SSブログ

数字で見る打ち切り漫画、ジャンプでは珍しい巨大ロボ漫画「魔神竜バリオン」を検証!【少年ジャンプ アンケート至上主義】【レビュー】【黄金時代】 [日記]

台本更新です。


数字で見る打ち切り漫画
少年ジャンプアンケート至上主義、第二回。
今回は黒岩よしひろ先生の「魔神竜バリオン」を紹介。

「魔神竜バリオン」、見ての通りロボット漫画です。
1987年、ジャンプ450万部の時代に連載され、11話で打ち切りになりました。

さて、バリオンはどんな漫画だったんでしょう。
主人公のお父さんは天才科学者。
その天才科学者の父が残したバリオンシステムを守るため、悪のひみつ帝国と戦う少年の物語である。

バリオンシステムは海水を各エネルギーの100倍に変える夢のシステム。
海水なんて無限にあるわけですから、もうウハウハですよ。
みんな欲しがるから、悪い奴も当然狙ってる。
それを悪い奴の手から守るために、武装した鎧の中に閉じ込めて守るようにしたのが巨大ロボ、魔神竜バリオンというわけなんですよ。いい設定ですよね。

バリオンのデザインは機甲戦記ドラグナー(87年)っぽいですね。
尻尾があって、恐竜みたい。これがいいですよね。
最初はもっと有機的なデザインを目指していたそうです。
ダンザルブ的な?

でも編集部から、もっとガンダムっぽいデザインにしろというお達しがあって、このデザインになったのだとか。でも話もデザインもガンダムというよりはスーパーロボット系ですね。作者本人も永井豪リスペクトが強く、導入部もマジンガーゼットに酷似しています。

バリオンの操縦は小型アンドロイド、アリスがサポートします。
このキャラもいいですね。84年の「重戦機エルガイム」のチャムファウや、同作のデザイナーが作ったファイブスター物語(86年)のファティマシステムも彷彿とさせます。

操作はアリスが細かく説明してくれます。
こういう描写、巨大ロボットに乗りたい夢を持ち続ける少年にはグッとくるんじゃないでしょうか。
細かい動きはキーボード入力ってのが面白いですね。そこはアリスがいるわけですから音声入力でいいと思うんですけど、当時はまだそんな発想がなかったのかな。

ここまで見て分かるとおり、作画も非常に良いです。
桂正和先生のアシスタントを務めていたようです。

にもかかわらず、魔神竜バリオンは11週の打ち切りを喰らいます。
チャートはこの通り。
1位、5位、6位、2位、9位、13位、17位、16位、15位、16位、16位で最終回。
一応、第4話でカンフル的に2位のパートカラーをもらってますが、効果がなかったのか翌週以降だだ下がり。打ち切りが決まって「俺たちの戦いはこれからだ」系の最終回を迎えました。

何がそんなにダメだったんでしょう。
まず当時小学生でリアルタイムで読んでた自分が思ったことは、バリオンが意外と弱いんです。
もちろんデビュー戦で操縦に不慣れってのはあります。
ボロボロになりながらも最初の相手には勝つんですけど
そのあとシャア的なライバルが出て来て、さらにボロボロにされるんですよ。

ちょっと読んでてあまり爽快感がない。
序盤は無双させるべきだったのかもしれないなあとは思います。

さらにデータでみると、初の巨大ロボット対決まで4話かかってるんですね。
そういう意味で、ジャンプ編集部はパートカラーを与えたんだと思います。
ここで売れなければって訳です。

つまり魔神竜バリオンの失敗は、本筋への導入に至るまでの世界観説明を丁寧にやり過ぎて、
見せ場になるまで時間をかけ過ぎてしまったという風に分析できるのではないでしょうか。
後出し理論ということは断っておきますが、これは力作をする作家が陥りがちな失敗です。
面白くなるまでに時間がかかる。最初から面白くせい!みたいな。
ちなみにVガンダムは実際に主人公がガンダムに乗り込む第4話を差し替えて第一話にしてしまったなんて話がありますね。
スターウォーズもエピソード4から始まってます。

