歴史を変えた?米軍の原爆投下を間一髪で防いだ人達が実際にいた?しかし…。 [歴史漫画]
弘兼憲史「ハロー張りネズミ」(文庫版)の電子化を完了。
最終14巻収録の、「1945年夏物語」は作品屈指の傑作シリーズ。
この漫画は時々超常現象モノを折り込んでくる。
基本、社会派探偵ドラマなので、余計にリアリティが増すという寸法だ。
「1945年夏物語」は広島に訪れたハリネズミが、
ふらっと通りすがったレトロすぎるBARに入ると
太平洋戦争時の日本にタイムワープしてしまうのが話の導入部。
すでにBARで飲み食いしていて払えるお金がなく、食い逃げ扱いされてしまうハリネズミ。
この時代に無かったデジタル腕時計だけ残されて、身ぐるみ剥がされてボコボコに。
翌日、せめて正確な時間を知ろうと、道ゆく老婆に聞くと、1945年8月5日。
なんと翌日、わずか20時間後に原爆が落とされてしまうことを悟る。
さらに探偵仲間のグレさんが広島生まれで、
その父親は原爆で死んだと聞かされていた。
すでにBARでグレさんそっくりの父親に会っていたハリネズミ。
なんとかグレさん家族だけでも助けようと、経営する酒屋を突き止める。
そこでその奥さんがグレさんを身籠もっていることを知る。
(左下がグレさんこと小暮久作のお父さん。顔はコンパチ。近年の実写版は森田剛が演じた。)
過去に何度もグレさんに命を救われている探偵事務所だ。
ここでグレさんを救えないと未来が変わって自分たちも消滅してしまうかもしれない。
ちなみにグレさんは「課長島耕作」シリーズにも出演しており、彼の活躍で課長時代の島耕作はクビを免れている。グレさんがいなかったら、現在相談役の島耕作もいなかったかもしれない。
当然、そんなことを説明しても信じてもらえない話である。
どうするハリネズミ?
…そんな話だ。
この先は実際に読んでもらうとして、気になったコマがある。
原爆を載せたB29のパイロットが無線で喋っているのだが、
「現在、先行偵察機からの天候状況の報告待ち。
第1目標ヒロシマ
第2目標コクラ
第3目標ナガサキ」
ヘェ〜、小倉(こくら)も標的だったんだ。知らんかった。
調べてみると、小倉が標的を免れた裏に、
とんでもないドラマがあったことが近年明らかにされたという。
広島に新型爆弾が落とされたことを知った小倉の八幡製鉄所は、
次の標的になる可能性が高いと考え、コールタールにベンゼンを混ぜたドラム缶200個を燃やして煙幕を張ったのだそうだ。9年前から空襲対策として軍部の指導があったそうである。
(2014年、毎日新聞のスクープなんだと)
視界がはっきりしなければ原爆を投下してはならないと厳命されたアメリカ軍のパイロットは三度小倉に投下を試み、「もや」と「煙」で視界不良だとして投下を諦めたとしっかりアメリカ側に記録が残っている。
ちなみに長崎は雲に覆われており、同じように視界不良だったが、最後の原爆を抱いて基地に戻ることのリスクを考え、パイロットは投下を強行したのだという。
「1945年夏物語」は原爆投下を防ぐというよりは、避けられない史実を学ぶというコンセプトだが、ハリネズミは広島市民を救えないか一瞬逡巡する。
作品が描かれたのは1989年ごろなので、まさか弘兼さんも読者も避けられるかもしれない手段があったとは思わないだろう。だが、仮にこの手段で広島を救ったとしても、小倉が犠牲になったかもしれない。標的が横浜、京都になったかもしれない。
近年になってコールタールの証言をした老人も、そういった小倉を救ったことで長崎が犠牲になったのかもしれない自責の念から、長いこと強く証言する機会を逃していたとのことである。なんとも複雑な話だ。
この小倉の原爆投下阻止作戦は、
2015年に『煙幕の下で ~軍都の記憶~』というタイトルでドキュメンタリー番組が作られている。
興味がある方は、早めに一度検索してみることをお勧めする。
それによると、煙幕の成分やその量、当時の気象条件から番組が検証した結果、煙幕が効果を発揮した可能性は薄いとのこと。それよりも前日の空爆で生じたモヤが、爆撃機の視界を遮っていた可能性が高いそう。実際のところ、どうだったのか。それこそタイムスリップしてみなければ分からないが。。。
長崎と小倉、ちょっとしたことで運命が変わっていたのは間違いない。
最終14巻収録の、「1945年夏物語」は作品屈指の傑作シリーズ。
