SSブログ

「え?ユニクロでバイトを?」「できらあっ!」まるでスパイ映画か弘兼憲史の漫画だ!?横田増生「ユニクロ潜入一年」 [名作紹介]

横田増生の「ユニクロ潜入一年」の本を読んだ。
活字の本だ。

ユニクロ潜入一年

ユニクロ潜入一年

  • 作者: 増生, 横田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: 単行本


この本が出版されるきっかけがすごい。
著者の横田増生はユニクロのブラック事情を暴いた本を描いたところ、名誉毀損で訴えられていた。
裁判に勝訴したものの、ユニクロトップである柳井正氏はノーダメージアピール。
日経プレジデント誌での弘兼憲史との対談でこんなことを言って反撃した。

悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど。会社見学をしてもらって、あるいは社員やアルバイトとしてうちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね。
ビックロ3.png

インタビュー申し込んでも断るくせに!と憤った横田氏。
ところが彼は潜入取材を得意とするライターだったのです。
まさか柳井も、横田氏が本当に働きだすとは思わなかっただろう。

2015年夏から一ヶ月ほどかけ、私は役所に通って名前を変え、住民票を取り、健康保険や免許証の名前も変え、新しい名前で銀行口座を開き、クレジットカードも作った。

私はできるだけ清潔にみえるように切った髪を丁寧に染め、若者向けのカジュアルウエアを包み、伊達メガネをかけ、想定問答集を作り、ユニクロのアルバイトの面接に向かった。2015年10月初旬のことだった。

そして一年かけてユニクロ3店舗で働き、記事を発表。
その2日後、出勤してユニクロに捕縛される。
そこからこの本は経緯を振り返るという構成。

まるでスパイ映画である。
弘兼憲史の漫画のようでもある。
映画化すればいいのに。

ビックロ2.png
(画像は弘兼憲史「ラストニュース」2巻

正体がバレるかも?という瞬間の描写はドキドキものである。
改名した名字に慣れず、同僚に呼ばれてつい聞き逃してしまう。

私はその日、五時に仕事が終わって、休憩室に座っていると、女性社員の石黒さんから、「田中さん」と何度も呼び掛けられる。しかし、私は自分のこととは気づかずにいた。机をはさんで1メートルも離れていない距離にもかかわらず。

ようやく気づいて私が、彼女が差し出してくれたチョコレートの包みを受け取ったとき、「無視されたかと思いましたよ」と彼女は鷹揚に笑った。

 
2度目の失敗は読んでいて悶絶した。

担当者という欄に私のハンコを押そうとするが、高倉氏から「3枚つづりだから、サインの方が速い」との助言を受ける。その際、うかつにも書き慣れた<横田増生>と書き込んでしまった。

その直後、高倉氏の怪訝な表情を見て、はじめて自分の大失態に気づき、掌にじっとりと汗がしみだし、鼓動が速まってきた。慌てて、三重、四重に線で<横田>という文字を消し、<田中>と書き直した。幸いにして、このミスで私の正体がばれることはなかった。しかし、油断は禁物であると気を引き締める。

 
ブラックな実態を暴きつつも、居心地の良い職場だったり、柳井会長の言葉に感化されてやりがいを見つけてみたり、素直なコメントが読めて面白い。これを柳井会長は読んだのだろうか。ユニクロの人たちは。まあ読まなかったら相当ヤバイ会社だと思うけども。各店舗の店長たちが、どういう気持ちでこれを読んだのだろう。あと、著者の横田氏に最初の暴露本を書かれて、ユニクロがどういう影響を受けたのか観察しているところもこの本の読みどころ。

 
この本を読んで、
また上京した際には「ビックロ」に行ってみたいと思った。
ビックロ.jpg
ビックカメラとユニクロが合体した、新宿にある店舗だ。
一応、ユニクロとしてはビックロを観光地のようなスポットにしていきたいそうだ。

その内部事情はまあ苛烈を極める。
今はどうかわからないが、読んでいていろいろ身に刺さる部分もあり、心が痛んだ。
過渡期だと信じるしかない。
働き方改革で、少しづつ良い世の中になってきている。

ただ少子化だけはどうにもならない。
日本人は原価がかからないからと異常に「接客」を強化する風土がある。
海外人から見たら、高級ホテルかみたいなレベルを要求する。
接客される事がいかに贅沢なことか?
自動レジなど、自販機だらけの世の中になって初めて気づくのかもしれない。
うおお、この店、人がいるよ!…みたいな。
ビックロ6.jpg
 
昨日、ユニクロで買い物した。
店員さんに挨拶されるたび、
ああ、この人も大変なんだなと身が震える想いがした。

お客さんから質問を受けてる店員さんを見て、ああこのあとiPodで在庫を調べて五分以内にバックヤードを探さなきゃいかんのだなと心が痛んだ。でもバックヤードは創業祭の過剰発注で在庫の山。探し出すのは至難の技なんだなあ。。。と。

そんなことを思いながら、
下着と靴下を持ってレジに行くとアレっ?と思う。
「ユニクロ潜入一年」の中で壮絶な作業として語られていたレジが、自動レジになっている。
すっかり忘れていた。

カゴに放り込むまでもなく、
手に持ってる靴下と下着の数を機械が正確にカウントしている。
相変わらずどういう仕組みかわからないのだがすごい技術だ。
万引きとかされないのかねと思っていたが、本を読むと一応万引きに目を光らせるのは以前から通常業務のうちらしい。

本の中では秒単位でレジ作業の速さを指導されるシーンがあった。
しかしこの自動レジではお客様次第。
苦手な人も多いだろうに、混雑しないのかなあと、益々ビックロを見に行きたくなったのである。

 

ユニクロ潜入一年

ユニクロ潜入一年

  • 作者: 増生, 横田
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: 単行本



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。