あの病気は存在しなかった?上出遼平/ 山本真太朗「ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版」 [名作紹介]
ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版 1 (少年チャンピオン・コミックス)
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2023/03/08
- メディア: Kindle版
前回考察したグルメ漫画ブーム第三期、新時代のその作品たち。
今回はその中から、「ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版」を紹介。
この漫画は、テレビ東京で放送されたドキュメンタリー番組のコミカライズという珍しい作品。
基となった番組は、
世界の危険地帯に単身飛び込み、食レポをするというとんでもない内容。
スラムはもちろん、北朝鮮国営のレストランや、新興宗教団体に占領された土地(のちに特殊部隊が突入した)にまで行ったりする内容には大いに興味を惹かれた。
が、
番組を見て今ひとつピンとこない部分もあったので、漫画版があると知った時は購入を躊躇いもしたのだが、読んでみたらこっちの方が面白かった。単身カメラを持って取材をするディレクターが、なんと重度の潔癖症だというのだ。このプロフィールは番組で紹介されてなかった気がする。グッと面白さが増した。クローズみたいな不良漫画系の作画も躊躇する部分だったのが、思いのほか読みやすい。
そんな漫画版で最初に取材する国はアフリカのリベリア。
パフィーの「アジアの純真」で、「北京ベルリンタブリンリベリア♪」と唄われた国だ。
最貧国で、かつてエボラ出血熱が蔓延した土地柄だという。
そこで潔癖症Dの食レポをする。興味惹かれすぎるじゃないですか。
取材に協力してくれた子育てする女性の家は見るからに貧しく、
不衛生そうに描写されているが、食レポ自体は普通にこなせてしまう。
強烈だったのがエボラ出血熱のエピソードだ。
なんと現地では、エボラ出血熱など存在しないという陰謀論が蔓延しているという。
むしろ、
政府が提供する薬を服用すると発症する病気だと、ほとんどの人が信じているというのだ。
コロナみたいだな。
俺と同じように陰謀論などバカバカしいと考えるディレクターは、
エボラにかかって生還したという女性にインタビューをする。
彼女は生還したものの、重度の後遺症に悩まされている。
家族も皆エボラで死んだ。
その彼女から聞いた言葉は、
「私だけ薬を飲まなかったから助かった。家族は薬を飲んだから死んだ」というものだった。
それを聞いたディレクターの信念が、わずかに揺れたという描写が素晴らしい。
ゾクっとした。
そんなハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版の新刊は7月8日。
1巻の刊行から1年以上も経っている労作っぽい。みんなも読もう!
ディレクターの名前は上出遼平。
現在はテレビ東京を辞めてしまったという。
スポンサーの顔色をうかがって、危ない橋を叩きすぎる社風が合わなかったようだ。
ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版 2 (少年チャンピオン・コミックス)
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2024/07/08
- メディア: Kindle版
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