年に1000冊分の部屋のスペースが空く、蔵書の電子化白書2023年度版 [自炊]
先日、3代目のスキャンスナップが現役続行不可能になった。
開閉する部分のプラスチックの片方が欠けていたのだが、もう片方も金属疲労的なことで砕けてしまったのだ。
それでもスキャンできないこともないので、
「ヒャッハー、メイドインジャパニーズはガンジョーだぜ!」と思いつつも、
色々不自由が出てきたので4代目をお迎えすることにした。
調べてみると、スキャンスナップは今や富士通ではなくリコーブランド。
最新型はiX1600なのだが、iX1400という廉価機もあった。
主な機能の違いはWi-Fiとタッチパネルのあるなしで、一万円近く値段が変わってくる。
自分は別に有線で構わないし、前回のタッチパネルは一年で画面が死んだので、iX1400を注文。
一応ドライバのインストールは行なったものの、まるで機械を変えてないみたいにスムーズに移行ができた。取り込むスピードは上がっているようだ。キビキビ動いてビビる。
ユーザー登録画面も久しぶりに見た。
自分はこれまで2年7ヶ月、6年8ヶ月、4年3ヶ月というペースで買い替えてるみたいだ。
これまでスキャンするメリットとデメリットを何度か書いてきた。
色々と認識を改めることもあったので、2023年度版をまとめて書きたいと思う。
まず、蔵書の電子化ということに対して、激しく抵抗を感じる人がいるという現実を受け入れた。
あまり押し付けがましくなることは避けたいが、ここで独り言として呟く分には構わないだろう。
彼ら彼女らが電子化を拒む主な理由は、
紙の本で読みたい、電子は目が疲れる、本を切り刻むなんて敬意に欠ける、などだ。
これは自分の姉がそう。結婚して子供もいるが、自宅の一室を本で溢れさせている。
そこは入室して一冊を探すことも困難な状態になってしまっているが、頑強に電子化を拒む。
最近ようやく薄い本を少し認めてくれた。10年以上経って、ほんの少し考えを変えたようだ。
同じ家族でも、数年前に亡くなった父は正反対だった。居間の壁一面を本棚にするほどの読書家だったが、スキャンスナップを「これは素晴らしいキカイだ」と、蔵書をどんどん電子化していった。
本を裁断する行為に本に対する愛がないなどということはない。
「夏子の酒」に「お気に入りだから食う」というセリフがあった。
スキャンスナップというのは大した商品で、
品質を問わないなら一冊電子化するのに10分かからない。
しかし電子化したデータをチェックすると、大抵は埃などのゴミが混入した形跡が見つかる。
電子化したデータを、デスクトップからタブレットに移し、目視でホコリ混入をチェックする。
デスクトップのモニターでは見えないこともあるからだ。
そうして見つけたエラーページを改めてスキャンし直す。
そしてまたチェックする。愛読している本ほどこれを繰り返すので時間がかかる。
蔵書の電子化は決して機械的な楽な作業ではない。愛の結晶なのだ。
美しい標本を作っている感覚になることがある。
スキャンする紙の束の最後に黒い紙を入れておく。
その紙がどのようにスキャンされてるかで、抜き取り検査的な効果が望める。
つまり黒い面積が多い本ほどホコリ混入が目立ちやすく、
漫画に比べて、黒い面積が少ない活字の本はホコリ混入が目立ちにくい。
だから活字好きな人ほど本の電子化はオススメなのだ。
以下の画像がわかりやすいと思う。
佐藤まさあきの自伝「劇画の星をめざして」をスキャンしたものだ。
さらに次の画像は、最初にスキャンして失敗した時のもの。
どこが失敗か?おわかりいただけるだろうか。
「長い髪の男」というタイトルの右側に白い線が入っている。ホコリの混入だ。
このエラーは白いページにも及んでいるのは確実なのだが、拡大しても一切分からない。
なので自分の体感で3倍スピードが速く電子化できるので、活字好きほど電子化を勧めたい。
まあ俺と違って活字好きな人にとっては、ゴミ混入が目立ちにくいではなく分かりづらいという表現になって、発見に時間をかけてしまうのかもしれない。
自分が電子化するのは主に漫画。次に雑誌が多い。
1年間に電子化した冊数を日割りしてみると、自分の場合は一日3冊平均が限度のようだ。
それでも年間で1000冊分の部屋のスペースが空く計算になる。
省スペースこそが蔵書を電子化する最大の利点と言っていい。
さらに端末に1テラバイトのストレージがあれば、現在電子化済みの5000冊の漫画が余裕で持ち歩け、どこでも読むことが可能なのである。自分には転勤の多い時期があったのだが、引っ越しに持ってく本の入った段ボールはいつも1箱で済んだ。これは今考えても大変な恩恵だった。
本を置けるスペースの関係で、泣く泣く蔵書の一部を処分したことが数度あった。
それを取り戻すための出費の数十万円が本当にバカバカしい。
