正明氏は今年2023年2月18日73歳で亡くなっている)


巨乳ハンターは少年サンデー1989年16号で連載開始。
今年のサンデーの発売日を確認すると3月15日発売なので、かなり同時期である。
制作期間を考えると、ブームに便乗していない作品であることは間違いない。
ブームを作った作品のひとつと断言してしまっていいような気もする。

ちなみに3話で松坂貴美子に言及している。

ひんにゅうすくわっと7.png

 
ところで「貧乳」は巨乳ハンターが初出かもしれない。
それ以前はペチャパイと形容されていた。まな板、洗濯板はそれより後だった気がするがどうか。

ひんにゅうすくわっと4.png

貧乳の起源はいつか?2012年に国会図書館で調べた人がいた。

一般向け雑誌レベルにおいて「貧乳」の用例がいつまでさかのぼれるかを検討しています。「貧乳」なる語の初出は1996年。1996年1月13日の『微笑』にある:「How to快適生活 17回 女の武器だから元気ないオッパイに喝! 貧乳もダンベル体操&マッサージ+ハトムギ茶でたわわに! ※ヨガ、ツボ刺激、ブラ選び、他」というのが確認できる限りで最古です。

だそうなので、圧倒的に巨乳ハンターが勝っている!

2006年に、「たぶん自分が起源」と主張している人もいる。

「貧乳」って言葉、ありますよね。あれ作ったの、たぶん、ぼくです。どうだ。これは自慢になるのか、自慢にならんのか、微妙なところ。まさかここまで世間様に浸透する単語になろうとは。最初はテレビ情報誌に書いたんですよ。「TVブロス」なんですけど。当時はそっち方面の雑誌でたくさん仕事をしていて、連載も持っていたから、タレントさんをいじるコラムの中で、なにげなく使った。すでに「巨乳」という言葉はあったけど、その反義語は「小乳」とか「微乳」とかしかなくて。もっと貧乏くさい、幸の薄い感じだよなあと「貧乳」にしてみました。「豊かなおっぱい」の反対は何だろうと考えて、「貧しいおっぱい」という言葉が出てきたのもありました。最初に使ったのは葉月里緒菜に対して、95年か96年だと思います。

96年の『微笑』と、95年か96年だという『TVブロス』のどちらが早かったのか、微妙に気になる。
少なくとも国会図書館ユーザーや編集者からは1989年の巨乳ハンター貧乳初出論に反論が出てこなさそうなのは間違いない。やったぜ、ひゅーほほほ!

 
巨乳ハンターはいたずらに巨乳ブームを煽っていた訳ではなく、
単行本巻末のおまけ漫画で行き過ぎた巨乳ブームに警鐘を鳴らしていたりもする。
カジワラタケシ「彼女はデリケート」(当時、少年マガジンで連載していたラブコメ)に触れているのがツボだった。

ひんにゅうすくわっと8.png
 
他にも単行本巻末の漫画で陸軍中野予備校の最終巻に言及されていたのが嬉しかった(当時刊行が待ち望まれていた)。そういう意味でも思い出深い。

<追記>
島村春奈「島村さんちのこどもたち」3巻に「巨乳ハンター」ネタを発見。初出は1992年。
車田正美の「青い鳥の神話」のパロディ漫画で雑誌ファンロードに掲載された。

スクリーンショット 2023-05-29 6.08.58.png
 
<追記>
1990年小山田いくの「霊能バトル」に「ひーひほほ」
オダワラ行く.png
この漫画、椎名高志「GS美神 極楽大作戦!!」(1991年)そっくりであるが、こっちの方が早い


巨乳ハンター 右乳編

巨乳ハンター 右乳編

  • 作者: 安永航一郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/03/17
  • メディア: Kindle版



巨乳ハンター 左乳編

巨乳ハンター 左乳編

  • 作者: 安永航一郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/03/17
  • メディア: Kindle版



定吉七番シリーズ(5) 大閤殿下の定吉七番 (角川文庫)

定吉七番シリーズ(5) 大閤殿下の定吉七番 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/05/08
  • メディア: 文庫



nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:コミック

nice! 0

コメント 1

智

巨乳ハンター!懐かしい!
安永航一郎先生の絵ってスッキリしてて、オゲレツな話でも全然エロスを感じないのがいいですね。
多分、『県立地球防衛軍』で出会って、ずっと好きだけど人に薦めたことはない、けど好き。みたいな心の位置にいる漫画家です。
あまりフォロワーはいなさそう、、と思っていましたが、こうしてパロられてると知れて少し嬉しい。
by 智 (2023-06-09 00:01) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。