プレステの歴史は「所さんのまもるもせめるも」から始まっていた？：ムゲンホンダナ（本棚持ち歩き隊!!）：SSブログ

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1993年のレトロフューチャー、プレステ..｜私が株を買わない理由はセガファンだったか.. ブログトップ

プレステの歴史は「所さんのまもるもせめるも」から始まっていた？　[ゲーム] [編集]

西田宗千佳の『美学vs.実利「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史』という本を読んだ。
任天堂vsセガの本は色々と読んだが、プレステが絡む話は初めてで新鮮だった。

スーパーファミコン版CD-ROMがプレイステーションの前身だったという話は、やる夫のまとめが面白かった。そのまとめではプレステの生みの親であり、任天堂に裏切られ復讐の炎を燃やす久夛良木健の役を「皇国の守護者」のキャラクターで表現していたのが印象的。

今回読んだ本、「美学vs実利」では、そのまとめ以降の栄光と挫折、PS３の頃まで語られている。2008年初版。

（画像はファミコン通信1991年7月26日号。任天堂とソニーの提携解消発表直後で情報が錯綜している）

その本の中で、「所さんのまもるもせめるも」の名前が出てきたのが衝撃的だった。
「所さんのまもるもせめるも」は1987年の発売されたファミコンソフト。
開発はHAL研究所。販売はエピックソニーレコードだ。

エピックソニーは他にも「田代まさしのプリンセスがいっぱい」や、「TM NETWORK LIVE IN POWER BOWL」など、芸能人を起用したゲーム作りが目につくのがいかにもレコード会社っぽい。スーパーファミコンではポケモンで知られるゲームフリーク制作の「ジェリーボーイ」を発売している。

土壇場で任天堂に契約を破棄された久夛良木健は、プレイステーションを独立したゲーム機として売り出すべく、同じソニーグループでゲームを作ってたエピックソニーに協力を依頼する、というのが話の流れだ。久夛良木健はソニーがMSXに参加した時にサードパーティーに不義理を働いている立場。同じサードの立場であるエピックソニーに動いてもらい協力を取り付けるという作戦だったようだ。

そのエピックソニーの創始者で、久夛良木健に協力するのが丸山茂雄という人。
丸山ワクチンの開発者である丸山千里の長男で、小室哲哉のマネージャーなどもやっていたそうだ。
ゲーム作りにも本気で取り組んでいたそうだが、そっちの才能はなかったようで、久夛良木からも散々ひどいことを言われたと当時を回想して苦笑している。しかし当時はブームだったので「所さんの〜」はめちゃくちゃ売れたそう。

ちなみに「美学vs実利」におけるその章のタイトルは、『「クソゲー」メーカーに、久夛良木来る』。

エピックソニーからSME（ソニーミュージックエンタテインメント）が出来、その子会社としてプレステのSCEが誕生するという流れ。久夛良木健という人はかなり尖った人だったらしく、ソニー本社にいたままでは潰されると危惧したソニーの社長が、子会社に出向させたということらしい。丸山茂雄は、アーティストをプロデュースするノウハウを使って、久夛良木健をまもるもせめるもすることになる。

ちょうどその久夛良木の護衛業から丸山が離れた時に起こったのが、プレイステーションポータブルの設計ミス騒動の炎上発言事件。クレームに対して久夛良木が「著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人はいない。」と反論したことが話題となった。俺が久夛良木健を強く印象づけられたのもこの事件だったような気がする。

炎上当時、プレステはこの世の春を謳歌しており、「ああ、久夛良木という人は成功しすぎておかしくなってるんだな無理もない」と単純に思ったが、「美学vs実利」を読むと、昔っからこういう人みたいである。まあその手腕はすごい。憎まれっ子世にはばかるというけども、出世するのはこう人なのかねと最近思う。

元セガの社長が思いつくままに書いたような本、「元社長が語る! セガ家庭用ゲーム機開発秘史 ~SG-1000、メガドライブ、サターンからドリームキャストまで~」も読んだけども、こっちも色々とひどかった。よくよく考えてみれば、スティーブジョブスだってそうだし、本田宗一郎だって、エジソンだって。

　
それにしても本のサブタイトルにソニーの名前が無いってすごいね。
ソニーvs任天堂ではなく、チーム久夛良木vs任天堂。

ソニーといえば、かつてはイノベーションを連発する尖った社風が世界中に知られており、そのイメージがなぜ現在は没落したのかとよく語られるが、1990年代ですら「金太郎飴のような社員になれ！」と同調圧力をかけて社員のモチベーションを奪う社風になっていたと「美学vs実利」に証言がある。

おすすめの一冊だ。
　