あの時にスキャンスナップがあったらと思う。
一冊丸ごとスキャンするなんてことが、ほんの10数年前まで現実的ではなかったのだ。
この恩恵に与らなくてどうすると思う。
これは本との新しい接し方の選択肢が増えたということではないか。
さらに電子書籍を買うのではなく、紙の本の電子化にこだわるのはデータの取り回しが楽だからである。Kindleなどの電子書籍ビューワーも、sidebookなどに比べてUIが優れているとは言い難い。昔は、さっさと全部電子書籍な世の中になっちゃえばいいのにと思っていたが、実は紙の本が無くなると困るのである。まあ完全に無くなりはしないだろうけど、時間の問題だろうとも思う。早晩紙の本は高価なものになっていくだろう。
繰り返しになるが、蔵書を電子化する作業は標本作りしている錯覚に陥ることがある。
本は劣化する。新しい時点で電子化しておけば、それ以上、紙が変色することもない。
グレースケールで取り込めば、変色した古本が新品同様に電子化できることもある。
以下の画像は自分がまだ蔵書の電子化を始めたノウハウのない頃のもの。
水田麻里の「ジャイアントロボ」だ。
この時期、カラーでスキャンするか、グレースケールでスキャンするかの判断をスキャナ任せにしていた。この機能はまだ不完全で、右ページがカラー、左ページがグレースケールで電子化されるという、チグハグなものになってしまっている。しかし本来右のページの色をした紙が、左のページで新品のように見えるのがよく分かると思う。
これは中古本を買う際に、それほど品質を気にしなくていいというメリットも生む。
本が割れていても関係ない。シミも目立たなくなる。これは強みだと思う。
もちろんスキャナも汚れるので、スキャンする本が綺麗に越したことはないのだが。
また、本を裁断することによって本の構造を知ることができる。
以下の画像は1988年のMSXマガジンを電子化したもの。
繋がっているはずの線が激しくズレているが、ほぼ忠実にスキャンされている。
意外と印刷というのはいい加減で、見開きが繋がっていないことがよくある。
こういう知見が得られることを、自分は「本の内臓」と呼んでいる。
いいことづくめな蔵書の電子化作業だが、大きな欠点のひとつに、気軽に人に読ませられないというのがある。遊びに来た人が、気まぐれで棚に置いてあった一冊を読んでハマる。そういう機会を奪う。これは由々しき問題である。
むかし久保ミツロウの「モテキ」が流行った時、オシャレ漫画だと思って毛嫌いしていた人に読ませるために、わざとカバーが外れた状態で置いておき、そこに描かれた隠し漫画が自然と目に入るように仕向け、まんまと興味を惹かせてやったことがあった。そういうことができない。
最後に、蔵書電子化を拒む人たちがよく言われることに対する反論をまとめておこう。
彼ら彼女らが電子化を拒む主な理由は、
●紙の本で読みたい
選択肢である。強制しないしされない。どちらにも一方では得られないメリットがある。
●電子は目が疲れる
日々ネットでどのぐらい活字や画像を見ているか考えてほしい。
ちなみに数年前に3台のPCでチェックした個人的な体験による感想だが、Windowsは画質がギラつくと思う。iPhoneやiPad、Androidは美しい。
●本を切り刻むなんて敬意に欠ける
愛があるからこそ切り刻むのだ。
開閉する部分のプラスチックの片方が欠けていたのだが、もう片方も金属疲労的なことで砕けてしまったのだ。
それでもスキャンできないこともないので、
「ヒャッハー、メイドインジャパニーズはガンジョーだぜ!」と思いつつも、
色々不自由が出てきたので4代目をお迎えすることにした。
調べてみると、スキャンスナップは今や富士通ではなくリコーブランド。
最新型はiX1600なのだが、iX1400という廉価機もあった。
主な機能の違いはWi-Fiとタッチパネルのあるなしで、一万円近く値段が変わってくる。
自分は別に有線で構わないし、前回のタッチパネルは一年で画面が死んだので、iX1400を注文。
一応ドライバのインストールは行なったものの、まるで機械を変えてないみたいにスムーズに移行ができた。取り込むスピードは上がっているようだ。キビキビ動いてビビる。
ユーザー登録画面も久しぶりに見た。
自分はこれまで2年7ヶ月、6年8ヶ月、4年3ヶ月というペースで買い替えてるみたいだ。
これまでスキャンするメリットとデメリットを何度か書いてきた。
色々と認識を改めることもあったので、2023年度版をまとめて書きたいと思う。
まず、蔵書の電子化ということに対して、激しく抵抗を感じる人がいるという現実を受け入れた。
あまり押し付けがましくなることは避けたいが、ここで独り言として呟く分には構わないだろう。
