狩撫麻礼追悼!「ハード&ルーズ」に学ぶ男の生き様!!4 [シリーズ]
引き続き「ハード&ルーズ」の名作回を発表して行く。
ただ、男の生き様が重要なテーマゆえに言語化すると陳腐になってしまう名作回も多い。ひとまずインスタ映えしそうな、構成が秀逸な名作回と断っておく。
第2位
「孤独」
あまり裕福でもないカップルが街を歩いていると、老紳士から声をかけられる。
「アルバイトしませんか?」
場外馬券場で払い戻しを受け取って帰ってくるだけで、報酬として1割を支払うという。
カップルが窓口に馬券を渡すと、750万の札束が出てきて驚愕する。
息を荒くしながら老紳士の元に戻ると、約束の1割、75万がカップルに手渡された。
「万馬券の飛び出すレースはなんとなくヒラめくんだよ。ほぼ百発百中といってもいいぐらいにね。」天ぷら屋でカップルに語る老紳士。
「どうして御自分で払い戻されないんですかァ?」
「何度も同じ人間が大金を払い戻してれば必ず悪い奴らにつけ狙われるものなんだよ。キミたちのような信用のおけそうな若い人に一回限りのアルバイトを頼めばそんなことも起こらんでしょうが。」
カップルは専門学生。将来は二人で美容院をやるのが夢だという話をニコニコしながら聞いていた老紳士だが、男が「そうか競馬ってそんなに儲かるのかァ…」とポツリと呟いた言葉に「いけない!!」と声を荒げる。「ギャンブルで儲けているのは胴元だけなのさ。ワシのような超能力の持ち主は例外なんだよ。わかるね。妙な考えは捨てなさい」と微笑む。
今日も競馬で負けた貧乏探偵土岐。チンピラから依頼の呼び出しを受ける。
万馬券専門の勝負師の噂を聞き、拉致して強引に予想を立てさせたいから仲間に加われというのだ。
「競馬なめんな!」と土岐はチンピラの頰を張り飛ばして事務所に帰るが、何か引っかかるものがあった。「万馬券の大量一点買い…払い戻し金の一割を手数料に…。確かに妙な話だ…フム。」
聞き込みを重ね、驚愕の事実にたどり着く。
「ありゃどこのバカ者なんかねえ。オッズの万馬券を全部買ってやがるのさ。」
「!」
「全部買えば当たるわさ。万馬券が出てばのハナシだけどね。ケケケケ。」
場外馬券場で張り込みを続けると、ターゲットが現れる。ちなみに冒頭の老紳士とは違う中年のスーツの男。男は一点5万円づつ万馬券を購入。駐車場に戻るとベンツの運転席に乗り込み、後部座席にいる男に馬券を渡す。渡された男は冒頭の老紳士だった。
土岐は唐突に車に乗り込む。
「同好の士だ。話がしたい。」
「フム…熱血漢だなキミは。」
「なぜアシを出してまでバカ気た、いや意味不明のことを…」
「ほんのポケットマネーのお遊びなんだよ。目をつぶってくれないかね…。」
「今のレースが75万。もしも万馬券が出なければ1日1000万円ほどの赤字がポケットマネー?」
「…」
「ワシほど土地運のいい男もそういないだろう。戦後二束三文で買った全国の不動産がことごとく高速道路や新幹線の用地に…。」
「フン…カネ、カネ、カネ、カネ…。医者や議員に仕立てあげたセガレどもはワシが死ぬ日を指折り数えて待っているのさ。キミにわかるかね?老人の孤独が…。」
「払い戻し金を持ち逃げされたことは一度もない。万馬券の一点買いが尊敬の念を抱かせ、上気した表情でワシの元へ帰ってきてくれるあの若いコたち…。ワシは…あの一瞬が買いたくて…。」
結局その日は万馬券は出ず、事務所で馬券を破り捨てながら老紳士の言葉を思い出す土岐。
「わかるかね?老人の孤独が…。」
「バカヤロウわかってたまるか。そんなことがわからなくて済むように…せいぜい酒量を増やすが得策!」酒をあおってひとこと、「長生きは罪」と呟いて話は終わる。
自己満足のための想像を絶する暗い情念というか執念。それが露わになるという話が「ハード&ルーズ」には多いが、この話はその中の一つ。万人受けしそうな話だと思う。
次回はついに一位を紹介する。
