ビブリア古書堂の事件手帖の感想をひたすら書く! [名作紹介]
前回予告した通り、
古本ミステリー小説「ビブリア古書堂の事件手帖」の小説以外の作品のほぼ全てを制覇したので、その感想を触れた順に書いていく。
ちなみに、それぞれ一見の価値有りという前提で語っていく。見て損したというレベルのものは無いので、どちらかというと減点方式気味に語るのは読む前にご理解いただきたい。なお、ネタバレ有りですが、隠せるところは隠すように努めます。
映画版(サブスク、U-NEXTで視聴可能)
原作小説の1巻を基に映像化している。
主演の黒木華が本の虫っぽくていい。それがこの作品の全てと言ってしまってもいいかもしれない。
監督が女性だからか、女性ファンを取り込みたかったのか、原作で全く描かれなかった部分を膨らませ、これは誰の回想なの?って感じの誰の回想でもない悲しい幻想的なラブストーリーが展開する。
このラブストーリーが寿司でいうネタの部分だとすると、原作の探偵部分はシャリみたいな関係になるのだが、テイストが違うせいかあまり食い合わせがよくない。見栄えを優先に演出してる様に感じるシーンが散見する。これぞ映画と言えるような息を呑むような美しいシーンも多々あるのだが、でもこれってアレだよねとツッコミしたくなるケースがついて回り、トータルとしてチープな出来に見えてしまう。
東出昌大のスーツ姿がバッチリ決まっていて、スタイルの良さに驚いた。なんで人気あるのかよく知らなかった俳優だが、なんか納得した。原作を読むと、黒木華に匹敵する「これしかない」キャスティングだと思えるのだが、そこまでで終わってる(あと二人同じような人を連れて来ないといけない)のが残念。いっそのこと主人公役も東出で良かったのかもしれない。岩井俊二のあの映画みたいに。
この映画版が最初に見たビブリアだったので、あとで漫画を読んで「志田」というキャラクターが映画から削除されていたことを知る。前回のブログに書いているが、小山清の『落穂拾ひ』を擁護して解説するのが志田である。
原作では志田の存在があるおかげで真犯人の判明に意外性を持たせられているのだが、志田のいない映画版は真犯人が丸わかりになってしまっている。映画版は動機不明な脚色が多く、そのほとんどが失敗していると感じる。炎上した剛力彩芽主演のTVドラマ版の方が原作に忠実だと思う。
ちなみにこの実写映画版の制作発表と同時に、劇場アニメも告知されていたらしいが、その後 音沙汰がない。実写映画版の興行成績はあまり芳しくなかったようだが、それが影響しているのだろうか?
角川コミックス版(サブスクKindle Unlimitedで閲覧可能)
全6巻。作画はナカノ。原作の2巻までをコミカライズしている。
ラブコメっぽい丸っこい作画で安心して読めるのだが、自分的には序盤の安定してない作画が好み。
栞子も巻数が進むとどんどん幼い感じになっていく。まあこれはよくあること。
(左:単行本1巻/右:単行本6巻)
気になるのが、5巻あたりから作画のクオリティが劣化しているところ。
意外と面倒な本棚の作画にそれが表れていると思う。
(単行本1巻)
(単行本6巻)
アシスタントの手配が困難になったのか、作者が力尽きたのか、終了が決まってモチベーションが落ちたのかは分からない。単行本は6巻で終了。1巻は最低でも10万部出ているらしい。続きが読みたかった。。。
作者は近年も新刊を出しており、その作品のヒロインが書店で働いていたので本棚の作画をチェックしてみたのだが、作画はもっと酷くなっていた。何か事情があるっぽい。
講談社コミックス版
全3巻。作画は交田稜。原作の1巻をコミカライズ。
少しテンポがぎごちない堅い作風。好みの問題だが作画も気になる。
角川版より劇画寄りでリアルなタッチなせいか、作中のキャラクターの横向きの顔の目の位置、後頭部の厚みに強い違和感がある。デフォルメだとすることもできるが、これを推し進めるとカイジになる。横顔は原作小説のカバーの定番であり、作品を象徴する構図なので、もう少し寄せてもよかったのではないか。
(左から原作小説版、角川コミックス版、講談社コミックス版の五浦大輔の横顔)