彼ら彼女らが電子化を拒む主な理由は、
紙の本で読みたい、電子は目が疲れる、本を切り刻むなんて敬意に欠ける、などだ。
これは自分の姉がそう。結婚して子供もいるが、自宅の一室を本で溢れさせている。
そこは入室して一冊を探すことも困難な状態になってしまっているが、頑強に電子化を拒む。
最近ようやく薄い本を少し認めてくれた。10年以上経って、ほんの少し考えを変えたようだ。
同じ家族でも、数年前に亡くなった父は正反対だった。居間の壁一面を本棚にするほどの読書家だったが、スキャンスナップを「これは素晴らしいキカイだ」と、蔵書をどんどん電子化していった。
本を裁断する行為に本に対する愛がないなどということはない。
「夏子の酒」に「お気に入りだから食う」というセリフがあった。
スキャンスナップというのは大した商品で、
品質を問わないなら一冊電子化するのに10分かからない。
しかし電子化したデータをチェックすると、大抵は埃などのゴミが混入した形跡が見つかる。
電子化したデータを、デスクトップからタブレットに移し、目視でホコリ混入をチェックする。
デスクトップのモニターでは見えないこともあるからだ。
そうして見つけたエラーページを改めてスキャンし直す。
そしてまたチェックする。愛読している本ほどこれを繰り返すので時間がかかる。
蔵書の電子化は決して機械的な楽な作業ではない。愛の結晶なのだ。
美しい標本を作っている感覚になることがある。
スキャンする紙の束の最後に黒い紙を入れておく。
その紙がどのようにスキャンされてるかで、抜き取り検査的な効果が望める。
つまり黒い面積が多い本ほどホコリ混入が目立ちやすく、
漫画に比べて、黒い面積が少ない活字の本はホコリ混入が目立ちにくい。
だから活字好きな人ほど本の電子化はオススメなのだ。
以下の画像がわかりやすいと思う。
佐藤まさあきの自伝「劇画の星をめざして」をスキャンしたものだ。
さらに次の画像は、最初にスキャンして失敗した時のもの。
どこが失敗か?おわかりいただけるだろうか。
「長い髪の男」というタイトルの右側に白い線が入っている。ホコリの混入だ。
このエラーは白いページにも及んでいるのは確実なのだが、拡大しても一切分からない。
なので自分の体感で3倍スピードが速く電子化できるので、活字好きほど電子化を勧めたい。
まあ俺と違って活字好きな人にとっては、ゴミ混入が目立ちにくいではなく分かりづらいという表現になって、発見に時間をかけてしまうのかもしれない。
自分が電子化するのは主に漫画。次に雑誌が多い。
1年間に電子化した冊数を日割りしてみると、自分の場合は一日3冊平均が限度のようだ。
それでも年間で1000冊分の部屋のスペースが空く計算になる。
省スペースこそが蔵書を電子化する最大の利点と言っていい。
さらに端末に1テラバイトのストレージがあれば、現在電子化済みの5000冊の漫画が余裕で持ち歩け、どこでも読むことが可能なのである。自分には転勤の多い時期があったのだが、引っ越しに持ってく本の入った段ボールはいつも1箱で済んだ。これは今考えても大変な恩恵だった。
本を置けるスペースの関係で、泣く泣く蔵書の一部を処分したことが数度あった。
それを取り戻すための出費の数十万円が本当にバカバカしい。
あの時にスキャンスナップがあったらと思う。
一冊丸ごとスキャンするなんてことが、ほんの10数年前まで現実的ではなかったのだ。
この恩恵に与らなくてどうすると思う。
これは本との新しい接し方の選択肢が増えたということではないか。
さらに電子書籍を買うのではなく、紙の本の電子化にこだわるのはデータの取り回しが楽だからである。Kindleなどの電子書籍ビューワーも、sidebookなどに比べてUIが優れているとは言い難い。昔は、さっさと全部電子書籍な世の中になっちゃえばいいのにと思っていたが、実は紙の本が無くなると困るのである。まあ完全に無くなりはしないだろうけど、時間の問題だろうとも思う。早晩紙の本は高価なものになっていくだろう。
繰り返しになるが、蔵書を電子化する作業は標本作りしている錯覚に陥ることがある。
本は劣化する。新しい時点で電子化しておけば、それ以上、紙が変色することもない。
グレースケールで取り込めば、変色した古本が新品同様に電子化できることもある。
以下の画像は自分がまだ蔵書の電子化を始めたノウハウのない頃のもの。
水田麻里の「ジャイアントロボ」だ。
この時期、カラーでスキャンするか、グレースケールでスキャンするかの判断をスキャナ任せにしていた。この機能はまだ不完全で、右ページがカラー、左ページがグレースケールで電子化されるという、チグハグなものになってしまっている。しかし本来右のページの色をした紙が、左のページで新品のように見えるのがよく分かると思う。
