古市憲寿と統一教会問題。悪魔とのかけひきを学べる漫画、小林よしのり「ゴーマニズム宣言」オウム編まとめ [時事ネタ]
学者の古市憲寿が朝の情報番組で
「山上の目論み通りになるから」と統一教会批判の流れを批判。
別番組でそのコメントが紹介されると、泉谷しげるが「なに言ってんだコイツ」と苦笑。
…というやりとりが話題になっていて、一応流れを映像で確認した。
古市氏の発言は、統一教会や癒着する政治家の目論見通りになる害悪というところまで考えが及んでいない、学者らしい発言だと思う。
かつてはオウム事件の頃の知識人層も全く同じ思考に陥り、
オウム真理教の増長を許していたのである。
せっかくなので、
オウム真理教と戦っていた頃の小林よしのり「ゴーマニズム宣言」を読み返してみた。
明確に初登場ではないかもしれないが、
オウム真理教とバトルの火蓋を切ったのが単行本7巻の125章。
突如家族ごと行方不明になった坂本弁護士一家の自宅を取材。
ここで小林よしのりがすごかったのは、
オウムが犯人だとほぼ決め打ちしていたことである。
一応予防線は張ってはいるものの、オウムが犯人としか読めないように描かれている。
「オウムと裁判で争っていた弁護士を拉致した犯人はオウム」、
…事件の結末まで知っている後世の人間ならば当たり前すぎる結論だけれども、
立場ある人間がリアルタイムでこの推理を公にするのは物凄いことである。頭おかしいとも言える。
当然、130章でオウムから抗議を食らったことが明かされ、
単行本8巻の141章では訴えられて裁判が始まった。
しかし小林氏は大弁護団が止めるのも聞かず漫画で大反撃。
(画像は新ゴーマニズム宣言1巻)
8巻収録の132章では抗議されてるのに以下のこのギャグである。やはり頭がおかしい。
訴えるのが定番の勝利ルーティーンになっていたオウムだったが、
後に押収された資料から「法に訴える手段は必ずしも上策ではない」と方針を改めさせていたことが分かった。
こうかはばつぐんだ!小林よしのりの勝負勘の強さである。
(画像はゴーマニズム宣言9巻)
筆ののる小林氏だったが、
そんなことを知らない彼と交流のあった知識人たちは
「坂本弁護士を拉致したら真っ先に疑われるオウムが犯人なわけない」
というロジックでオウムを擁護。
しかしオウムはこのロジックを逆に利用していたのである。
当時、オウム幹部の弁明を揶揄して「ああ言えば上祐(じょうゆう)」と言われていたことからも分かる通り、グレーである限り言い逃れは出来ると確信していたのだった。
小林氏と揉めてる真っ最中にオウムは小林氏の暗殺チームを結成。
暗殺器具を持って喫茶店でくつろぐ小林氏隣の席まで接近していたというのだから恐ろしい。
(画像は「新ゴーマニズム宣言」2巻)
抗議を受けたあと、
オウムから道場まで来るように要請を受けたので
小林氏は虚勢を張って同意してしまったがこれは失策だった。
しかし担当編集者が鬼嫌がりしたことから道場へ行くのは中止になった。
もし道場に行っていたら小林氏も編集者もそこで殺されていたことだろう。
そしてオウム幹部が堂々と白を切るところまでがワンセットだ。
今ごろ『四半世紀前に亡くなった漫画家』になっていてもおかしくなかった。
小林氏は勘のみならず、勝負運もあった。
(画像はゴーマニズム宣言9巻)
結局のところ、
冒頭の古市氏の発言は命のやりとりをしてる者とそうでない者の覚悟の違いなのかもしれない。
机の上でしか戦えない学者先生の空論の虚しさというやつだ。
地下鉄サリン事件に至っても知識人の一部は声大きくオウムを擁護した。
さらに意外だったのは、
小林氏の最大の味方というべき掲載誌の「SPA!」までもがオウム真理教擁護路線に。
家族がオウムに殺されても今の路線を変えないと言い切った「SPA!」編集長に失望した小林氏は雑誌を飛び出す。
(画像はゴーマニズム宣言9巻)
自分がゴーマニズムを知ったのはその頃。
コンビニの立ち読みでSPA!を読んでみたが、
オウム擁護の「SPA!」は相当に強烈で奇妙な紙面だった。
結果、SPA!の部数は半減。オウム擁護の音頭をとっていた編集長は更迭された。
小林氏が和解してSPA!に戻ってくるのは、それから23年後のことである。
ところで、
椎名高志の漫画「GS美神極楽大作戦!!」6巻に
「悪魔とのかけひきってのはこうやるのよ!」というセリフがある。
小林氏のたくましさに比べ、古市氏は折れそうなほどにか弱い。
悪魔とかけひきする手段は持っていない。
ロジックで丸め込まれ、簡単に籠絡されてしまうことだろう。
というか、すでに籠絡されてしまっている。
弘兼憲史の漫画「ラストニュース」8巻で、
学会のルールに固執して実験装置を有効に使おうとしない研究者に対して、主人公がくさすシーンも思い出す。
「ここにある実験装置って、結局玩具みたいなものなんですね。」
古市氏はこの先も言葉遊びに終始するだろう。
まあそれも学者の役目と言えば役目である。
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