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理想の彼氏はフェミおじさん?瀧波ユカリ「私たちは無痛恋愛がしたい」 [モテる漫画]

ツイッターって過激な意見の方が反響呼ぶせいか、
よく極端な意見のフェミニズムツイートが流れてくる。

ついには「お菓子のパッケージは男尊女卑」
〜みたいに言い出すのがあってさすがに難癖すぎるだろと。
そのツイート主が『臨死!!江古田ちゃん』の瀧波ユカリだったのでビックリした。

江古田ちゃんといえば、
あけっぴろげで雑な面白ヒロインで作者の人となりも連想しちゃいますけども、
ヒステリックに男尊女卑を言い出すキャラとは無縁なように思えて意外だった。

フェミおじさん1.png

…だがよく考えたら似たジャンルの「アラサーちゃん」の峰なゆかも
田嶋陽子「AV女優ちゃん」の単行本の巻末で対談してたりして、そっち系に行きつつある。

 
江古田ちゃんの今に興味を持ったので、
瀧波ユカリの最新作である「私たちは無痛恋愛がしたい」の単行本1巻を買って読んでみた。

…その感想をブログに書こうと思ったが、うまく考えがまとまらない。
なので2巻も買って読んでみた。炎上商法だとしたら大成功である。
相変わらず何かスッキリしない感想を持った。


でぇ、簡単にいうと、
フェミニストじゃないヤリチンイケメンに酷い扱いをされるヒロインが、
フェミニストのおじさんに出会って幸せになる、
そんなエンタメ的な結末が予想されるストーリーだった。

「男はフェミニズムを学ぼう」、「女はフェミニストの男を選ぼう」、
…作者は読者にそんな感想を抱くように話を構成しているものと推測できる。

そして作者が男に学んでもらいたいフェミニズムとはなんなのか?
象徴的なのは以下のコマである。

フェミおじさん3.png

転倒した女性に大丈夫ですかと駆け寄るが、体には触れない。
ちょっとウルトラマンみたいな謎ポーズである。
可能であれば女性側から肩なりに捕まらせ補助する、というのが正解らしい。

ははあ、今どきは色々気を遣わないといかんのねえ。
こんな世の中ならAEDがセクハラだとか騒ぎになるのも当然だよ。

しかもこれすら100点満点ではなく、
通称フェミおじさんは後で至らなかった点をヒロインに謝罪するのだ。
フェミ道は1日にしてならず。

フェミおじさん5.png

そんなヒロインは家に帰れば、
生活力のないヤリチンイケメンの発情を拒めず、
今日もシャワー浴びながらバックで突かれ続ける日々なのであった。
フェミおじさん4.png

…ちょっと待てと。
緊急事態であっても面識ない男に手を差し出されるのは死ぬほど嫌、
でもヤリチンイケメンの性欲処理ならウエルカム!(しかもそれが10年続く)って、
それが仮にもフェミニズム漫画とブチ上げて始めた漫画がやることなんかと。

いや、世の中の仕組みとしては全く正しいのだけど。

草はブタに食われ、ブタは人間に食われる。
ブサイクはキャバ嬢に貢ぎ、キャバ嬢はホストに貢ぐ。
ブサイクセクハラ、イケメン無罪、まったくもって正しい。
それが人の本能だし、生まれ持った業というものでしょう。

フェミニズム運動も結構だけども、
生真面目に耳を貸す純情草食男子がますます草食になるのを心配してしまう。

モテる振る舞いというのはどっちかというと
男尊女卑的であり、セクハラ的なものだと思うから。

だ・か・ら、
…ラブストーリーを使ってフェミニズムを語ろうとするって、
食い合わせが悪いんじゃないかなあ…と思った。

そもそもフェミニズムに関しては皆んな好き勝手なことを言っていて、
定義が一般に共有されてる気はあんまりしない。
フェミニズム漫画を描くのだったら、まずはそこから手をつけるべきではないのか。

作者もそこがはっきり定義できてないまま見切り発車しているように思える。
だからこの「無痛恋愛がしたい」はあれこれ色んな方向に手を出して、
それぞれが煮え切らない。

1巻はフェミおじさんがどうやってトラブルを解決するのか?で「続く」になるのだが、
作者がそこからまた別の話を始めたいと思ったのか新しい女性キャラが出てきて見せ場を奪う。

解決編でのフェミおじさんは、
悪役にいいようにあしらわれて
物語から10年ぐらい退場してしまうという衝撃の展開になるのだ。

一方のヒロインの性格だが、あまり感情移入が出来るものでもない。
飲み会を中座してメンツの悪口をネットに書くのを趣味としていて、
その上でその行為への共感と称賛を読者に求める。

この設定いる?
多分作者の実感がこもったエピソードなので入れたかったのだと思う。
そうなるとポリコレ的に正しい役割のフェミおじさんが、
性格悪い年下女性を選ぶだろうかという話になる。

漫画「もうしませんから」で作者のインタビューが読めるのだが、
聞き手の西本氏も同じような疑問を述べている。

リアリティ重視で作劇してますという理屈も成り立つが、
そうなるとポリコレブサメンがヤリチンイケメンを駆逐するという、
エンタメの骨子からどんどん離れていく。

瀧本ユカリは「もうしませんから」の中で、
割と即興で話の展開を決めているようなことも言っている。
あまり深く考えない性格なのかもしれない。
 
フェミおじさん7.png

そもそも物語の王子様的役割を「フェミおじさん」にする必要があったのだろうか?
別にフェミニズムを啓蒙するなら「フェミイケメン」でもいい。その方が効果的だ。

作者の瀧波ユカリの年齢を調べると1980年生まれの42歳。
結婚して子供もいるらしい。

パートナーさん(気を遣った言い方)がどんな人か知らないが、
後書き漫画に少し容姿が描かれている。確実にイケメンの部類ではない。
たぶん多くの男女がそうであるように、
若い頃に思い描いた理想の伴侶から少しグレードを落として現実的な相手を選んだのだと思う。

だからフェミを啓蒙するための王子様的役割をイケメンでなく、
わざわざ「おじさん」にしてしまったのではないか。

一方の若い頃というのは危険なにおいのする恋愛の方が燃えるものである。
作者もそうだったはずだ。わかっちゃいるけどやめられない。
それを無視してわざわざ漫画で王子様役におじさんを選ぶ理由って何。
極めてオバサン的な発想である。

「わたしたちは無痛恋愛がしたい」は恋愛から遠ざかった女性が、
最前線で戦う女性たちへの大きなお世話の説教漫画になってやしないかと思う。
そういう意味でツイッターでよく見る極端なフェミニスト活動の問題点を象徴しているのかもしれない。

プレイボーイのヤリチン男の女性遍歴が私で終わる、
私が改心させる、それが女のロマンという現実がなくならない限り、
ツイッターでのフェミニズム論争も終わることがないだろうと思う。

 
→続く
 

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/05/23
  • メディア: Kindle版



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  • 発売日: 2022/09/22
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