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クーデターで失脚したデヴィ夫人の半生記「選ばれる女におなりなさい」 [名作紹介]

デヴィ夫人のウクライナ訪問が話題になっている。

小林よしのりはブログ
すごい人だ。その実行力、そして体力が並外れている。
…と大絶賛している。

今こそデヴィ夫人の自伝漫画、「選ばれる女におなりなさい」を紹介するチャンス!
…だと思うのだけれども、これが今ひとつ掴みどころがない惜しい漫画なのである。


作画は花糸(けいと)。
非常に可愛らしい絵柄で、作画ガチャなら当たりと言える。
2020年6月初版。
自分が所有しているのは2刷。発売一ヶ月で重版出来となった。売れている。

漫画ではまず、デヴィ夫人の戦争体験が語られる。
終戦となり、家庭が貧しかった夫人は中学卒業して就職活動をするのだが、
面接官が驚くぐらいにデヴィ夫人の英語が堪能になっていて読んでいて面食らう。

デヴィ夫人1.png

前のページを読み返すと、自宅周辺にアメリカの新聞社や駐屯地があったことが説明されている。
深読みすればこういった環境で語学能力を伸ばしたのかなと推測することもできるが、
漫画でのその場面はパンパンと呼ばれた娼婦をデヴィ夫人が反面教師とする場面として使われているので、そういった解釈と結びつけづらい。

他にも、漫画にはコパカバーナという場所が出てくる。
wikiによるとコパカバーナはデヴィ夫人が働いていた赤坂の有名高級クラブらしいのだが、
そういった説明が一切ない。

それどころか、デヴィ夫人が「Welcome!」と招かれ、
まるでお客さんのように描写されている。

デヴィ夫人2.png

漫画には「当時日本随一の社交場だったコパカバーナのオーナーに見いだされ 外国人との交流を深めながら英語力を磨き 当時のOL以上の収入を得られるようになっていた」とボカしている。

自分としてはデヴィ夫人は元ホステスだったという認識なのだが、それが間違いだったのか、
あるいはそう思われたくない事情があるのか。その辺はよく分からない。

その他も、インドネシア初代大統領と結婚するエピソードでは
第三夫人という説明が一切出てこない。

週刊誌を読んでデヴィ夫人が大統領の不貞を疑って悩んだり、
あくまで1on1のラブストーリーとして語られていて違和感がある。

デヴィ夫人3.png
(西郷隆盛を絶賛する大統領)

 
この「選ばれる女におなりなさい」は面白くないこともないのだが、
読み終わってみるとエピソードの所々にモヤがかかっているようで、
トータルとして「よく分からない漫画」という印象になってしまう。

誰むけに描いているのかという話で、
例えば中学生少女を読者の対象としているなら、これでもいいとは思う。
原作者からの注文も多かったのだろうが、少女漫画の鋳型に押し込みたいという編集方針もあったのだろう。

が、子供の頃からテレビによく見る善悪よく分からない人、デヴィ夫人。
その実態を掴みたいので読んだ自分にとっては消化不良の一冊。
これまでにも何回か紹介を試みたが、なかなか言語化しにくい読後感だったのだ。

クーデターで失脚する側の体験談というキラーコンテンツ、
花糸の作画がよくできているだけに不満が残る。

ちなみに電子版には4話もオマケ漫画がついているようである。ずるい!

 





選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論 (講談社文庫)

選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論 (講談社文庫)

  • 作者: ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/03/15
  • メディア: Kindle版



選ばれる女がやっていること デヴィ夫人のマナー論

選ばれる女がやっていること デヴィ夫人のマナー論

  • 作者: ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ
  • 出版社/メーカー: Clover出版
  • 発売日: 2022/11/02
  • メディア: Kindle版



タグ:伝記
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