これは中古本を買う際に、それほど品質を気にしなくていいというメリットも生む。
本が割れていても関係ない。シミも目立たなくなる。これは強みだと思う。
もちろんスキャナも汚れるので、スキャンする本が綺麗に越したことはないのだが。
また、本を裁断することによって本の構造を知ることができる。
以下の画像は1988年のMSXマガジンを電子化したもの。
繋がっているはずの線が激しくズレているが、ほぼ忠実にスキャンされている。
意外と印刷というのはいい加減で、見開きが繋がっていないことがよくある。
こういう知見が得られることを、自分は「本の内臓」と呼んでいる。
いいことづくめな蔵書の電子化作業だが、大きな欠点のひとつに、気軽に人に読ませられないというのがある。遊びに来た人が、気まぐれで棚に置いてあった一冊を読んでハマる。そういう機会を奪う。これは由々しき問題である。
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最後に、蔵書電子化を拒む人たちがよく言われることに対する反論をまとめておこう。
彼ら彼女らが電子化を拒む主な理由は、
●紙の本で読みたい
選択肢である。強制しないしされない。どちらにも一方では得られないメリットがある。
●電子は目が疲れる
日々ネットでどのぐらい活字や画像を見ているか考えてほしい。
ちなみに数年前に3台のPCでチェックした個人的な体験による感想だが、Windowsは画質がギラつくと思う。iPhoneやiPad、Androidは美しい。
●本を切り刻むなんて敬意に欠ける
愛があるからこそ切り刻むのだ。
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- 発売日: 2022/01/28
- メディア: Personal Computers
タグ:ScanSnap
今回の記事は色々と考えさせられました。
"蔵書の電子化は愛の結晶"、蓋し名言ですね。
自分もスキャンスナップでせっせと自炊をしていたのですが、機械がヘタってしまってからはスキャン代行サービスを利用するようになってしまいました。まるで愛のないセックスです。
蔵書電子化の罪悪感は随分と薄らいだのですが、貴重な本の電子化には未だに抵抗を感じて自問自答しています。
わかってはいるんです。古い本ほど紙の変色をとめるため一刻も早く電子化した方がよいことは・・・でもできない!
何なら単行本未収録のブラックジャックが載っているチャンピオンなぞ自宅が燃えても大丈夫なようにセキュリティがしっかりしている会社の引き出しに入れている始末。もはや自由に読むことすらできぬ・・・。
by 智 (2023-05-31 19:29)
スキャン代行サービスってまだあるんだ!…というのがまず驚き。業者のサイトを見て、なるほどなあといたく感心しました。クオリティが気になります。自分が依頼したらクレーマーになりそうで怖い。
貴重な本は勇気が入りますね。漫画雑誌のスキャンノウハウは自分もないし、昔失敗して怖いのであまりやりません。数年経てばまた新しい機械ができるのかもしれないし。
by hondanamotiaruki (2023-06-01 11:21)
スキャン代行で2,000冊強PDF化して、スキャン失敗していたのは1冊だけ(ブラックラグーンの10巻)でした。ただ、再読して無い本もかなりあるので、地雷のように潜伏してる可能性もありますが…。
もしよかったら、電子化した本の読書環境についても記事にしていただけると助かります(過去記事であったらスイマセン)。私は結局普段から持ち歩くスマホ(iPhoneMAX)なんですが、ビューアーアプリは色々試してみてもどれもしっくり来ません。あと電子書籍もそうなのですが、小説だけは電子だと全然読み進められないのが悩みです。
by 智 (2023-06-08 23:50)
失敗の度合いがどんなものかも気になります。
業者さんも目視で縦線チェックしてるのかな?
基本的にiPadで読むので、ビューワーはsidebooksです。でもiPhoneには無かったような。なのでiPhoneで読むときは「ブック」で読んでます。右とじにならないので不便ですが。Androidだとパーフェクトビューワーを。
by hondanamotiaruki (2023-06-11 08:40)
情報ありがとうございます!参考になります。
sidebooksですね。今Storeを見てみたらiPhoneでもあるみたいなので使ってみます。
個人的には漫画が多いので、右綴じは必須ですね。
スキャン失敗していたのは1ページ分、半分折れてスキャンできていなかった感じでしたね。多分目視のような面倒くさい作業はしていないのではないかと・・・。
by 智 (2023-06-12 00:13)