活字離れも本が読みたくなる「ビブリア古書堂の事件手帖」を一挙20冊ぐらい買った話 [名作紹介]
松本零士の漫画コレクションを紹介する「漫画大博物館」という本。
知らない漫画家ばかりだが、その中で田川紀久雄という漫画家が気になった。
昭和22年、15歳でデビュー。天才と呼ばれたが、わずか2年で引退したという。
検索してみたら、「ビブリア古書堂の事件手帖」という映画に出てくるという。
加入してるサブスクにあったので視聴してみたのだが、『盗まれた貴重な古書』というぐらいの扱いで、それが田川紀久雄作品でなくても成立する程度の出番だった。しかし主演の黒木華がページをめくりながらニヤける何気ないカットが良かった。その漫画はとある古書店で385000円の値が付けられている。
この映画「ビブリア古書堂の事件手帖」の冒頭、いきなり惹き込まれた。
主人公は少年時代、祖母が大事にしている夏目漱石全集にちょっと触れただけで、祖母の逆鱗にも触れてしまう。逆上した祖母に強烈なビンタを食らい、その後の人生で活字の本が読めなくなるぐらいのトラウマを植え付けられる。
祖母が亡くなり、遺品の全集をチェックしてみると、夏目漱石のサインを発見。
このサインのせいで2度もぶたれたのかと古書店に全集を持ち込むが、サインは偽物と判明。
その古書店、ビブリア古書堂の店主の栞子(しおりこ)は豊富な商品知識とシャーロック・ホームズなみの推理で、偽のサインに込められた祖母の事情を見抜いてしまう。
…と言うのが話のマクラ。
安楽椅子探偵系のミステリー作品だ。
古書の豆知識みたいなものが豊富に出てくるのが楽しい。
が、徐々に自分の視聴テンションは下がっていく。
特にラストの展開が萎えた。
クライマックスに登場する敵役を、
監督はまるでターミネーターのように演出しようとしているのだが、
出てくるのはシュワちゃんのような屈強な男ではなく、線の細い古本ストーカーなのである。
ターミネーターはショットガンを手にハーレーに乗ってやってくるが、
古本ストーカーはスタンガンを片手に原付バイク。
軽自動車に乗って逃げる主人公たちを追いかけ回す。
キレイにハリウッド映画の縮小版になってしまっている。
ロケ地が鎌倉なので、そこで激しいカーチェイスやったらスゴイなと一瞬期待したのだが、古本ストーカーは律儀にヘルメットかぶり、交通ルールを守ってのんびり追いかけてくるのだ。まるで迫力がない。
というか、本棚を倒して古本ストーカーに古本のシャワー食らわせ一件落着と思いきや、主人公はなぜか「逃げろ!」とか言い出すのが決定的におかしい。人通りの多い駅近くで、なぜか誰にも助けを求めない。かなりゲンナリした。
これ、原作と絶対違うと思ったので、興味を持ってコミカライズを購入することにした。
原作小説に行かないのはビブリアの主人公の如く、私も活字の本が苦手だからである。
だからこそこの作品に惹かれる部分もある。
コミカライズは2種類あり、両方購入してみた。
角川書店版の全6巻(作画:ナカノ)と講談社版の全3巻(作画:交田稜)がある。
どちらも2012年ぐらいの連載開始だ。
さらに2013年のTVドラマ版をTSUTAYAで物理レンタルして、ついには原作小説1巻を読んでみた。
やはり原付ターミネーターは映画版のみの脚色のようである。
ついでに言うと田川紀久雄のエピソードも映画版のみ。
そんな感じで映画をきっかけにアレコレ見てみた「ビブリア古書堂の事件手帖」。
古書という非常に硬派でマニアックなテーマを扱っているが、非常にナンパなところもあって極端で驚く。
まずヒロインの栞子の容貌は黒髪ロングの巨乳メガネっ子で、コッテコテである。
「はわわ〜」とか言っちゃう感じだし。
(この画像はビブリアではありません)
女子高生の妹と二人っきりで古書店を切り盛りしていて、そんな好条件なのにバイトが居付かない不思議。それでちょうど無職だった主人公が雇われる。二人はお互いに特別な好意を抱きつつ、、、典型的なラブコメ関係を維持。
(角川版)
(講談社版)
古書というあまりにもマニアックな題材を扱うために、
描きたいこと以外は売れ線に全振りしてやる!という作者の覚悟を感じる。
