島本和彦がマンガの壺に落としたもの。九井諒子「ダンジョン飯」 [この人気漫画が面白くない]
「ダンジョン飯」が苦手だ。
最初の方しか読んでない。あとの方まで読めばハマるのかもしれない。
さいきんアニメになったので少し見たのだが、やはり違和感が拭えず、先に進めない。
あんな不衛生なところで調達した食材が、
どんな工夫したって美味しくなるわけないじゃんって思う。
こないだ獣捕獲漫画の「罠ガール」を全巻購入して読破したのだが、
話の三分の一ぐらいは、獣肉の「くさみ」をとるためのあらゆる工夫を紹介している。
幕末を舞台にした「無限の住人」で、
鼻をつまんで獣肉を食べるエピソードが紹介されてるが、
後処理技術が発達してなかった頃の獣肉は、相当くさかっただろうなとも思う。
で、くさみをとるのも限度というものがある。
たまにナイトスクープなどで有名料理人が工夫を凝らして調理しても、どうにもならないものも多い。
名作見せますスペシャル
— ㋙㋮㋡㋤③ (@komastuna_3) June 11, 2021
「巨大シジミ発見!?」
服部緑地の池に、普通の何十倍もある、巨大シジミ貝がいる。しかもゴロゴロあり、これ1粒あれば大家族でも満足しそうで、食糧危機の心配もなくなると思う。一緒にシジミ貝を採り、そして腹いっぱい食べましょう。#探偵ナイトスクープ #ナイトスクープ pic.twitter.com/rEHsyOANVg
獣にしろ魚にしろ、ふだん何を食べてるか、
どんな水を取り込んでいるかで味は決まってくるのだから、
薄暗くジメジメしたダンジョンで調達する食材を美味しくしましたって言っても説得力が無いのだ。
とはいえ、
漫画は大きなひとつの嘘が大事だし、その嘘が多くの人に受け入れられ、
ダンジョン飯が売れに売れてる大人気漫画であることは理解している。
こないだキンドル読み放題で8年前ぐらいの漫画批評誌を読んだら「ダンジョン飯」が大絶賛されてた。
いしかわじゅんも夏目房之介も褒めちぎっている。
8年も人気がすたれることなくアニメ化されてしまうのだから、
「ダンジョン飯」が名作というのは疑いようもない。
ここ半年で400万部売れて、累計1200万部だそうである。
これが初めて読んだ漫画という人も大勢いると思う。とても漫画文化に貢献してる作品だ。
この漫画の良さが理解できない私の感覚は、あまり一般的なものでは無いのだろう。知ってたけど。
以前にもブログに書いたことがあったが、
モンスターを食べるという漫画は、あることにはあった。
「ダンジョンマスター」というゲームがヒットした時に生まれた、パロディ漫画としてである。
当時ゲーム誌に連載を持っていた鈴木みそや、島本和彦も描いていた。
これをダンジョン飯より先に見ていたというのも、
私が「ダンジョン飯」に新鮮さを感じない理由のひとつなのかもしれない。
(画像は島本和彦「インサイダー・ケン」)
それらは一様に「見た目通り不味い」というギャグに落とし込んでいた。
(画像は鈴木みそ「あんたっちゃぶる」2巻)
美味しくした方が面白い、という発想は二人にはなかったわけで、
この辺の着想の素晴らしさは「ダンジョン飯」作者の九井諒子のまさに才能と言える。
島本和彦は、
モンスターは不味いとした漫画を気に入らず、強引に終了させてしまって、
その直後に「マンガの壺」という読み切りを描く(単行本「インサイダー・ケン」巻末に収録)。
見えざる世界に漫画の壺というものがあり、全ての漫画作品が入っている。
名作をつかみ出すには才能が必要で、島本和彦は掴んだ作品を落としてしまう。
それがモンスターは不味いとしたギャグを描いた「インサイダー・ケン」。
代わりに島本は「ワンダービット」という名作を授かるのだが、、、
この落としてしまった作品が
「ダンジョン飯」になってた可能性もあると思うと、なんとも味わい深いのである。
みなさまはどう思われるか。
「マンガの壺」は名作。
Kindle Unlimitedでも読めるので、みんなもインサイダー・ケンを読もう!
今回は意外でした。
私的には「ダンジョン飯」連載当初から読んでいて、2000年以降のファンタジー作品ではベストでは⁉と思っているからです。
主様とは面白のポイントが近いなーと感じていたので(まあ人それぞれ違う部分があるのは当たり前ですが)。
評論を読んでいて驚いたのが「不衛生なところで調達した食材が美味しくなるわけない」を、私は全然感じてもいなかった点。
確かに!
自分なりに分析してみると、かわいらしい絵柄で気持ち悪さが緩和されていたことと、冒頭からグルメ漫画の類型と捉えていたことで、ジメジメとしたダンジョンのリアリティを麻痺させられていたのかもしれません。
あと、この作者のギャグの使い方に(ドラクエ4コマの頃の)柴田亜美テイストを感じられて、そこも気に入っています。
物語は後半にかけてかなり重厚な世界観になっていきますが、かなり見事に着地できたと思いますので、お暇な時にもう少し先まで読み進めてみていただきたく。
by 智 (2024-06-15 20:40)
気になるのは、調理手段のウンチクが妙に細かく、でもそれ全部架空じゃんと思うとすごい虚無感にさらされるんですけど、あの部分も調理に詳しい人には何らかのパロディになってるのかなあ。。。
あとグルメ漫画としてはゲテモノ喰いになるわけですけど、そういったリアルなレポート漫画も実は需要があるんじゃないかという理屈になりますが、漫画業界的にはどうなんでしょうね。九井さんの可愛らしい絵柄でグロテスクな部分が緩和されてるからこそ面白く読めるというのはありそうですけど。
とりあえずアニメの方をもう少し頑張りたいと思います。現在10話!
いーから飛んじゃって、ヘイ!
by hondanamotiaruki (2024-06-16 03:34)