お尻をこだわって描写してるのは角川版よりも良いと思う。
しかし栞子の胸が奇乳気味で、パジャマでもウエストのくびれを強調した作画でやり過ぎ感がある。
3巻の最後に最終章開幕と銘打った予告があるが、単行本は発売されていない。実際に連載があったのかも分からなかった。続きがあれば読みたかったので残念。
TVドラマ版
全11話。原作の4巻までを映像化。
TVドラマ特有の、効率よく急いで撮ってます感が苦手だけども、普通に見られる出来だと思う。
自分がビブリアという作品を認識したのは、主演の剛力彩芽が原作の栞子のイメージと違うと炎上したのがキッカケ。そもそも原作の栞子は売れる要素を煮詰めたような記号的なキャラクターという印象が強いので、ショートで巨乳じゃない人が演じても別にいいじゃんって思う。
それにしても剛力彩芽が美人で驚く。女優として動いているところを見たのはこれが初めてかもしれない。しかしどうしても頭に前澤社長のことが浮かぶし、役割以外のことはしない置物のような感じ。外見に隙が無さすぎで、本よりもオシャレが大事って感じの栞子になっている。
相方になる五浦大輔役の俳優が、舞台で地道に演技経験積んできました系の人かなと思ったらエグザイルのAKIRAでびっくりした。新しい方のGTOのTVドラマもこの人がやっているらしい。
エグザイルの妹分みたいなアイドルグループから本作に出演している人もいて、キャスト的にはゴリ押しバーター感が半端ないのだが、見てみると普通に違和感ない演技をしていたので、やはりそれなりに実力が突出している人を推してきているのだと思う。
何か不都合があるのかホームレスではなくなっていたが、志田役の高橋克己もいい。
女子高生だった妹は、イケメンの弟に変更されているが、この方がリアリティがある。
母親役は安田成美。老獪で不気味な感じが良かった。海原雄山になるのか碇ゲンドウになるのかワクワクしたが、ちょっといまひとつの結末。原作小説だとまた違うのかもしれない。
スピンオフ作品コミックス版
全2巻。作画は葵季むつみ 。スピンオフ原作の1巻までをコミカライズしているようである。
登場人物は一新しているが、栞子たちも登場する。
よくよく考えると原作とまるで違う、アニメチックな世界観。
オタク好きのしそうなキャラクターデザインで取っ付きにくいが、読んでみると悪くない。こちらはビブリアからミステリーの部分を除いて、紹介された本を思わず読んでみたくなる読後感だけを抽出したような内容になっている。
扱う本も、「シャーロック・ホームズの冒険」「ゲド戦記」「ネバーエンディングストーリー」など、知ってるけど読んだことがないメジャー作品が多い。
原作の半分で終わっているみたいだ。もっと読みたかった。原作読むか。
【おまけ】ビブリオ漫画文庫
ツイッターで松本零士の「古本屋古本堂」の1コマを見て面白そうだったので検索すると出てきたのがこの本。古本に関する短編漫画をまとめたもので2017年に出版されており、他に水木しげるやつげ義春、梅図かずお、諸星大二郎らの作品が収録されている。
松本零士の「古本屋古本堂」は1970年にCOMが初出。古い漫画が大好きな男が、探してた漫画を多量に発見する夢を見て、幸福感に包まれたまま死んでいくという話。今年亡くなられた故人も、このように亡くなっていったのではないかと思わせる。
「ビブリア古書堂の事件手帖」を読むキッカケになった田川紀久雄を知ったのは
松本零士の「漫画大 博物館」でだが、田川はこの漫画にも名前が出てくる。
今どきビブリアみたいな古本屋はブックオフに駆逐されて地方にはあまり無いよねと思っていたが、実際検索してみると市内に3軒もあった。どれも「あそこにあったのか!」という感じの、やる気のない古い店構えである。そのうちの一軒に入ってみたが、いきなりブックオフでは見たことのない、珍しい本を見つけた。今後はそういうお店も巡回しようと思いました。
古本ミステリー小説「ビブリア古書堂の事件手帖」の小説以外の作品のほぼ全てを制覇したので、その感想を触れた順に書いていく。
