値上がり続く谷口ジロー作品、孤独のグルメの後は何を読むべきか [名作紹介]
Kindle Unlimitedで
谷口ジローの「シートン 旅するナチュラリスト」を読んだ。
めちゃくちゃ面白かったのだが、読み放題なのは全4巻の3巻まで。
紙の本は絶版で、中古でもプレミアが付いている。
仕方がないので電子書籍で4巻だけ購入して読んだ。
読み終わって満足したのだが、結局紙の本でも欲しくなった。
しかし中古は全然値下がりしておらず、オークションでもあまり出品がない。
一冊2000円が相場。
一巻400ページもある大作なだけあって、そもそも定価が高いのだが(1500円ぐらい)。
谷口ジローは最近の2017年に亡くなられた。
そのせいか代表作の新装版が次々と発刊されている。
それらの定価は一冊3000円から4000円もする。
めちゃくちゃ高い。
今後、氏の作品はどんどん値上がりしていくのかもしれない。
なので件のシートンは2000円前後の価格で中古で購入(その後裁断)した。
谷口ジローといえばウルトラメガヒットした「孤独のグルメ」の人である。
しかし本来はガッチガチな劇画を描いていた人で、
そちらの方はどうも画風に馴染めなかった。
代表作「坊ちゃんの時代」はだいぶ劇画成分もマイルドになり、
第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品となった作品だが、
私はその漫画のディープキスシーンを見て、
「うわっ、汚なっ」と、どうにも引いてしまったことを覚えている。
そんな中、唯一自分の中でヒット作になった谷口ジロー作品が「孤独のグルメ」だった。
世間に広く知られる実写ドラマ版はその構成の都合上、
ドラマ仕立てのグルメレポートみたいなことになっているが、
原作は本来、男の一人外食あるあるみたいな漫画だったと認識している。
「美味しんぼ」から始まったグルメ漫画や、
TVのグルメリポート番組も面白いのだが、
ぼっちのバカ舌の独身男にはどうも居心地の悪い世界だ。
まず旅行などしない。
女もいないから背伸びしておしゃれなレストランも行かない。
何かしら用があって遠出した時に入る店はチェーン店か大衆食堂。
ライス重要。
そんな男のサガを見事に漫画で表現してくれたのが「孤独のグルメ」だった。
さびしいぼっち男の集い場である2ちゃんねるで人気に火がついたのも当然。
店員の態度が悪くてアームロックが出来るのも、訪れたのが名店じゃないからこそ。
(ブログを書く際に調べていて気づいたが、この店員は実在したそうである過去形)
回転寿司やコンビニ飯みたいな回こそが
俺が読みたい孤独のグルメなのである。
なので2巻はあまり読み込んでない。
元ネタとも言える同原作者の1983年の作品、
「かっこいいスキヤキ」からして当時の漫画界に衝撃を与えていたらしく、「アオイホノオ」25巻でも取り上げている。久住昌之の原作力も相当なものなのだ。
「がーんだな」「うおォン」などの名台詞の数々も、
単行本化の際の加筆修正で生まれたというからスゴい。
こここ、これは!島本和彦さんが、マンガの中にボクのデビュー作を主人公が読んだ話を描いてくれました。ゲッサン(月刊少年サンデー3月号)より pic.twitter.com/Gw3okeBFR2
— 久住昌之 (@qusumi) February 17, 2021
谷口ジローが登場する漫画がある。
「味いちもんめ 食べて・描く! 漫画家食紀行」の1巻だ。
毎回1話完結で漫画家の食へのこだわりを調べて回る企画なのだが、
仕事に忙しい漫画家が食へのこだわりなどあるはずもなく、
迷走を修正しようとする作者の必死感が伝わってきて楽しい漫画だ。
その中でも第3話の谷口ジロー登場回は飛び抜けたクオリティの失敗回で、
インタビュアーが必死に話を引き出そうとするが、
「漫画に登場した料理は食べてない」
「普段は大層なもの食べてない。今日も買い弁」
「めんどくさくない料理が好き」
「そこまで飛び抜けて美味しいものって世の中にあるのかなあ」
などの神発言を連発される。
なんとか谷口氏から子供の頃に食べた餃子が美味かったという話を引き出し、
そこから漫画は過去の世界へタイムワープという展開に。
あのとき食べた餃子を再びいざ実食!
…の寸前で何故か現実世界へ引き戻され、
インタビュアーが今日はなんか調子が悪いから解散!という不思議な結末になっている。
ちなみにこの作品でタイムワープという非現実展開になるのはこの谷口ジロー回のみである。
私はこの漫画を読んで、非常に「らしい」と思った。
忘れられない傑作漫画である。
孤独のグルメが好きだけど、
次の谷口ジロー作品の何を読めばいいのか分からない、
という方は結構いらっしゃるのではなかろうか。
とりあえずシートンオススメ。
紙の本はハードル高いので電子版で読むか、
Kindle Unlimitedでお試しされるのはいかがだろうか。
【Amazon.co.jp 限定】特製井之頭五郎コースターつき・孤独のグルメ1・2巻セット (扶桑社文庫)
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2020/05/31
- メディア: 文庫
味いちもんめ 食べて・描く! 漫画家食紀行 (1) (ビッグコミックス)
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- 発売日: 2017/10/30
- メディア: コミック
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