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蒼天航路、墨攻好きなら読むべき鄭問「東周英雄伝」 [歴史漫画]

横山光輝の「史記」を何度も繰り返し読んでいる。
さっぱり筋が覚えられないからだ。何度読んでも新鮮。
三国志や水滸伝と違って、時代も国も人物も、あちこちに飛ぶ短編集だからしゃあない。

そんなこんなで春秋戦国時代に少しは詳しくなって、
そろそろ読みごろだろうと思ったので、鄭問(ちぇんうぇん)「東周英雄伝」を読む。

3巻の墨翟(ぼくてき)のエピソードがとにかくいい!
墨翟は酒見賢一の「墨攻」でおなじみ、墨子の開祖だ。
これだけでも読む価値があると思う。

しゅんじゅう3.png

「墨攻」で墨翟の伝説を語るシーン。
しゅんじゅう4.png

作者の鄭問は台湾人の漫画家(故人)
東周英雄伝は1990年から週刊モーニングで連載された。

1994年の蒼天航路と東周英雄伝、ノリがちょっと似てるなと思っていたら、
作者の王欣太が鄭問に強い影響を受けていることを語っている動画を見つけた。



さてこの東周英雄伝、春秋戦国時代の英雄を一話につき1エピソードで語る短編集なのだが、
話が時系列順に並んでいないので、横山光輝「史記」以上に知識が定着しづらい。
しかもインターネットで検索しても、日本語ページでは名前すら出てこない英雄も散見する。
wikiの東周英雄伝のページを併読するのが良かろうと思う。

印象的でいて、日本ではあまり知られていないであろう、
三つのエピソードを厳選して紹介する。

一つ目。
2巻の十五話に出てくる華周と杞梁は、
二人で300人を返り討ちにしてしまう屈強な戦士。
思わず、これって史実なの?って疑ってしまう。

郷里の期待を一身に受けて上京するも、ロクな審査をされず二軍扱い。
拗ねていたところを親に激励され一念発起。…しすぎて二人とも戦死。名は残った。

しゅんじゅう6.png
 
ふたつ目。
3巻に登場する處女(しょじょ)100人の男たちを一蹴するワンダーウーマンみたいな武勇の持ち主。
荊棘花(けいきょくか)とも呼ばれる。彼女が鍛えた越の兵は、孫子が鍛えた呉の兵を撃ち破る。
臥薪嘗胆で知られる呉越の戦いの時代の人物だが、横山史記にも久保千太郎の漫画にも出てこない。
なんでやねん。

しゅんじゅう1.png

三つ目。
衛の第19代君主、懿公(いこう)
鶴が大好きで、畑に使うべき用水を鶴に与えるためにケチり、人民の反感を買う。
やがて異民族に攻められると、周囲から「鶴に守ってもらえ」と総スカン。

懿公の最期について漫画には書かれていない。しかしwikiには、
「衛の懿公は中国史上唯一、人間に食べられた君主である。」とある。
鶴の恩返しは無かった。

しゅんじゅう5.png
(ちなみに生まれたのは鶴)
 

もうちょっと春秋時代を理解したいと思ったので、ビギナー向けの「春秋左氏伝」を購入。

「春秋」は簡易な歴史書だが、
孔子が製作したという伝説から行間が深読みされまくり学問にまでなった。
解釈には主に三つの流派があり、「左氏伝」もその中のひとつ。関羽や福沢諭吉が愛読したという。

…という理解。

 




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