ちなみに、それぞれ一見の価値有りという前提で語っていく。見て損したというレベルのものは無いので、どちらかというと減点方式気味に語るのは読む前にご理解いただきたい。なお、ネタバレ有りですが、隠せるところは隠すように努めます。
映画版(サブスク、U-NEXTで視聴可能)
原作小説の1巻を基に映像化している。
主演の黒木華が本の虫っぽくていい。それがこの作品の全てと言ってしまってもいいかもしれない。
監督が女性だからか、女性ファンを取り込みたかったのか、原作で全く描かれなかった部分を膨らませ、これは誰の回想なの?って感じの誰の回想でもない悲しい幻想的なラブストーリーが展開する。
このラブストーリーが寿司でいうネタの部分だとすると、原作の探偵部分はシャリみたいな関係になるのだが、テイストが違うせいかあまり食い合わせがよくない。見栄えを優先に演出してる様に感じるシーンが散見する。これぞ映画と言えるような息を呑むような美しいシーンも多々あるのだが、でもこれってアレだよねとツッコミしたくなるケースがついて回り、トータルとしてチープな出来に見えてしまう。
東出昌大のスーツ姿がバッチリ決まっていて、スタイルの良さに驚いた。なんで人気あるのかよく知らなかった俳優だが、なんか納得した。原作を読むと、黒木華に匹敵する「これしかない」キャスティングだと思えるのだが、そこまでで終わってる(あと二人同じような人を連れて来ないといけない)のが残念。いっそのこと主人公役も東出で良かったのかもしれない。岩井俊二のあの映画みたいに。
この映画版が最初に見たビブリアだったので、あとで漫画を読んで「志田」というキャラクターが映画から削除されていたことを知る。前回のブログに書いているが、小山清の『落穂拾ひ』を擁護して解説するのが志田である。
原作では志田の存在があるおかげで真犯人の判明に意外性を持たせられているのだが、志田のいない映画版は真犯人が丸わかりになってしまっている。映画版は動機不明な脚色が多く、そのほとんどが失敗していると感じる。炎上した剛力彩芽主演のTVドラマ版の方が原作に忠実だと思う。
ちなみにこの実写映画版の制作発表と同時に、劇場アニメも告知されていたらしいが、その後 音沙汰がない。実写映画版の興行成績はあまり芳しくなかったようだが、それが影響しているのだろうか?
角川コミックス版(サブスクKindle Unlimitedで閲覧可能)
全6巻。作画はナカノ。原作の2巻までをコミカライズしている。
ラブコメっぽい丸っこい作画で安心して読めるのだが、自分的には序盤の安定してない作画が好み。
栞子も巻数が進むとどんどん幼い感じになっていく。まあこれはよくあること。
(左:単行本1巻/右:単行本6巻)
気になるのが、5巻あたりから作画のクオリティが劣化しているところ。
意外と面倒な本棚の作画にそれが表れていると思う。
(単行本1巻)
(単行本6巻)
アシスタントの手配が困難になったのか、作者が力尽きたのか、終了が決まってモチベーションが落ちたのかは分からない。単行本は6巻で終了。1巻は最低でも10万部出ているらしい。続きが読みたかった。。。
作者は近年も新刊を出しており、その作品のヒロインが書店で働いていたので本棚の作画をチェックしてみたのだが、作画はもっと酷くなっていた。何か事情があるっぽい。
講談社コミックス版
全3巻。作画は交田稜。原作の1巻をコミカライズ。
少しテンポがぎごちない堅い作風。好みの問題だが作画も気になる。
角川版より劇画寄りでリアルなタッチなせいか、作中のキャラクターの横向きの顔の目の位置、後頭部の厚みに強い違和感がある。デフォルメだとすることもできるが、これを推し進めるとカイジになる。横顔は原作小説のカバーの定番であり、作品を象徴する構図なので、もう少し寄せてもよかったのではないか。
(左から原作小説版、角川コミックス版、講談社コミックス版の五浦大輔の横顔)
お尻をこだわって描写してるのは角川版よりも良いと思う。
しかし栞子の胸が奇乳気味で、パジャマでもウエストのくびれを強調した作画でやり過ぎ感がある。
3巻の最後に最終章開幕と銘打った予告があるが、単行本は発売されていない。実際に連載があったのかも分からなかった。続きがあれば読みたかったので残念。
