ダンジョン飯が切り開いた?グルメ漫画の新たなる地平 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]
自分が好きな漫画を貶める人の評など、普通は読みたくないと思う。
そう思うのだが、前回、あえて「ダンジョン飯」否定論を書いてみた。
書かざるをえなかったのは、
この辺から漫画の新しい流れが生まれたと思うからである。
思ったままのことを言うと、
ダンジョン飯によって、グルメ漫画の第三期が始まったのではないだろうか。
第一期は「美味しんぼ」「ミスター味っ子」のブームだ。
もっと古くはビッグ錠があるのだろうが、この辺の漫画は料理対決が主。
食べたことない至高の美味を表現する時代だ。
第二期は「孤独のグルメ」が象徴していると思う。
「こういうのでいいんだよ」というセリフに現れているが、等身大の美食を描写している。
グルメ漫画は競争の呪縛から解放された!
コンビニで買った夕食だって漫画にすれば面白いという発見がある。
そして俺が第三期だと思うダンジョン飯は、どんなジャンルの漫画にも、
グルメ漫画要素を取り入れることができると気づかせた漫画なのではないか。
例えば「ゴールデンカムイ」は、アイヌの遺した財宝を誰が手に入れるのかという冒険活劇だが、
「ヒンナヒンナ」の台詞に象徴されるように、調理&食事描写がやたら専門的で解像度高いのだ。
手っ取り早く漫画読者の興味を引くには、セックス&バイオレンスだけども、
ダンジョン飯以降はグルメ要素も加わったのでは?と言うのが今回訴えたいことだ。
近年、自分が買った作品もグルメ要素が入ったものが異常に増えた。
だからとりあえずダンジョン飯について語っておかないと、これらの漫画のレビューもままならないと言うことになってしまっている。
「一級建築士矩子の設計思考」は漫画ゴラクに似つかわしくない専門的な建築漫画だが、不思議と人気を集めている。建築事務所と立ち飲み屋を兼業している設定で、お酒や食べ歩きの描写が多い。案外こういうところが呼水になっている可能性は高いと思う。
「手塚治虫アシスタントの食卓」は手塚治虫でもアシスタントでもない、食事が主題だ。
それ以前ではあり得ない発想だとは言えないだろうか。
歴史ロマンもグルメ漫画化している。
「ダンピアの冒険」は大航海時代の実在の偉人の冒険をコミカライズしたものだが、やはり食事の描写が主題だ。どうやって調べているんだろう。何を食べてたぐらいは情報があると思うが、調理手段とか描かないといけない漫画で説得力を出すのは高度な作業だと思う。
「バットゥータ先生のグルメアンナイト」も14世紀の実在の偉人が主人公でグルメ漫画。
あまり達者な絵ではないが、中東が舞台の歴史グルメ漫画はますます難度が高い。
「騎士王の食卓」は中世ヨーロッパの騎士たちが何を食べていたのかの漫画だ。
また現在手に入る食材で、可能な限り再現したレシピを公開するということもやっている。
「雑兵めし物語」もそのまんま。
戦国時代の人間が何を食べていたかの4コマだ。
たぶんこの時代に転生したら死ぬと思う。
食レポ漫画も過激化している。
「ハイパーハードボイルドグルメリポート新視覚版」はドキュメンタリー番組のコミカライズと言う珍しい作品だが、不思議と漫画の方が面白い。なんと世界の危険地帯に行って食レポをするという内容である。
かつてエボラ出血熱が蔓延した土地で、突撃隣の晩御飯をするというのだから凄まじい。
しかもリポーターは潔癖症なのである。
「罪のあと味」は犯罪者が何を食べていたのから事件の背景を探るというグルメ漫画。
もう行くとこまで行っている。
他にも、
バイク漫画「ばくおん!!」はグルメや観光にスポットを当てた番外編の台湾編が5巻まで発売された。
「猫と紳士のティールーム」はベタなウンチク漫画かもしれないが、紅茶漫画というのが珍しい。
「ピッコリーナ」はバニーガールと焼き鳥という変わった組み合わせの恋愛漫画。
「いつか中華屋でチャーハンを」は中華食堂に特化した考察漫画で大好物である。
そういえば最近、ドカ食いして気絶することをコンセプトにした漫画がSNSで話題になっていた。
まあそんな感じでキリがないのでこのぐらいにしておくが、紹介した漫画はいずれも面白い。
迷走してる感じがする刃牙も、もっと食事描写に特化すればいいのではなかろうか。
新章「刃牙らへん」が始まったばかりだし、噛むことがテーマだし。
2008年から2016年まで少年ジャンプで連載された食バトル漫画「トリコ」というのもあった。
社会現象というまでには届かなかった印象だが、それでも3000万部も売れているそうである。
連載開始もダンジョン飯よりも早い。
三大欲というから「食欲」を刺激する漫画は今後も増え続けていくことだろう。
「性欲」漫画はあるから、次にブームが来るのは睡眠漫画ブームだろうか。
SNS時代だから承認欲求漫画も流行るかもしれない。
みなさまはどう思われるか。
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