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体罰の無い国日本!!「風雲児たち」キャラ多数出演!江森一郎「体罰の社会史」 [名作紹介]

「戦前の少年犯罪」を読んだ流れで、江森一郎の「体罰の社会史」という本を読んだ。

ルイス・フロイスの時代から長い間、外人にとって日本は体罰の無い国として驚かれたというが、そのことについて詳しく調べた本。古い本かと思いきや、1989年に出版されてその後、新装版が出ており、さらに自分が購入したのは2019年の第四刷である。時代を超えて大人気じゃ無いですか。

完全に日本に体罰がなかったかというと、ジャンルによるようだ。
遊女の世界とか、丁稚や下僕に対する体罰はあったらしい。

基本的に子供に対する虐待という意味での体罰がなかったという話なのだが、それでも完全になかったということもない。そもそも後述する著名人たちが「体罰よくない」とわざわざ書き記すぐらいなのだから、体罰はあったのだろう。それでも鞭でしばくのが当たり前の西洋人たちが「体罰が無い!」と驚くレベルで体罰が少なかったのは間違いない。

 
本書に対するちょっと違う楽しみ方だが、みなもと太郎の「風雲児たち」に出てくるキャラクターが次々と登場するのが面白い。ファンはそういう文脈でも読んでみる価値があるのでは無いだろうか。意外な人物が、意外な体罰観を持っていて驚くのである。

●それではまず体罰の無い国、日本に驚く外人のコメントから紹介。

ツェンペリー
体罰の社会史1.png
彼等(日本人)は、決して児童を鞭(むちう)つことなし。
…(日本では)ヨーロッパの文明国民の往々時代に課する如き残酷苛烈なる罰を、かつて見たることなし)

オールコック
体罰の社会史6.png
(日本人は)決して、子供を撲(う)つことはない。文化を誇るヨーロッパの国民が、哲学者たちの賢明なる注意を他にして、その子どもたちに盛んに加える、この日人道的にして且つ恥ずべき刑罰法を、私は日本滞在中見たことがなかった。

シーボルト
体罰の社会史7.png
西洋にある様な、学校の処罰は少しもなく、その上我国の様に、先生から体罰を受ける様な日本の門弟は、是がために不名誉となって恐らくはその家庭から放逐されてしまうであろうし、又学友の眼には悪人となるであろう。児童教育にあたっても、少なくとも知識階級には全然体形は行われて居ない、是がため、私は我国で非常に好まれる鞭刑を見たことがなかった。

●そして日本人たちは体罰に関してどういう価値観を記していたか。
 
林子平
体罰の社会史4.png
「風雲児たち」をお読みの方はご存知だろうけども、林子平は生涯独身。
それでも子育てに関することを書いている。

道を知らない父がその子を取り扱う方法が二つある。

一つはその子の善悪・邪正に少しも心をかけず、ただ愛しに愛するのみで、十九、二十歳に至るまでも「坊」と呼んだり…我がまま一ぱいに育てることで、それゆえその子は道知らずに育ち、そのうちに悪に染まりやすくなり、ついに無頼人となってその子を捨てる(と同じ)ことになってしまうのである。

もう一つは、折檻して叱り敲(たた)く事をのみ子を育てる道と心得て、事ごとに叱り、事ごとにののしり打ち敲くのである。叱られて泣き、打たれて逃げる間はまだよい。その子が十歳以上になりプライド(「人意地」)がつくに従って、叱られれば怨み、打たれれば怒って父子の間に確執を生じ、ついに不孝の所業をすることに落着して、その子を捨てる(と同じ)ことになるのである…。

大塩平八郎
体罰の社会史3.png
「風雲児たち」ではかなり魅力的に描かれている大塩平八郎は体罰容認派だったようである。
彼の私塾である洗心洞塾の入学の誓約のうち、「塾が認めないジャンルの本を読んでたら鞭打ち」など、三箇条が書かれているそうだ。しかし彼が学ぶ陽明学はもともと体罰禁止の思想なので、矛盾があるらしい。

ちなみに、「体罰の社会史」によると、大塩平八郎は近藤重蔵と面識があり、互いに「畳の上では死ねない人」という感想を残しているというから面白い。
体罰の社会史5.png

「体罰の社会史」によると、忠臣蔵で有名になった山鹿流軍学は体罰禁止らしい。
ふと疑問に思ったのが、山鹿流軍学を修めた吉田松陰のことである。愛はあるが、かなり体罰気味に育てられた人物として知られている。
体罰の社会史2.png

妹の回顧談によれば松蔭は、幼少時、実父と叔父から、「三尺の同時に対するものとは思われざる」厳格な教育を受けたという。しかし、彼の運営した松下村塾の規則では罰としては「坐禅その他の罰があるが、実際には、罰を与え又受けたものはなかった」と言われる。

●最後に外人勢ではただ一人、日本の体罰を記した外国人の話を

高級な手法で捕縛されてしまったことでお馴染みのゴローニンが、日本の縄術について手記を残しているらしい。
体罰の社会史8.png
「後に知ったことだが、日本では縄で縛るということは至極ありふれた事で、学校で生徒が怠けたり、悪戯したりすると、その罰の軽重に応じて、ある時間罰として後手に縛るのである。」という手記を残しているのだそうだ。

●まとめ
2020年施行の改正児童福祉法などに「体罰禁止」が明記されたことを受けて厚生労働省が、どんな行為が体罰にあたるかを具体的に示すガイドライン案を示したことが話題になった。お尻を叩いて叱るのも体罰なんだそうだ(当然だけど)。

自分の親は、「子供の頃は動物と同じだ」と言って憚らなかったが、もちろん世間一般の常識的な態度で子供を叱っていた。

冒頭で触れた本、管賀江留郎の「戦前の少年犯罪」では、子供に甘かったがために起きた少年犯罪を色々と紹介している。犯罪にまで至ってしまうのは本人の資質による部分も大きい気もするが、躾も大事だと思う。さて、再び体罰の無い国になろうとしている日本は今後どうなっていくのであろうか。
 


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  • 作者: 江森一郎
  • 出版社/メーカー: 新曜社
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