TVドラマ版
全11話。原作の4巻までを映像化。
TVドラマ特有の、効率よく急いで撮ってます感が苦手だけども、普通に見られる出来だと思う。
自分がビブリアという作品を認識したのは、主演の剛力彩芽が原作の栞子のイメージと違うと炎上したのがキッカケ。そもそも原作の栞子は売れる要素を煮詰めたような記号的なキャラクターという印象が強いので、ショートで巨乳じゃない人が演じても別にいいじゃんって思う。
それにしても剛力彩芽が美人で驚く。女優として動いているところを見たのはこれが初めてかもしれない。しかしどうしても頭に前澤社長のことが浮かぶし、役割以外のことはしない置物のような感じ。外見に隙が無さすぎで、本よりもオシャレが大事って感じの栞子になっている。
相方になる五浦大輔役の俳優が、舞台で地道に演技経験積んできました系の人かなと思ったらエグザイルのAKIRAでびっくりした。新しい方のGTOのTVドラマもこの人がやっているらしい。
エグザイルの妹分みたいなアイドルグループから本作に出演している人もいて、キャスト的にはゴリ押しバーター感が半端ないのだが、見てみると普通に違和感ない演技をしていたので、やはりそれなりに実力が突出している人を推してきているのだと思う。
何か不都合があるのかホームレスではなくなっていたが、志田役の高橋克己もいい。
女子高生だった妹は、イケメンの弟に変更されているが、この方がリアリティがある。
母親役は安田成美。老獪で不気味な感じが良かった。海原雄山になるのか碇ゲンドウになるのかワクワクしたが、ちょっといまひとつの結末。原作小説だとまた違うのかもしれない。
スピンオフ作品コミックス版
ビブリア古書堂の事件手帖スピンオフ こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌 1 (MFC)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/10/22
- メディア: Kindle版
全2巻。作画は葵季むつみ 。スピンオフ原作の1巻までをコミカライズしているようである。
登場人物は一新しているが、栞子たちも登場する。
よくよく考えると原作とまるで違う、アニメチックな世界観。
オタク好きのしそうなキャラクターデザインで取っ付きにくいが、読んでみると悪くない。こちらはビブリアからミステリーの部分を除いて、紹介された本を思わず読んでみたくなる読後感だけを抽出したような内容になっている。
扱う本も、「シャーロック・ホームズの冒険」「ゲド戦記」「ネバーエンディングストーリー」など、知ってるけど読んだことがないメジャー作品が多い。
原作の半分で終わっているみたいだ。もっと読みたかった。原作読むか。
【おまけ】ビブリオ漫画文庫
ツイッターで松本零士の「古本屋古本堂」の1コマを見て面白そうだったので検索すると出てきたのがこの本。古本に関する短編漫画をまとめたもので2017年に出版されており、他に水木しげるやつげ義春、梅図かずお、諸星大二郎らの作品が収録されている。
松本零士の「古本屋古本堂」は1970年にCOMが初出。古い漫画が大好きな男が、探してた漫画を多量に発見する夢を見て、幸福感に包まれたまま死んでいくという話。今年亡くなられた故人も、このように亡くなっていったのではないかと思わせる。
「ビブリア古書堂の事件手帖」を読むキッカケになった田川紀久雄を知ったのは
松本零士の「漫画大 博物館」でだが、田川はこの漫画にも名前が出てくる。
今どきビブリアみたいな古本屋はブックオフに駆逐されて地方にはあまり無いよねと思っていたが、実際検索してみると市内に3軒もあった。どれも「あそこにあったのか!」という感じの、やる気のない古い店構えである。そのうちの一軒に入ってみたが、いきなりブックオフでは見たことのない、珍しい本を見つけた。今後はそういうお店も巡回しようと思いました。
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