この漫画は時々超常現象モノを折り込んでくる。
基本、社会派探偵ドラマなので、余計にリアリティが増すという寸法だ。
「1945年夏物語」は広島に訪れたハリネズミが、
ふらっと通りすがったレトロすぎるBARに入ると
太平洋戦争時の日本にタイムワープしてしまうのが話の導入部。
すでにBARで飲み食いしていて払えるお金がなく、食い逃げ扱いされてしまうハリネズミ。
この時代に無かったデジタル腕時計だけ残されて、身ぐるみ剥がされてボコボコに。
翌日、せめて正確な時間を知ろうと、道ゆく老婆に聞くと、1945年8月5日。
なんと翌日、わずか20時間後に原爆が落とされてしまうことを悟る。
さらに探偵仲間のグレさんが広島生まれで、
その父親は原爆で死んだと聞かされていた。
すでにBARでグレさんそっくりの父親に会っていたハリネズミ。
なんとかグレさん家族だけでも助けようと、経営する酒屋を突き止める。
そこでその奥さんがグレさんを身籠もっていることを知る。
(左下がグレさんこと小暮久作のお父さん。顔はコンパチ。近年の実写版は森田剛が演じた。)
過去に何度もグレさんに命を救われている探偵事務所だ。
ここでグレさんを救えないと未来が変わって自分たちも消滅してしまうかもしれない。
ちなみにグレさんは「課長島耕作」シリーズにも出演しており、彼の活躍で課長時代の島耕作はクビを免れている。グレさんがいなかったら、現在相談役の島耕作もいなかったかもしれない。
当然、そんなことを説明しても信じてもらえない話である。
どうするハリネズミ?
…そんな話だ。
この先は実際に読んでもらうとして、気になったコマがある。
原爆を載せたB29のパイロットが無線で喋っているのだが、
「現在、先行偵察機からの天候状況の報告待ち。
第1目標ヒロシマ
第2目標コクラ
第3目標ナガサキ」
ヘェ〜、小倉(こくら)も標的だったんだ。知らんかった。
調べてみると、小倉が標的を免れた裏に、
とんでもないドラマがあったことが近年明らかにされたという。
広島に新型爆弾が落とされたことを知った小倉の八幡製鉄所は、
次の標的になる可能性が高いと考え、コールタールにベンゼンを混ぜたドラム缶200個を燃やして煙幕を張ったのだそうだ。9年前から空襲対策として軍部の指導があったそうである。
(2014年、毎日新聞のスクープなんだと)
視界がはっきりしなければ原爆を投下してはならないと厳命されたアメリカ軍のパイロットは三度小倉に投下を試み、「もや」と「煙」で視界不良だとして投下を諦めたとしっかりアメリカ側に記録が残っている。
ちなみに長崎は雲に覆われており、同じように視界不良だったが、最後の原爆を抱いて基地に戻ることのリスクを考え、パイロットは投下を強行したのだという。
「1945年夏物語」は原爆投下を防ぐというよりは、避けられない史実を学ぶというコンセプトだが、ハリネズミは広島市民を救えないか一瞬逡巡する。
作品が描かれたのは1989年ごろなので、まさか弘兼さんも読者も避けられるかもしれない手段があったとは思わないだろう。だが、仮にこの手段で広島を救ったとしても、小倉が犠牲になったかもしれない。標的が横浜、京都になったかもしれない。
近年になってコールタールの証言をした老人も、そういった小倉を救ったことで長崎が犠牲になったのかもしれない自責の念から、長いこと強く証言する機会を逃していたとのことである。なんとも複雑な話だ。
この小倉の原爆投下阻止作戦は、
2015年に『煙幕の下で ~軍都の記憶~』というタイトルでドキュメンタリー番組が作られている。
興味がある方は、早めに一度検索してみることをお勧めする。
それによると、煙幕の成分やその量、当時の気象条件から番組が検証した結果、煙幕が効果を発揮した可能性は薄いとのこと。それよりも前日の空爆で生じたモヤが、爆撃機の視界を遮っていた可能性が高いそう。実際のところ、どうだったのか。それこそタイムスリップしてみなければ分からないが。。。
長崎と小倉、ちょっとしたことで運命が変わっていたのは間違いない。
[まとめ買い] ハロー張りネズミ(ヤングマガジンコミックス)
- 作者: 弘兼憲史
- 出版社/メーカー:
- メディア: Kindle版
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