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バオー来訪者は打ち切りじゃない説を調べてみた。 [心に残る1コマ]


荒木飛呂彦先生のバオー来訪者のゆっくり動画を作った。

バオー来訪者は短命に終わったジャンプ漫画の中でも、破綻の少なさがトップレベルの、完成度の高い作品として知られている。それはジョジョの奇妙な冒険の2巻までの作劇を見てわかる通り、打ち切りを想定して描かれているからという解釈をしていた。

動画でもそのことについて触れるつもりでいたので、一応手持ちのインタビュー記事や、ネット検索で最低限事実確認をしてみた。ちょっと引っかかっていたのは、初連載作品である「魔少年BT」を振り返っての、「制作状況が破綻していたので、あれ以上続けろと言われたら困った」〜みたいなコメントだ。

あれこれネットを調べてみると、「打ち切りではない」と断言している人を発見。
その人は文庫版で読んでいたようなので、ひょっとしたら文庫版の後書きにソースがあるのかなと購入しかけた。その前に念のため、文庫版の後書きについて感想を書いている人を探してみる。当時のジャンプの概念を覆すような新事実なので、書かれていたら触れずに済ますということはまず考えられないような気がするのだが…。そんなことを書いている人は見つけられなかったのだった。
 

で、動画を公開したところ、
>荒木先生がバオーは打ち切りじゃなくて最初から短期連載作品として作ったってどっかで言ってましたよ
というコメントをいただいた。
どっかってどこだYO!ヾ(゜Д゜#)ノ

 
でで、
連載終了して一年以上経つバオーを表紙にして特集したというすごい雑誌、「ファンロード」の対談記事の書き起こしがあるのだが、それには以下のように書かれている。

>短い連載だったにもかかわらず、中途はんぱな打ち切りラストではなく、ジャンプの作品の中でも理想的な完結をむかえた作品であるかららしいんですが……。

>荒木「ああ、あれはラストだけは考えてたの。こういう終わり方にするんじゃないかなって……」


打ち切りを想定して描かれたという風に読めるのだが、
もし「どっか」で荒木先生が「打ち切りではなかった」と言っていたとすると、前言を撤回したということになる。

インタビュアーの「短い連載だった」を「短期連載」と誤読した読者がいたという話なのだろうか?
短期連載という解釈だと、その後の「にもかかわらず」と矛盾した文章になる。
もしくは、前述の魔少年BTのコメントとごっちゃになっているかだ。
(念の為、魔少年BTも打ち切りには違いない)

 
荒木先生は勿論カリスマであり、当然熱狂的なファンが多い。
バオーは世間一般では打ち切り漫画だと思われていると思う。
打ち切りでないのだとしたら、バオーが語られる時に真っ先に名誉回復のお題目になっているのが自然だと思うのだが…、「バオー 打ち切り」で検索しても、それを否定する記事はほとんど見かけない。

…とまあ、ここまで書いてみたが、意外と文庫版の後書きに「打ち切りではない」とあっさりそう書いてあるのかもしれない。でもそれは前言撤回であるから、私はベストを尽くしたのだと思いたいッ。
ソースを知っている方がいらしたら、ぜひコメントをいただきたい。

<追記>
文庫版の後書きを確認しましたが、打ち切りを否定する記述はありませんでした。

 
もう一つ。
「バオー=馬黄精」説について。
これも少数ではあるが見かける説。

夢枕獏先生の小説、
「闇狩り師」に登場する「馬黄精(ばおうせい)」がバオーの由来とする説というのがあるのだ。
これは、原作に忠実だという来留間慎一先生のコミカライズ版を取り寄せて確認してみた。ちなみにコミカライズは1986年の連載開始だが、小説のスタートは1984年1月。バオーの連載は1984年の末である。

馬黄精という妖怪の卵が体内に入ると、馬絆(ばはん)という妖怪になるという設定だった。
寄生虫バオーに脳に寄生されて、ある種のモンスターとなるバオー来訪者の設定に似てるといえば似てる。まあでもよくある構成ではある(馬黄精も実際にそういった伝承があるのかもしれないし)。
馬王生.png
ただ、闇狩り師の話の構成はバオーとまるで違う。
闇狩り師は簡単にいえば「妖怪探偵」モノで、妖怪に取り憑かれたアイドルを元に戻す依頼を受けた主人公が、ヤクザの溜まり場で乱闘したりして情報収集。事件の黒幕は馬絆化したアイドルオタクだったという話の流れ。主人公は生まれ持った強靭な肉体と中国拳法で馬絆に立ち向かう。

 
そんなオチだったのだが、闇狩り師の夢枕獏先生は、バオー来訪者の2巻の解説文も書かれているのである。面白いなと思ったので、動画完成間際までこのプロットを残したまま作業を続けていたのだが、何度も自分の作った動画を繰り返し見ていて、どうもこの部分だけスッキリしないなと思った。

バオーは「バイオテクノロジー」から命名したということは何度も荒木先生が語っていることである。当時のスーパー戦隊が「超電子バイオマン」であり、こっちの方が違和感がない。ダブルミーニングというのが一番リアリティがあるが、どこまで言っても悪魔の証明的な話だ。大体、名前をもじったとしてどうだというのだ。

荒木先生も言ってない、夢枕先生も触れてない。
この時期の夢枕先生は圧倒的な人気作家だ。熱心なファンが指摘して、両者の間で何かしらやりとりがあって双方納得された話なのかもしれない。そんな事実確認できないような話を今更俺が取り上げても、なんか些少なことをさも自分の手柄でもあるかのようにイキって吹聴するみたいで俺が損するだけである。というわけで、動画の完成直前にその部分をざっくり削除した。

 
ででで、
そういう文脈でバオー2巻の夢枕獏先生のコメントを読むと、また味わい深いのである。

この異様な迫力を持った物語を、ぼくは少年ジャンプ連載時から注目して読んでいた。絵柄もストーリーも遠慮ないのがよかった。おそらくは、この作者が何年もあたためていたものが、この作品でいちどに噴き出したからであろう。

小説の説得力が文体によって生まれるのなら、漫画の説得力は絵であると思う。どのような絵を読者の目の前に差し出せるかである。その絵の説得力が、そのまま、その漫画の持つ説得力になる。小さな理屈はどこかに消えてしまう。

そういう意味で、寄生虫バオーの絵を見た時、その不気味さ、つまり説得力にぼくはうなってしまった。このような絵を見せられれば、読者はその作家を信用してしまうのである。(後略)

失礼ながら、コミカライズ版の闇狩り師を読んで、馬黄精の設定についていまひとつピンとこないものがあった。妖怪なのだから生態が明かでないのは仕方ないのかもしれないが。闇狩り師原作小説を読んでいない自分にとって、寄生虫バオーの方が、説得力が圧倒的なのである。これは夢枕先生が本領を発揮できるのは文章でこそ、ということもあるのだと思う。

 
でででで、
闇狩り師のコミカライズ版を読んで、
どっちかというと初期の岩明均先生の方が闇狩り師に強い影響を受けているんじゃないかと思ってしまった。

これも話が長くなる&悪魔の証明な話なので割愛。

 

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