さらに作中にそういったコテコテ批判を想定したみたいなエピソードが存在するのが面白い。
映画版以外のビブリアには、小山清の『落穂拾ひ』という1955年の短編小説を引用する話がある。
その小説は、人付き合いが苦手で世渡り下手な貧乏人が、純真無垢な若い古書店員から優しくされ、プレゼントまで貰ってしまうという内容なのだそうだ。
(角川版)
「あるわけねえじゃねえかそんな話。」と、劇中に登場する人物に厳しいツッコミを食らわせつつも、「まあでも そういうことが分かってて作者もあの話を書いたんだろうぜ。読めば分かる。あれは甘ったるい話を書く奴に感情移入する話なんだ。」と、のたまう。
(講談社版)
『落穂拾ひ』読んでみたいと思わせる。
活字嫌いの俺でもそう思わせる本が「ビブリア古書堂」ではいくつも紹介される。
子供に本を読ませたい親御さんは、ここから興味を持たせてみるのも良いのではなかろうか。
TVドラマ版もありますし。(映画はベッドシーンがあるので、ご家族で見るのは勧められません)
他にも、「時計じかけのオレンジ」の原作小説には初出版時に最終章がカットされていたとか、
ペーパーナイフで一枚ずつ切って読む本(袋とじではない)とか、活字離れな私の知らない知識がいっぱいだ。
続きが読みたいが、漫画や映像作品で原作の内容を全てフォローしたものは無いので、小説の続刊をほとんど購入してしまった。
…というわけで次回は、
自分が見てきた「ビブリア古書堂の事件手帖」の色んなバージョンを解説してみようと思う。
基本、原作小説以外で!
続く
手塚治虫による田川紀久雄の人物評はなかなか辛辣である。師匠の酒井七馬の扱いもそうだが、死体蹴りをするクセがあるようだ。
知らない漫画家ばかりだが、その中で田川紀久雄という漫画家が気になった。
昭和22年、15歳でデビュー。天才と呼ばれたが、わずか2年で引退したという。
検索してみたら、「ビブリア古書堂の事件手帖」という映画に出てくるという。
加入してるサブスクにあったので視聴してみたのだが、『盗まれた貴重な古書』というぐらいの扱いで、それが田川紀久雄作品でなくても成立する程度の出番だった。しかし主演の黒木華がページをめくりながらニヤける何気ないカットが良かった。その漫画はとある古書店で385000円の値が付けられている。
この映画「ビブリア古書堂の事件手帖」の冒頭、いきなり惹き込まれた。
主人公は少年時代、祖母が大事にしている夏目漱石全集にちょっと触れただけで、祖母の逆鱗にも触れてしまう。逆上した祖母に強烈なビンタを食らい、その後の人生で活字の本が読めなくなるぐらいのトラウマを植え付けられる。
祖母が亡くなり、遺品の全集をチェックしてみると、夏目漱石のサインを発見。
このサインのせいで2度もぶたれたのかと古書店に全集を持ち込むが、サインは偽物と判明。
その古書店、ビブリア古書堂の店主の栞子(しおりこ)は豊富な商品知識とシャーロック・ホームズなみの推理で、偽のサインに込められた祖母の事情を見抜いてしまう。
…と言うのが話のマクラ。
安楽椅子探偵系のミステリー作品だ。
古書の豆知識みたいなものが豊富に出てくるのが楽しい。
が、徐々に自分の視聴テンションは下がっていく。
特にラストの展開が萎えた。
クライマックスに登場する敵役を、
監督はまるでターミネーターのように演出しようとしているのだが、
出てくるのはシュワちゃんのような屈強な男ではなく、線の細い古本ストーカーなのである。
ターミネーターはショットガンを手にハーレーに乗ってやってくるが、
古本ストーカーはスタンガンを片手に原付バイク。
軽自動車に乗って逃げる主人公たちを追いかけ回す。
キレイにハリウッド映画の縮小版になってしまっている。
ロケ地が鎌倉なので、そこで激しいカーチェイスやったらスゴイなと一瞬期待したのだが、古本ストーカーは律儀にヘルメットかぶり、交通ルールを守ってのんびり追いかけてくるのだ。まるで迫力がない。
というか、本棚を倒して古本ストーカーに古本のシャワー食らわせ一件落着と思いきや、主人公はなぜか「逃げろ!」とか言い出すのが決定的におかしい。人通りの多い駅近くで、なぜか誰にも助けを求めない。かなりゲンナリした。
