マナーに親を殺された女子高生!たむらゲン「遥かなるマナーバトル」 [名作紹介]
初見がどこだったか思い出せないが、
「遥かなるマナーバトル」という漫画があることを知る。
絵も下手そうで、なんだこりゃ?という印象だった。
お試しで読んでみたが、
相手のマナー違反を指摘することでダメージを与え、
どちらかがノックアウトするまで続ける格闘技漫画だった。
安直といえば安直。でもバズりそうと言えばバズりそう。
でもTwitterのタイムラインで流れてくるのを見た事はない。
それはたまたま自分がそうだったのかもしれないけど。
話題になってそうで話題になってない感じ(くどいようだが個人の印象)に特別惹かれて1巻購入。
少しづつ読み進めていて、だんだん愛着が湧いてきたので2巻も購入してしまった。
特に2巻では、
初心者には敷居が高いとされるラーメン二郎をテーマに選んでいて、そこが気になっていたのもある。
ところが3巻は?と思ったら、
3巻は電子のみだというじゃあーりませんか!
きびしい。
売上もたたないのに紙の本を刷り続けていたら会社もなくなるし環境にも良くないことは分かるのだが、この漫画風に言えば「途中で刊行を止めるのはマナー違反ですよ」と言ってみたくもなる。
しかし、本屋の新刊台を見ると、
実にさまざまな、誰が買ってるんだ?いや誰かが買ってるんでしょうが。たくさんの続刊がひしめき合っておりまして、徳弘正也先生や、ど根性ガエルの娘ですらこの武舞台から蹴落とされてるわけですから、他作品を押し退けて居残り続ける新刊たちには地位に見合ったリスペクトを送らねばならんでしょうとも思う。
さて、
マナーバトル漫画といえば岸辺露伴は動かないの「富豪村」が最初に思い浮かぶ。
荒木飛呂彦のもつ神秘性に誤魔化されそうになるけど、よくよく考えてみると人間が作ったマナーに、神レベルの審判があるのはなんか神の権威を貶めているような気もする。とはいえ、やはりこの斬新さは荒木飛呂彦の凄さだとも思う。
遥かなるマナーバトルの初見の印象が悪かったのも、荒木飛呂彦と張り合おうってのかアアン?って感じがするからかもしれない。
もっと過去にマナーバトルがなかったか考えると、
「美味しんぼ」における山岡士郎と海原雄山のマナーバトルもあった。途中から人格者にキャラチェンジして、栗田ゆう子からまるで天皇陛下のように敬われてしまうしまう海原雄山が、山岡にやり込められて「マナー違反だ!」的な狼狽するシーンが忘れられない。明らかにこの時期の海原雄山は小物だった。まあラスボスが小物では面白くないので、後に雄山は箸の濡れ具合を指摘するマナーバトルで山岡にリベンジを果たすのだが。
この「遥かなるマナーバトル」はどうだろう。
「リストラされたCAが創作系マナーを濫造した」という通説のコミカライズに始まり、冠婚葬祭やフランス料理の食べ方、圧迫面接など、役に立つウンチク漫画としても成立している。特に結婚式スピーチのオチの逆転ロジックが素晴らしかった。絵柄的にマジボケ系ギャグ路線一択しか有り得ないところが読者を選んでしまっているのかもしれない。
読みながら、
実写ドラマ、実写映画化したら化けるのかもしれないなと思った。
その際、変におちゃらけた演出にせず、金かけてマジボケのシリアスドラマを貫いてほしい。
それがヒットしたらまた紙の本の刊行は有りえるのだろうか?
今のところ、紙の本が刊行中止になった後、再開されるという話は聞いたことがない。
(別会社から復刻的に復刊というパターンはあるだろうけど)
ところで、
好き勝手な感想を書きまくる自分がマナーを語るのもおこがましいが、
漫画を読んでいるとマナー違反の指摘って「言いがかり」とか「因縁つける」行為に似てるなと思った。
特に名刺の名前の部分を触っちゃいけないとかいう箇所。
福沢諭吉が少年時代にお殿様の名前を書いた紙を踏みつけて兄に叱られた話を思い出した。
(画像は太田じろう「学研まんが人物日本史 福沢諭吉」)
徳川家康の場合、「国家安康」は自分の名前を引き裂く言葉だとして戦争にまでなった。
(画像はあおむら純「少年少女日本の歴史」12巻)
三国志の時代は上司の名前を呼ぶのは不敬なので、字(あざな)があるという話を聞いたことがある。
名前関係は特に揉めやすいのか。
ちなみにこのブログは基本的に敬称略でやらせていただいている。
「遥かなるマナーバトル」単行本は、
カバーを捲るとそこにオマケを載せたりと作者が心を砕いている感じが伝わってくる。
俺的にツボなのが1巻カバー裏のお手紙。
勉強になるね!
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