戦国の日本から世界へ!天正遣欧少年使節の悲惨な最後 [歴史漫画]
児童向け歴史学習漫画の名作として燦然と輝く、
あおむら純の「少年少女日本の歴史」。
その派生シリーズに、
人物に焦点を当ててコミカライズした「少年少女人物日本の歴史」がある。
このシリーズでは、
巻ごとに卑弥呼や織田信長、坂本龍馬などの偉人を紹介。
その15巻が天正少年使節だ。(作画は小井土繁)
天正少年使節とは、
戦国時代の日本で布教に励んだイエズス会が、
日本人少年の信者四人をローマ法王に会わせるため、
数年がかりでヨーロッパに送り込んだ一大プロジェクトとして広く世に知られている。
ほとんどの人の認知は、
伊東マンショとか千々石ミゲルとか中浦ジュリアンとか印象強い名前の少年たちが、
ローマ法王に会えましためでたしめでたし、で終わっていると思う。
自分もそうだった。
下の画像は「少年少女日本の歴史10巻」の中で、
4ページ使って天正少年使節について描写された中の1コマ。
なので今回取り上げる「少年少女人物日本の歴史」15巻を読んで、少なからず衝撃を受けた。
日本に帰ってからの四人が全然ハッピーな感じじゃなかったのである。
そりゃキリシタン禁制の日本なんだから苦労して当たり前なのだが、
味方であるはずのイエズス会からも辛くあたられていたらしく、
千々石ミゲルなどは信者を辞めてしまっていた!
後述するが、
当時はキリスト教であってもキツい人種差別、身分差別が存在したのである。
漫画ではあまり直接的には書かれていない。
これまで学習漫画は当然として、
TVドラマなどでも宣教師たちの闇の一面というのは描かれてこなかった。
「進歩的で合理的な思考を持った心清らかな外国人たちを弾圧して国外に追い出し、鎖国する日本人の愚行」、というのがお決まりの描写である。私のフェイバリットでもある「風雲児たち」ですらそうなんだから。
私は「フロイス日本史」を読んで、こいつら善人なんかじゃないと思った。
異教=邪教。多様性を認める気持ちがゼロ。異教徒は人間ですらないと信じている。
実に素朴にそう考えているのだから恐ろしい。
こう思ってしまうのは、万物に神が宿るという考えをフォーマットされている日本人だからなのだろうか。
イエズス会の歴史的評価が変わり始めたのは、
戦国時代に日本人奴隷が世界で売買されていたという歴史的事実が、
2000年代以降に判明したからのようだ。
専門家ですら「捏造ではないか」と疑うほどの新事実だったらしい。
「大航海時代の日本人奴隷-増補新版」からの知識なのだが、
ローマ法王的には日本人奴隷を禁止されているのだけれども、
必要悪として教会も黙認してるのが現状だったのだそうだ。
天正少年使節の仕掛け人でもあるヴァリニャーノも、
少年たちに悪いものは見せないようにという指示をスタッフに出していたようなのだが、
それがどこまで徹底できていたのか興味深い。
何年もヨーロッパを旅して、少年たちが一切の矛盾に気づかなかったのだとしたら、なんともおめでたい少年たちだと思う。
ちなみに教会側は少年たちの言葉を捏造して、
そういった悪行を正当化するなどということもおこなっている。
矛盾に気付きまくりで怒って暴れまくる天正少年使節を描いたドラマがある。
「MAGI 天正遣欧少年使節」だ。
アマゾンプライムオリジナルドラマということで、海外ロケも敢行した大作であるが、ほとんど評判が伝わってこない作品で自分もこれまで未視聴だった。今回いろいろ調べている中で、そういやあったなと思い出して一気見してみた。
このドラマはいくつかの史実を踏まえて、大きく脚色してるのだとは思うのだが、見ていてそれを判別する自信が段々と無くなっていった。後でしっかり資料を読み込んでおかないといけないと不安になるドラマだった。東方の三賢者に引っ掛けて三人+欠員対策の補欠一人だったとかマジ?