さらにいうと、巨大ロボットものはジャンプ編集部にアレルギー反応があったかもしれません。
この魔神竜バリオン、作者の黒岩先生によると、二度連載会議を落とされていたそうなんです。
ジャンプでロボット漫画って、あまり聞いたことがありませんよね。

でもバリオンの他にも、黎明期には1本あったんです。
それが永井豪先生の「マジンガーZ」です!
こんな超有名なタイトルがジャンプで連載していたとは!
ちなみに事前にアニメの企画が動いており、それを確定するための漫画連載だったそうです。
企画はダイナミックプロから集英社に持ち込んだものだったそうです。

アニメ化が決まってる人気作家の新作。
いい話だと思うじゃないですか。
それをジャンプ編集部はめちゃくちゃ拒否しまくったんです。

ちなみに永井豪先生は当時めちゃくちゃ売れてました。
ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオンで描いてたそうです。
週刊誌4本です。ほんとかよ。

それというのも、ジャンプで描いたハレンチ学園のヒットから始まりました。
永井豪先生と本宮ひろ志先生。この二人がいなかったら、今のジャンプはなかったかもしれません。
二人のヒットがジャンプというブランドを作ったんです。

そのヒットメーカーの持ち込みをジャンプは断る。
過去に巨大ロボット漫画は鉄腕アトムや鉄人28号などのヒットがありましたけど、完全に時代遅れのものだと無視されてたんです。それと、アニメ主導では漫画が絶対面白くならないという信念があったんです。ある意味、すごい気概ですよね。後年、ジャンプは諫山創先生の進撃の巨人を蹴ったりしてますが、黎明期からこのぐらい作品を選ぶにあたっての気骨があったんです。

マネージャーが押し切ってマジンガーZはジャンプで連載となります。
このやりとり、すごい面白いんです。詳しくは永井豪先生の激マンマジンガー編を読んでください。
そしてマジンガーは漫画もアニメも大ヒット。
社会現象を巻き起こすんですけど、大人の事情で他紙でも同時連載したいとジャンプ編集部に持ちかけたところ、編集長は大激怒。あっさりとジャンプはマジンガーを手離します。
これがのちのジャンプ専属契約制度を作るきっかけになったという説もあります。

そんなわけでジャンプはロボットものを嫌っていた。
バリオンがなぜ編集会議を通ったのか。
それは黒岩先生が期待されていたからだと思います。
桂正和のアシ出身で、作画も達者。
桂正和先生も微妙にジャンプの王道から外れた作風ですがヒットを飛ばしました。
同じような伸び代を、ジャンプ編集部は黒岩先生にも求めていたのではないでしょうか。

結果は打ち切り。
黒岩先生もこの後、不遇の時代が続きます。
ヒット作が出るのは、後年の「鬼神童子ZENKI」まで待たねばなりません。

自分はマジンガーやガンダムが好きでしたけど、
漫画で巨大ロボットものがないのはずっと不思議に思っていました。
思い返すと、成功してるのって「パトレイバー」「ファイブスター物語」「ぼくらの」ぐらいしかないのではなかろうか。企画はたくさん上がってるだろうけども、やはりアニメのように動かないとダメなんでしょうか。

そういえば最近巨大ロボット漫画でウルトラメガヒットを飛ばした作品がありました。
進撃の巨人です。
ロボットではないですけど、コクピットのような描写があり、巨大なもの同士が闘う。
一見してわかりませんが、まさに巨大ロボットものの構図。
巨大ロボット漫画の正解は、これだったんです。

ジャンプが逃してしまったのは失敗でしたけども、ある意味運命だったのかもしれません。

 
YouTubeチャンネル
(登録で応援お願いします)

Amazon欲しいものリストで支援する
(クリックするだけでも応援になります)
nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:コミック

nice! 0

コメント 1

サンフランシスコ人

「鉄腕アトムのグッズ販売:小東京モール内
24日から3日間、小東京モール内
by Jun Nagata 03/21/2023....」

http://rafu.com/ja/2023/03/astro-boy-pop-up-shop-03-21-23/

ロサンゼルス (アメリカ合衆国カリフォルニア州の都市)の日系人の新聞の記事...


by サンフランシスコ人 (2023-04-25 03:12) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。