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殺人罪で告訴されていた本田宗一郎。伊藤正孝『欠陥車と企業犯罪―ユーザーユニオン事件の背景』を読んでみた [名作紹介]

最近、本田宗一郎についていろいろ調べていた。
本田宗一郎といえば偉人である。
今や子供向けの偉人伝漫画も出てるぐらいの人だ。

自分が最初に読んだのは大人向けの漫画だったが、
その中での「暴力で部下を追い込んで退社させまくる」というエピソードが強く印象に残っていたので、子供向けとしてどうアレンジされているのか気になったのが、いろいろ調べるキッカケになった。小学館の子供向け学習漫画では、DV描写はずいぶんとコミカルに、マイルドになっていた。

これを「愛の鞭」だとして美談にするのも現在では色々無理がある。
社会的に成功を収めたからといって、人格まで一流だったに違いないと思い込んでしまうのは悪い癖だ。この人は「猛獣」というイメージがピッタリくる。

 
そんななか、本田宗一郎がかつて殺人罪で刑事告訴されていたということをネットで知った。
ホンダが発売した車に欠陥があったと、そのことで訴えられたのだ。
そんなことは本田宗一郎物語にも小学館の学習漫画にも描かれていなかった。
「本田宗一郎本伝」には殺人罪での告訴までは描かれていないが、騒動については少し触れている。
n360.png
 
さらに驚いたのは、
本田宗一郎を殺人罪で刑事告訴した人が、恐喝で逮捕されていたということである。
なあんだ、ゆすりタカリのたぐいだったのねと、その時は安堵した。

ウィキペディアによる「ユーザーユニオン事件」の概要
1960年代後半に欠陥車に関する報道が出始めた時代を背景に1970年5月に欠陥車被害者団体「日本自動車ユーザーユニオン」(以下、ユーザーユニオン)が誕生。「ユーザーユニオン」は欠陥車による被害者から相談を受けつつ、欠陥車であることの立証をするために自動車テストをして、欠陥車を生産した自動車メーカーに対応を迫っていた。また、ユーザーユニオンは1968年2月に自動車事故を起こしたホンダ・N360の運転手への有罪判決について「事故はN360の欠陥が原因であり、運転手に過失はない」とする再審請求をしたり、自動車死亡事故について遺族に自動車会社幹部らを「未必の故意」の殺人罪で刑事告訴させるなどしており、大企業に対して戦闘的な団体として世間に知られていた。

1971年11月2日にユーザーユニオン幹部2人(二級整備士資格を持つ元日産社員の専務理事とヤメ検の顧問弁護士安倍治夫)が恐喝未遂容疑で東京地検特捜部に逮捕された。
捜査によって、以下の1971年3月から10月までの自動車メーカーとの示談交渉7件(メーカー5社、車種6種)について、恐喝罪や恐喝未遂罪として起訴された。

本田技研工業に対して、軽乗用車N360の欠陥を理由に、被害者192人の分として16億円の支払いを要求(恐喝未遂)
同じく被害者の遺族に委任されて8000万円の喝取(恐喝既遂)
トヨタ自販に対し、ダンプカーのトヨタDA110の欠陥を理由に、ダンプ業者7人に委任されて1200万円を喝取(恐喝既遂)
トヨタ自販に対し、乗用車のコロナマーク2の欠陥を理由に、事故死者の遺族に委任されて、1億8000万円の要求(恐喝未遂)
日産自動車に対し、商業車のサニーバンVB10の欠陥を理由に、被害者から委任を受けて1500万円を要求(恐喝未遂)
日産ディーゼル販売に対し、ダンプカーのニッサンUDの欠陥を理由に、ダンプ業者3人に委任されて1億0354万円を要求(恐喝未遂)
日野自動車に対し、ダンプカーのKF700の欠陥を理由に、ダンプ業者の委任を受けて550万円を喝取(恐喝既遂)

捜査の過程において、示談交渉の際に「マスコミや国会で追及する」「次々と告訴や民事訴訟をする」「武装蜂起する」旨の言葉が出たこと、16億円事件では192人の分としていた被害者の委任状は64人分しか取っていなかったこと、スズキ系ディーラーから約1400万円の援助を受けていたことが明らかになった。

ちなみに恐喝の裁判は15年も争い、
執行猶予がついたがユーザーユニオン幹部二人は有罪となった。

そのことについて書かれた本があったので、興味を持って取り寄せて読んでみた。
どんなタチの悪い奴が出てくるのだろうと期待した。

伊藤正孝『欠陥車と企業犯罪―ユーザーユニオン事件の背景』である。
それを読んで「あっ」と思った。
冒頭から思っていたのと全然違う流れなのである。

清貧に生きる人権派弁護士の平和な日常の朝が、
国家権力によって踏みにじられる、
そんな導入部分だったのである。

この流れは…、
巨大企業が一般人の切実な訴えを握り潰す物語ではないか!??

 
つづく

 

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欠陥車と企業犯罪―ユーザーユニオン事件の背景 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

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  • 作者: 正孝, 伊藤
  • 出版社/メーカー: 社会思想社
  • 発売日: 2020/04/05
  • メディア: 文庫



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コメント 2

通りがかり

せっかくのいい記事で参考になることがいっぱいです。けど、著者への非難が朝日新聞だからとか、ユーザーユニオンが人権派みたいなとか、イスラム教に改宗したとか、本論とは全く無関係なところを突っついて同情できないは、余計なことかとおもいました。こういう批判のされ方を私がもしされたら怒っちゃいます。

それでもよく調べてあるなあと、感心しました。そこは見習わないと。くりかえしますが、いい記事でした。
by 通りがかり (2022-06-08 07:44) 

hondanamotiaruki

ありがとうございます。
あまり高尚なことは分からないし書けないので、感じたことはなるべく正直に書くをモットーにやっておりますので、その結果ご不快な思いをさせたのは申し訳ないです。まあその程度の駄文ということでバランスが取れてるといいな!
by hondanamotiaruki (2022-06-09 21:04) 

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