(ドラマではこの後にチャンバラになる)
ドラマは少年たちが日本に帰国する直前で終わっているが、
前述しているように「少年少女人物日本の歴史」は帰国した後も続く。
漫画の最後は、
中浦ジュリアンが拷問にあっても信念を曲げずに殺されるという、後味の悪いものだった。
調べてみると、共に拷問を受けたクリストヴァン・フェレイラというカリスマ司祭は責め苦に耐えかねて棄教したのだそうだ。彼こそがハリウッド映画化もされた遠藤周作「沈黙」の話の発端になった人物なのである。正直、カッコわる、と思ってしまう。
世の中の矛盾にいちいち噛みついていたらキリがない。
軋轢ばっかり増えて、ひとつのことも満足にやり遂げられないかもしれない。
当時のキリスト教会が抱えていたような矛盾は当然いまを生きる我々も抱えているのだろう。
大人たちは汚い!と文句ばっかり言えるのも「少年」らしさではあるけども、
ドラマ「MAGI」はちょっと大所高所から文句言い過ぎな気はする。
スカッとする部分はあるけども、リアリティが大きく欠けている。
ドラマ10話の後に、豆知識番組みたいなのが9話分もあるのだが、
その中で棄教した千々石ミゲルの墓からロザリオを発見したという近年の新発見を知れたのは良かった。
あおむら純の「少年少女日本の歴史」。
その派生シリーズに、
人物に焦点を当ててコミカライズした「少年少女人物日本の歴史」がある。
このシリーズでは、
巻ごとに卑弥呼や織田信長、坂本龍馬などの偉人を紹介。
その15巻が天正少年使節だ。(作画は小井土繁)
天正少年使節とは、
戦国時代の日本で布教に励んだイエズス会が、
日本人少年の信者四人をローマ法王に会わせるため、
数年がかりでヨーロッパに送り込んだ一大プロジェクトとして広く世に知られている。
ほとんどの人の認知は、
伊東マンショとか千々石ミゲルとか中浦ジュリアンとか印象強い名前の少年たちが、
ローマ法王に会えましためでたしめでたし、で終わっていると思う。
自分もそうだった。
下の画像は「少年少女日本の歴史10巻」の中で、
4ページ使って天正少年使節について描写された中の1コマ。
なので今回取り上げる「少年少女人物日本の歴史」15巻を読んで、少なからず衝撃を受けた。
日本に帰ってからの四人が全然ハッピーな感じじゃなかったのである。
そりゃキリシタン禁制の日本なんだから苦労して当たり前なのだが、
味方であるはずのイエズス会からも辛くあたられていたらしく、
千々石ミゲルなどは信者を辞めてしまっていた!
後述するが、
当時はキリスト教であってもキツい人種差別、身分差別が存在したのである。
漫画ではあまり直接的には書かれていない。
これまで学習漫画は当然として、
TVドラマなどでも宣教師たちの闇の一面というのは描かれてこなかった。
「進歩的で合理的な思考を持った心清らかな外国人たちを弾圧して国外に追い出し、鎖国する日本人の愚行」、というのがお決まりの描写である。私のフェイバリットでもある「風雲児たち」ですらそうなんだから。
私は「フロイス日本史」を読んで、こいつら善人なんかじゃないと思った。
異教=邪教。多様性を認める気持ちがゼロ。異教徒は人間ですらないと信じている。
実に素朴にそう考えているのだから恐ろしい。
こう思ってしまうのは、万物に神が宿るという考えをフォーマットされている日本人だからなのだろうか。
イエズス会の歴史的評価が変わり始めたのは、
戦国時代に日本人奴隷が世界で売買されていたという歴史的事実が、
2000年代以降に判明したからのようだ。
専門家ですら「捏造ではないか」と疑うほどの新事実だったらしい。
「大航海時代の日本人奴隷-増補新版」からの知識なのだが、
ローマ法王的には日本人奴隷を禁止されているのだけれども、
必要悪として教会も黙認してるのが現状だったのだそうだ。
天正少年使節の仕掛け人でもあるヴァリニャーノも、