これ、原作と絶対違うと思ったので、興味を持ってコミカライズを購入することにした。
原作小説に行かないのはビブリアの主人公の如く、私も活字の本が苦手だからである。
だからこそこの作品に惹かれる部分もある。
コミカライズは2種類あり、両方購入してみた。
角川書店版の全6巻(作画:ナカノ)と講談社版の全3巻(作画:交田稜)がある。
どちらも2012年ぐらいの連載開始だ。
さらに2013年のTVドラマ版をTSUTAYAで物理レンタルして、ついには原作小説1巻を読んでみた。
やはり原付ターミネーターは映画版のみの脚色のようである。
ついでに言うと田川紀久雄のエピソードも映画版のみ。
そんな感じで映画をきっかけにアレコレ見てみた「ビブリア古書堂の事件手帖」。
古書という非常に硬派でマニアックなテーマを扱っているが、非常にナンパなところもあって極端で驚く。
まずヒロインの栞子の容貌は黒髪ロングの巨乳メガネっ子で、コッテコテである。
「はわわ〜」とか言っちゃう感じだし。
(この画像はビブリアではありません)
女子高生の妹と二人っきりで古書店を切り盛りしていて、そんな好条件なのにバイトが居付かない不思議。それでちょうど無職だった主人公が雇われる。二人はお互いに特別な好意を抱きつつ、、、典型的なラブコメ関係を維持。
(角川版)
(講談社版)
古書というあまりにもマニアックな題材を扱うために、
描きたいこと以外は売れ線に全振りしてやる!という作者の覚悟を感じる。
さらに作中にそういったコテコテ批判を想定したみたいなエピソードが存在するのが面白い。
映画版以外のビブリアには、小山清の『落穂拾ひ』という1955年の短編小説を引用する話がある。
その小説は、人付き合いが苦手で世渡り下手な貧乏人が、純真無垢な若い古書店員から優しくされ、プレゼントまで貰ってしまうという内容なのだそうだ。
(角川版)
「あるわけねえじゃねえかそんな話。」と、劇中に登場する人物に厳しいツッコミを食らわせつつも、「まあでも そういうことが分かってて作者もあの話を書いたんだろうぜ。読めば分かる。あれは甘ったるい話を書く奴に感情移入する話なんだ。」と、のたまう。
(講談社版)
『落穂拾ひ』読んでみたいと思わせる。
活字嫌いの俺でもそう思わせる本が「ビブリア古書堂」ではいくつも紹介される。
子供に本を読ませたい親御さんは、ここから興味を持たせてみるのも良いのではなかろうか。
TVドラマ版もありますし。(映画はベッドシーンがあるので、ご家族で見るのは勧められません)
他にも、「時計じかけのオレンジ」の原作小説には初出版時に最終章がカットされていたとか、
ペーパーナイフで一枚ずつ切って読む本(袋とじではない)とか、活字離れな私の知らない知識がいっぱいだ。
続きが読みたいが、漫画や映像作品で原作の内容を全てフォローしたものは無いので、小説の続刊をほとんど購入してしまった。
…というわけで次回は、
自分が見てきた「ビブリア古書堂の事件手帖」の色んなバージョンを解説してみようと思う。
基本、原作小説以外で!
続く
手塚治虫による田川紀久雄の人物評はなかなか辛辣である。師匠の酒井七馬の扱いもそうだが、死体蹴りをするクセがあるようだ。
#COM 1968年8月号です。
— 鈴木昭彦 (@Acky_phoenix) November 21, 2020
この「火の鳥」の表紙はナメクジたちの干からびた行進の跡なのではないか,と今感じてしまって戦慄を覚えています。
「ぼくのまんが記」中で田川紀久男氏を“頭のおかしな少年“とか結構言いたい放題です,手塚先生。#手塚治虫 https://t.co/HrBeO11D8x pic.twitter.com/yS1KIHfa26
【合本版】ビブリア古書堂の事件手帖 全7巻【電子特別版】 (メディアワークス文庫)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/09/22
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