43歳デビューの漫画家、池田邦彦「カレチ」を読む [名作紹介]
「国境のエミーリャ」という漫画がある。
かつての東西ドイツの様に分断された日本を描いた作品。
話題になっていたのでお試しで読んで、作風と絵柄がマッチしてない印象をもった。
それ以来読んでないが、そんなエミーリャも、もう8巻。なんでこんなに続いてるんだ?
それから月日は流れ、「はやぶさや模型店」なる漫画をKindle Unlimitedで発見。
なんとNゲージ漫画だ。Nゲージはこち亀の知識しかなく、電車にもほぼ興味がない私だが、
この漫画は非常に面白かった!雑誌の休刊で一話のみというのが本当に悔しい作品だ。
こんな漫画がもっと読みたいなあと作者の池田邦彦の名前で検索をかけると、
前述の「国境のエミーリャ」が出てきたのだった。
とりあえずKindle Unlimitedで読める「国鉄貨物営業室」という作品も面白かったので、
この人は鉄道漫画なら間違いないのだろうと思い、「カレチ」全5巻を購入。面白かった。
2013年初版だから、自分の手元に届くまで10年かかった計算だ。大変な商売だ。
カレチとは、簡単にいうと中級の車掌さんのことらしい。
改めて車掌さんってなんだ?って疑問も湧き上がってくるが、
船長や機長に当たるものと思ってもそう遠くないようだ。
漫画「カレチ」は国が鉄道を運営していた、いわゆる国鉄の時代が舞台。
あまりピンとこない時代だが、民営化して今のJRになるのが1987年なんだそうだ。
作者の池田邦彦はナニワ金融道の青木雄二に匹敵する遅咲きの漫画家で1965年生まれ。43歳デビュー。
国鉄廃止の時は22歳。特に国鉄で働いたこともないようなのに、見てきたように様々な国鉄エピソードを描いている。漫画家になる前に、仕事で取材をする機会が多かったみたい。
漫画の内容は、国鉄職員によるきめ細かいサービスの内容が描かれている。
序盤は特に石ノ森章太郎の「HOTEL」の読後感と似ている。
列車ミステリーでは時刻表の盲点を犯罪に使うが、カレチでは人情に使う。
自分の好きなエピソードは5巻の架線(電車に電気を送る線)修理の話。
「鳥は電線の上に乗ってなぜ感電しないのか」というよくあるQ&Aを思い出す。
点検中、落下しそうになって電線を掴むか落ちるかを決断する。大変な仕事だ。
(でも読み返してみると、事故起こるべくして起こってるよね…?)
それと同じく5巻の汽車で坂道をのぼる話。
スイッチバックという坂道をのぼる電車の動画を見たことがあったが、
現在でも鉄道が山道を登るのは一苦労あるようだ。
今回の記事を書くために調べてみたのだが、そもそも鉄道というのはスピードを出すため滑りやすくされているものらしい。だから坂道は大変。まあそんな基本的な知識もない鉄道初心者が読むには少しハードルがある漫画のような気もする。(自分の鉄道知識はタモリ倶楽部でなんとなく見てたぐらい)
さらに印象的な話は4巻の、新人がなんの指示もされずに怒鳴られたり殴られる話。
良かれと思ってやったことに対して無言で殴られ呆然とする顔がすごい。
今すぐやめろこんな仕事、病気になるよ!
それを古き良き時代の美談としてまとめてるのだから、ちょっとどうだろうと思うこともある。
3巻収録の23話「サプライズテスト」もコミュニケーション能力の低い運転監督の話で印象深い。
お客さん相手には心を砕いたサービスするのにねえ。
漫画の後半は国鉄終焉の時代が描かれ、暗いエピソードが多くなっていく。
さっきも書いたが、自分には鉄道知識がほとんどない。
正直、「決められたレール」をいく人生の典型、楽な商売と思っていた部分もあった。
だが、こういう国鉄の時代を受け継いでいるんだから、やはり大変な職業なのだろう。
そういった部分や歴史の一部を学べたのは有意義なことだったと思う。
(ながやす巧の「鉄道員(ぽっぽや)」の良さが今ひとつ分からなかったが、カレチ読んだ後だと味わいが違う)
よくわからんのは鉄道に詳しいはずの鉄ちゃんが、
たまにわけのわからん事件を起こすことなんだけど。。。
撮り鉄
— たぬき (@makkoi007) August 12, 2022
撮影のため車内のライト消してくれないか、
と、緊急通報用のボタン押して車掌を呼び出す
お前に脳みそはあるんかい? pic.twitter.com/IayKlS83is
カレチが面白かったので、とりあえず目についた「シャーロッキアン!」全4巻、「エンジニール」全2巻、「まぼろしキャバレー 」、「おもいで停留所」全2巻、「でんしゃ通り一丁目」、「漫画 働くということ」、「山手線ものがたり」を購入。そのうちレビュー書くかも。
全部読み終わった後、
果たして俺は国境のエミーリャを購入する気になるのだろうか?待て次号!
シャーロッキアン! : 1 シャーロッキアン! (アクションコミックス)
- 作者: 池田邦彦
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/30
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エンジニール 鉄道に挑んだ男たち (1) (SPコミックス)
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タグ:池田邦彦
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