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なぜ「恋愛怪談サヨコさん」は終わったのか [注目作品]

関崎俊三の「恋愛怪談サヨコさん」が8巻で完結した。8巻といえばそこそこの長さだが、最後はウェブ連載になり、都落ち打ち切り感がしてしょうがない。期待していた割にはあまりおもしろくならず、何度か単行本購入をやめようかなと思ったぐらいだ。

それでも買い続けたのは作者の関崎俊三に期待しているからである。ドラマ化された前作、「ああ探偵事務所」は一時期俺の中で瞬間視聴率第1位を記録(ドラマの方は見なかったけど)。

「恋愛怪談サヨコさん」は一話を読んだ限りでは、各話に登場する地縛霊のルーツを探り、その呪縛から解放するというコンセプトという印象で、作者の特性を生かしている感じで面白くなりそうである。一話で登場する霊はパンダの着ぐるみを着ており、ものすごいインパクトがあった。

しかし「怪談」と同時に「恋愛」ともタイトルでくくられている。主人公のサヨコさんと、彼女が唯一心許せる少年との関わりが「恋愛」の部分で、こっちの方が作者が描きたかったテーマなのだろう。「恋愛」の比重がすぐに高まっていき、「ああ探」の謎解きパートにも通じる「怪談」パートが薄まってしまった。さらに悪いことに、「恋愛」パートは大して面白みがない。ヒロインが想う少年が良い人すぎて失恋の危機感が無いからだ。少年を想いすぎて奇行に走るヒロインというのも、作者からしたら見せ場だったのだろうが成功しているかどうかは疑問だ。原秀則の電車男は前半はスリリングだが、後半はノロけているだけでおもしろく無い。あれに通じるものがある。

絵柄はこれ以上無いというぐらい、美しくなっているが、「恋愛」に比重を置くがゆえにバストアップが多くなり、ヒロインと彼女が想う少年が同じタイプのキャラデザインなので、画面に変化が乏しく、動きが少なく、余白が少なく息苦しいレイアウトになってしまっている。美しく描こうとするあまり、アゴが刺さる勢いで尖りすぎて奇形に。これは小畑健もバクマンでかかっていた病。

8巻はフルデジタルなのだろうか。慣れなのかもしれないが、あまり惹きつけられない、ありがたみのない線になってしまった。自分的には「ああ探」3〜4巻ぐらいの絵柄が頂点だった。ゆでたまごは「キン肉マン」が人気のあった頃の絵柄から離れないように心がけているそうだが、関崎氏にもそう言った原点回帰を勝手に期待してしまう。


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タグ:関崎俊三
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