ゲーム界の神々の対話、その裏をとる [ゲーム]
1989年に行われた堀井雄二と宮本茂の対談が好きで、何度も読み返したものだが、それを「ゆっくり動画」化してみた。作るに当たって当時の事実関係を調べていると、いろいろ面白い「謎」が出てくる。
対談の中で宮本茂は「魔界村」の「敵に1回だけ当たっても大丈夫」なシステムを見て、パクリだと思われるかもしれないと、「スーパーマリオ」の「デカマリオは敵に触れても即死しない」というシステムの修正を考えた。が、システムの根幹に関わるギミックなので外せなかったと語っている。
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- 出版社/メーカー: ユニオンクリエイティブ
- 発売日: 2017/10/28
- メディア: おもちゃ&ホビー
だが調べてみると、魔界村の稼働日はスーパーマリオの発売日より後なのである。スーパーマリオ発売が1985年9月13日で、魔界村の稼働日が1985年9月19日。ロケテスト、あるいは開発中のものを見たという可能性もあるが。ちなみに魔界村はアーケード版であり、開発中のものを見る機会があるか?という疑問はある。ちなみに宮本氏は「魔界村」が「出た」と発言している。
現在制作中のゆっくり動画後編では、コマンド選択式アドベンチャーの話が出てくる。それ関連で、裏とりをしていたのだが、対談の内容と関係ない部分で新事実を見つけた。
滝沢ひろゆき先生の名著、「ドラゴンクエストへの道」で、RPGの概念が浸透していないファミコンユーザーのために、「ドラゴンクエスト」のつゆ払いとして「ポートピア連続殺人事件」を出そうという話になる。
ところが、プログラマーの中村光一が「素晴らしいアイディア」と一度は賛成したものの、ファミコンにはキーボードが無いから不可能だと気づき、プロデューサーの千田幸信も慌てる。
あらかじめ用意されたコマンドやアイコンをコントローラーで選択する以外に何かあるのかと思ってしまうのが現代人の感覚だが、パソコン黎明期はキーボードに行動を打ち込んでゲームを進行させるのが一般的だったらしい。しかも「使えるコマンドを探す」ことですら「楽しみ方」のひとつだったようだ。マゾとしか思えないが、そうやってコンピューターに命令すること自体が新鮮な行動だったのだろう。
漫画の中で、千田がポートピア作者の堀井雄二に相談すると、
「今度のパソコンのアドベンチャーゲームで使おうと思っているんですけどね。」と、コマンド選択式のアイディアを披露して、問題が解決するという流れ。
非常に面白い。爽快だ。
だが、これって史実なのだろうかという疑問が湧いた。
漫画の中で堀井氏がいう「今度使おうと思っている」のゲームは「オホーツクに消ゆ」で間違いない。
オホーツクのパソコン版が出たのが1984年。
ファミコン版「ポートピア連続殺人事件」が1985年11月29日発売。
オホーツクの1年か2年も後にポートピアが発売されているのである。
つまり、
漫画の中で中村氏が「ファミコンにはキーボードが無いから不可能」というのはおかしい事になる。
FC版ポートピアの開発期間がどれくらいかは分からないが、ドラクエですら半年だったというからオホーツク以前からやっていたということはないだろう。
構想はそれより以前に遡るのかもしれない、と思って調べてみた。
エニックスのファミコン参入第1作のドアドアが1985年7月18日なので、少なくとも漫画にある、「ドアドア発売の後にこういう話があった」というのは脚色だと結論づけられる。
漫画
FC版ドアドア発売
↓
FC版ポートピア着想
↓
PC版オホーツク発売
実際
PC版オホーツク発売(1984年)
↓
FC版ドアドア発売(1985年7月18日発売)
↓
FC版ポートピア発売(1985年11月29日)
このオホーツク制作における「コマンド選択式」の採用は、堀井氏の優れたゲームセンスがわかる「史実」である。これをドラクエの制作秘話に絡めるというのは素晴らしい脚色だと思う。
だが、裏とりをしないでこういった話を鵜呑みにすると恥をかくかもしれないので自戒したい、というのが今回の話。
もっとも、ファミコンの発売とチュンソフトの設立は1983年と、オホーツクよりも早いので、その頃から構想していた可能性も捨てきれない。「ドアドアの発売後にこのやりとりがあった」という部分が「脚色」なのかもしれない。
あるいはこんな事実だったのかもしれない。
千田「ポートピアをファミコンで出そう」
中村「キーボード無いじゃん?」
千田「そうかな?(フー)堀井くんの新作ゲームあるでしょ?」
中村「チッ、僕は気づけなかった!」
これだと中村氏がずいぶんマヌケになってしまうが。
他にも細かすぎて伝わらないネタがいろいろ発掘されている。
盛り込めるかどうか分からないが、チャンネル登録して動画の後編をお待ちいただきたい。
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