ただ、男の生き様が重要なテーマゆえに言語化すると陳腐になってしまう名作回も多い。ひとまずインスタ映えしそうな、構成が秀逸な名作回と断っておく。
第2位
「孤独」
あまり裕福でもないカップルが街を歩いていると、老紳士から声をかけられる。
「アルバイトしませんか?」
場外馬券場で払い戻しを受け取って帰ってくるだけで、報酬として1割を支払うという。
カップルが窓口に馬券を渡すと、750万の札束が出てきて驚愕する。
息を荒くしながら老紳士の元に戻ると、約束の1割、75万がカップルに手渡された。
「万馬券の飛び出すレースはなんとなくヒラめくんだよ。ほぼ百発百中といってもいいぐらいにね。」天ぷら屋でカップルに語る老紳士。
「どうして御自分で払い戻されないんですかァ?」
「何度も同じ人間が大金を払い戻してれば必ず悪い奴らにつけ狙われるものなんだよ。キミたちのような信用のおけそうな若い人に一回限りのアルバイトを頼めばそんなことも起こらんでしょうが。」
カップルは専門学生。将来は二人で美容院をやるのが夢だという話をニコニコしながら聞いていた老紳士だが、男が「そうか競馬ってそんなに儲かるのかァ…」とポツリと呟いた言葉に「いけない!!」と声を荒げる。「ギャンブルで儲けているのは胴元だけなのさ。ワシのような超能力の持ち主は例外なんだよ。わかるね。妙な考えは捨てなさい」と微笑む。
今日も競馬で負けた貧乏探偵土岐。チンピラから依頼の呼び出しを受ける。
万馬券専門の勝負師の噂を聞き、拉致して強引に予想を立てさせたいから仲間に加われというのだ。
「競馬なめんな!」と土岐はチンピラの頰を張り飛ばして事務所に帰るが、何か引っかかるものがあった。「万馬券の大量一点買い…払い戻し金の一割を手数料に…。確かに妙な話だ…フム。」
聞き込みを重ね、驚愕の事実にたどり着く。
「ありゃどこのバカ者なんかねえ。オッズの万馬券を全部買ってやがるのさ。」
「!」
「全部買えば当たるわさ。万馬券が出てばのハナシだけどね。ケケケケ。」
場外馬券場で張り込みを続けると、ターゲットが現れる。ちなみに冒頭の老紳士とは違う中年のスーツの男。男は一点5万円づつ万馬券を購入。駐車場に戻るとベンツの運転席に乗り込み、後部座席にいる男に馬券を渡す。渡された男は冒頭の老紳士だった。
土岐は唐突に車に乗り込む。
「同好の士だ。話がしたい。」
「フム…熱血漢だなキミは。」
「なぜアシを出してまでバカ気た、いや意味不明のことを…」
「ほんのポケットマネーのお遊びなんだよ。目をつぶってくれないかね…。」
「今のレースが75万。もしも万馬券が出なければ1日1000万円ほどの赤字がポケットマネー?」
「…」
「ワシほど土地運のいい男もそういないだろう。戦後二束三文で買った全国の不動産がことごとく高速道路や新幹線の用地に…。」
「フン…カネ、カネ、カネ、カネ…。医者や議員に仕立てあげたセガレどもはワシが死ぬ日を指折り数えて待っているのさ。キミにわかるかね?老人の孤独が…。」
「払い戻し金を持ち逃げされたことは一度もない。万馬券の一点買いが尊敬の念を抱かせ、上気した表情でワシの元へ帰ってきてくれるあの若いコたち…。ワシは…あの一瞬が買いたくて…。」
結局その日は万馬券は出ず、事務所で馬券を破り捨てながら老紳士の言葉を思い出す土岐。
「わかるかね?老人の孤独が…。」
「バカヤロウわかってたまるか。そんなことがわからなくて済むように…せいぜい酒量を増やすが得策!」酒をあおってひとこと、「長生きは罪」と呟いて話は終わる。
自己満足のための想像を絶する暗い情念というか執念。それが露わになるという話が「ハード&ルーズ」には多いが、この話はその中の一つ。万人受けしそうな話だと思う。
次回はついに一位を紹介する。
2018-01-21 07:59
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