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韓信は二人いた!股くぐりのニートが大元帥に抜擢されたのにみんなが納得したワケ [歴史漫画]

項羽と劉邦で、死ぬほど納得のいかないところが1点ある。

項羽に左遷させられた劉邦が、
韓信(かんしん)を大元帥に抜擢して天下統一の大逆転劇が始まるところだ。
韓王信1.png

三国志でいえば、諸葛亮孔明を仲間にしたシーンに匹敵する重要な場面だ。
韓信も孔明も当時は実績が皆無な人で、実力を見抜いた劉邦なり劉備なりは偉い!…という読後感を普通持つだろう。

だが、現実問題考えたら、そんな人事がまかり通るだろうかというのが、死ぬほど納得のいかないところなのだ。まず周囲が納得しない。

孔明はまだいい。
当時の劉備は流れ者で、あまり責任は大きくない。
せいぜいコンサルを雇った程度の話だ。

だが、韓信は何万、何十万の大軍を指揮する大元帥にいきなり抜擢だ。
しかも平時ではない。これから生き死にをかけて戦うのである。
敵の項羽は中国史に名を残す軍事のスペシャリストであり、残虐超人なのに。

普通読者は、これは漫画であり、紀元前の物語であるから劇的な展開を思わずスルーしてしまうが、史実にしてもこんな人事がまかり通るとは到底受け入れられない。

しかも抜擢される韓信は実績がないどころかマイナスな人物なのである。

・若き日に、仕事を首になり、見ず知らずのお婆さんに食わせてもらっていたニート。
・若き日に、チンピラに絡まれて、股を潜って命乞いした。

・最初は項羽軍に入ったが出世できず過ごしていた。
・劉邦軍に入ると問題を起こして処刑されかけた

…こんな君だけども、明日から大将軍だ!
まるで「なろう小説」だ。
タイトルは「若い頃、チンピラの股をくぐって命乞いしたニートだった俺が、問題起こして処刑されかけた後に大元帥に抜擢されてた件」。

「項羽と劉邦」では当然周囲が反対する描写がある。
劉邦軍のナンバーワンの豪傑である樊噲は意義を唱えたために処刑されかけ、一同承服する。
韓王信2.png
…一応話の筋は通っているが、まだ説得力が足りないような気がする。
赤龍王」の劉邦軍はみんな百姓みたいな描写なので韓信の抜擢にあまり違和感はない。

 
こんなことをずっと考えていたんだけど、昨日ある考えが閃いた。

同じ劉邦配下に韓王信(かんおうしん)という人物がいる。
韓王信4.png
よく説明に韓信と同姓同名の別人と触れられていて、意味がよく分からなかったのだが、この韓王信という名前は間違いを避けるための後付けで、当時は韓信と呼ばれていたのだそうだ。韓王の血筋なので韓王信。それで閃いた。

劉邦は最初、この韓王信を大元帥だとして、周囲を納得させたのではなかろうかと。
成果をあげたところで徐々にスライド。

戦国時代は実力主義だと思われがちだが、意外と血筋が有効だったという。
韓王信なら王族である。大抜擢にもみな納得だろう。
ちなみに韓信はこの後、血筋がいいからという理由で魏王の公子である魏豹に一度兵権を奪われている。
韓王信3.png
(画像はもぐら「おかしな猫がご案内 ニャンと室町時代に行ってみた」
 
楚漢戦争を史書に残した司馬遷ですら、韓王信と韓信を混同している箇所があるらしい。
韓信が劉邦に反撃のプランを立てるお馴染みのエピソードを、司馬遷は韓王信のエピソードとして書き記しているのだそうだ(昨日、なんかの動画で聞きかじった情報だけども)。もし司馬遷が間違っていなかったとしたら…?間違っていたとしても、二人の韓信がいたことが何か歴史に作用していたことは間違いない気がする。

二人の韓信説。
あまり聞いたことがない。
佐々木小次郎と佐々木コウジロウがいたみたいな、歴史漫画でありがちなフィクションっぽい。

韓王信は劉邦軍にあって重要人物であるが、「赤龍王」でも「項羽と劉邦」でもほぼ無視されているので今日までこんなことは考えたことがなかった。

歴史家やマニアには一蹴されるだろうけども、
個人的にはものすごく腑に落ちるのであった。

 
韓信は謎が多い。
中国史に名を残す天才軍略家でありながら、どうやってそんなスキルを身につけたのかは、全くの謎である。前半生とその末路から、あまり処世術を心得ていなかったコミュ障のオタクっぽい人物であったと推察できる。

これが史実だとは、
夢があるねえ。。。

 

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