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「美化してるwww」という鬱陶しくも当然のツッコミ!漫画家の自画像はどうあるべきか? [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

コミティアで出張編集部に散々貶されてエッセイ漫画をやめたというツイートが話題になった。

「エッセイは不幸話しか受けない」なる謎理論が目をひくのだが、俺が一番気になったのは「自分を美化して書いている」という批評。
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「自分のこと可愛く見られたいと思ってるよね。自画像からそういうの滲み出てるんだよね〜(やだやだ)」 

いやいやいや、主人公の顔は好かれるように綺麗に描かなきゃいかんでしょ!
謎編集者、なんかもう一般読者みたいな素直な感想だと思う。
そう思ってもわざわざ言うかなとも思うが。

シュワちゃんの「ラストアクションヒーロー」という映画がある。
映画好きの少年が、映画の世界に入り込んでしまう話。
レンタルビデオの店員までプレイメイトみたいな美人なのだが、それはハリウッド映画の世界だからというツッコミが入る。

そこまであからさまにやらないにしても、映像の世界は特別な意図がない限り綺麗どころを揃える。冴えない女の子ポジションも、一般的に言ってかなり美人な女優が演じるのも珍しくない。こないだ麻薬所持で逮捕された世紀の美女、沢尻エリカも映画「手紙」の中で冴えない女の子を演じていたなあ。
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なぜかっていうと、それがお客さんの求めるものだからだ。汚いものなんかみたくない。自分は違う、リアリティを求めているという人も、それはたまたまラストアクションヒーローみたいなやり過ぎ映画を見てそう思ってるだけだと思う。冴えない自分のような役を、綺麗どころが演じるから感情移入も高まるというものなのだ。

漫画も全く同じ。
むかしときめきトゥナイトという少女漫画で、主人公が世間からブス呼ばわりされているコマがあって気づいた。可愛い全開で描いていても、漫画の世界の中ではブスということが成立するのである。この漫画の中の美人基準で時々混乱することがあるのだが、それは次回に描きたい。

 
自画像をわざと醜悪に描く場合は「実物の方が良いですねと言われたい真理が働くからではないか」と推測するのが釣りキチ三平で有名な矢口高雄。
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「自分を殊更ヘンチクリンに描く人がいるんだから、その逆があってもいいんじゃない?」と、周りになんと言われようとも自身を美形に描くことに努めている。

 
美形に描こうが醜悪に描こうが、結局なんやかや言われるわけである。
じゃあ、極力忠実に、なんやかや言われないように描いたらどうなるか?
それを解説しているのが「サルでも描けるまんが教室」での竹熊健太郎。
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注目すべきが「F:ふつうに描く」で、
まあタダの似顔絵といいますか。自己卑下する訳でも美化する訳でもなく、淡々と普通に描く人も中にはいるようです。人間として正常なアイデンティティを持っているようですが、そんな人がどうしてまんが家を志したのか、疑問です。

…と解説しているのがたまらなくツボ。

 
作者によって主人公顔というのがある。
作者にとって動かしやすい、綺麗な顔だ。
エッセイ漫画の主人公の顔がイケメンになるのは必然と言える。

「美化してるwww」という当然の反応を恐れて、そこに忖度してどうする?という話だ。
いかに冒頭の謎編集者の批評が的外れがお分かりいただけると思うがどうか。

 
永井豪の自伝漫画「激マン!」で、作者はカッコよく描かれている。
永井豪の実像は割と知られていると思うが、似ても似つかない。
あとがきで、イケメン描写は編集部から「カッコいいキャラじゃないと読者を引っ張れませんから」という要望があったからだと明かされている。
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自伝漫画に乗り気でなかった永井豪は「それならば描けるかも」と思ったという。
激マンは現在4期に渡って連載されているが、それぞれ描いている漫画の作風に合わせて自画像が変わるというのが画期的だ。いかにその作品にのめり込んでいるのかというのも表現できている。
ちなみにキューティーハニー編での永井豪は女になってしまう。
 

小林まことも自伝漫画「青春少年マガジン」で自身を極端にイケメンに描写している。
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小林よしのりは自身をイケメンだという確信を持って描いている他であまり見ない珍しい例だ。
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それでも若い頃は容姿にコンプレックスがあったそう。
無邪気な子供に「馬の顔しとる人がおる」と笑われたり、有名になった頃にわざわざ妹の友達が「似なくて良かったね」と電話をかけてきたことがあったとか。思春期を終える頃にグループサウンズの時代がきて女にモテるようになったとよく女性遍歴を語っている。所詮美醜の判断に絶対的なものはないし、実績に裏打ちされてのイケメン描写というのが面白い。
 

漫画家の自画像はイケメンで描くべきだ!
そういう文脈で読むと、いとうみきおの「月曜日のライバル」はめちゃくちゃ面白いと思う。
打ち切りになったけど。
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