少年たちに悪いものは見せないようにという指示をスタッフに出していたようなのだが、
それがどこまで徹底できていたのか興味深い。
何年もヨーロッパを旅して、少年たちが一切の矛盾に気づかなかったのだとしたら、なんともおめでたい少年たちだと思う。
ちなみに教会側は少年たちの言葉を捏造して、
そういった悪行を正当化するなどということもおこなっている。
矛盾に気付きまくりで怒って暴れまくる天正少年使節を描いたドラマがある。
「MAGI 天正遣欧少年使節」だ。
アマゾンプライムオリジナルドラマということで、海外ロケも敢行した大作であるが、ほとんど評判が伝わってこない作品で自分もこれまで未視聴だった。今回いろいろ調べている中で、そういやあったなと思い出して一気見してみた。
このドラマはいくつかの史実を踏まえて、大きく脚色してるのだとは思うのだが、見ていてそれを判別する自信が段々と無くなっていった。後でしっかり資料を読み込んでおかないといけないと不安になるドラマだった。東方の三賢者に引っ掛けて三人+欠員対策の補欠一人だったとかマジ?
(ドラマではこの後にチャンバラになる)
ドラマは少年たちが日本に帰国する直前で終わっているが、
前述しているように「少年少女人物日本の歴史」は帰国した後も続く。
漫画の最後は、
中浦ジュリアンが拷問にあっても信念を曲げずに殺されるという、後味の悪いものだった。
調べてみると、共に拷問を受けたクリストヴァン・フェレイラというカリスマ司祭は責め苦に耐えかねて棄教したのだそうだ。彼こそがハリウッド映画化もされた遠藤周作「沈黙」の話の発端になった人物なのである。正直、カッコわる、と思ってしまう。
世の中の矛盾にいちいち噛みついていたらキリがない。
軋轢ばっかり増えて、ひとつのことも満足にやり遂げられないかもしれない。
当時のキリスト教会が抱えていたような矛盾は当然いまを生きる我々も抱えているのだろう。
大人たちは汚い!と文句ばっかり言えるのも「少年」らしさではあるけども、
ドラマ「MAGI」はちょっと大所高所から文句言い過ぎな気はする。
スカッとする部分はあるけども、リアリティが大きく欠けている。
ドラマ10話の後に、豆知識番組みたいなのが9話分もあるのだが、
その中で棄教した千々石ミゲルの墓からロザリオを発見したという近年の新発見を知れたのは良かった。
米国に住んでいるメキシコ人やフィリピン人が読みたそうな漫画ですね....
by サンフランシスコ人 (2023-03-16 06:15)
私は次の言葉を思い出しました。
「歴史には光と影がある。」
by hondanamotiaruki (2023-03-16 08:03)
今日3月17日は咸臨丸がサンフランシスコへ到着した日です.....1860年サンフランシスコ市は勝海舟や福沢諭吉らを大歓迎....勝海舟や福沢諭吉らが宿泊した場所へ行きました...一年位まであった銀行は消滅しました...
慶應義塾大学が、福沢諭吉が主人公で米国人向けのmangaを出版出来ないでしょうか?
by サンフランシスコ人 (2023-03-18 03:39)
私は子供の頃から坂本龍馬の逸話に親しみました。
色んな漫画が龍馬の師匠である勝海舟の渡米エピソードを描いています。
最も優れたものは「みなもと太郎」の「風雲児たち幕末編」で、そのエピソードは単行本の22と23巻に描かれています。
「風雲児たち」は最も優れた漫画として世界に伝えたい漫画でもあります。作者の「みなもと太郎」はこの作品を40年以上描き続け、作品を書き上げることなく世をさりました。
「風雲児たち」におけるブルック船長のエピソードは私のブログでも紹介しています。よかったらご覧ください。
https://ihondana.blog.ss-blog.jp/2019-12-07
by hondanamotiaruki (2023-03-18 05:14)