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安彦ガチャを回し続けた1年。締め括りは杉田俊介「安彦良和の戦争と平和」 [名作紹介]

杉田俊介の「安彦良和の戦争と平和」という本を読み終わった。
安彦良和ファンが熱く語って対談して、みたいな本だ。
いろいろ難しいことが書いてあったので、中盤はほとんど読み飛ばしてしまったが。

安彦良和の戦争と平和 ガンダム、マンガ、日本 (中公新書ラクレ)

安彦良和の戦争と平和 ガンダム、マンガ、日本 (中公新書ラクレ)

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/02/10
  • メディア: Kindle版


昔から安彦良和というのは俺にとってよくわからない作家だった。
「ジャンヌ」とか、漫画少年が萌える題材を数多く扱いながら、常に微妙な出来にしているイメージ。あまり書店に置いてないし、単行本の定価も高く、しかも掲載誌が分からず単行本はビニールでシュリンクされて中身が確かめられないから一か八かジャケ買いするしかない印象。たまに巡り巡って中身が確かめられた作品を読んでみれば、なんじゃこりゃあという内容。

漫画であって、漫画でない。
アニメーター出身漫画家にありがちな、複数コマ使って動きを出そうとするテンポの悪さ。
 

それでも世間はガンダムの人と絶賛する。
島本和彦が自身の学生時代の頃を描いた「アオイホノオ」の中で、学友から「安彦良和やねんで!」同調圧力をかけられるシーンがある。
王道1.jpg

それに対し島本の分身である主人公のホノオモユルは「濃くてマニア好み」「あの極端な立ち方をする。。。」などリアクションしていて、目からウロコが落ちた。そういう解釈でもいいんだなあって。

ちなみに「BS漫画夜話」の安彦良和回を近年縁あって試聴したところ、「何が面白いのか分からない」とかメインコメンテーターに言われていて、ああそんな昔からそういう解釈で良かったんだと思い知らされた。「辻政信が描きたいだけ」という解釈になる程!と思った。(意訳)
大杉2.png
(つまり安彦良和はオッサンが描きたいのだと言いたいのである。天の血脈でいえば嬉田貞一が真の主人公ということになる)

自分が初めて安彦良和すごいって思えたのは「ガンダム・ジ・オリジン」だった。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN コミック 1-24巻セット

機動戦士ガンダム THE ORIGIN コミック 1-24巻セット

  • 作者: 安彦 良和
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/02/26
  • メディア: コミック


フリーハンドみたいなリズミカルな線でモビルスーツや戦艦を大量に作画。すごい技量だと感心した。漫画として面白く感じたのはシャアのオリジナルストーリーが始まってからだけども。

そんな俺が、ふと検索して見つけた安彦良和作画の福沢諭吉の一コマから興味を持ち、「王道の狗」を購入したのがほぼ1年前。それキッカケで次々と安彦良和作品を購入しては電子化。

やっぱり大半はいまひとつ性に合わないのだが、欲しいの来るまでガチャを引き続けるように買い集め、今や俺の安彦良和フォルダが火を吹く感じだった。

購入したのは以下の作品(購入順)
「王道の狗」文庫4巻★★★★★
「天の血脈」8巻★★★
「虹色のトロツキー」
「蚤の王」
「神武」文庫4巻
「クルドの星」文庫2巻★
「我が名はネロ」文庫2巻★★★
「三河物語」★★★
「乾と巽」2巻
「完全版アレクサンドロス世界帝国への夢」
「韃靼タイフーン」文庫3巻★★
「週刊マンガ日本史 勝海舟」

「戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」(表紙)★★★
「CONTINUEVol.60」(インタビュー掲載)★★★★★
「安彦良和の戦争と平和」(ファンブック)★

これだけの量を1年かけて買い集めてしまった。
読んで微妙な内容だと思うものが多いのにもかかわらず、である。
なぜなのか。ちょっとすごくない?

「三河物語」を読んだあたりで、安彦良和の適正を見抜いたような気がした。
この人の適正は「いじけ漫画」だ。
いじけ描写を描かせたら圧倒的。
「王道の狗」の井上馨が至高。
陸奥1.png
「三河物語」もいじけたじじいがいじけ続ける漫画で良かった。

あと明治の偉人は面白く書けるのに、古代日本史のキャラクターは全然面白くない。想像に頼る部分が大きいのでキャラクター造形に深みがなくて記号的だ。ヤマトタケルも読んだが、全然ピンとこない。古代史マニアおじさん連中の目を意識した漫画という印象だ。

現在連載中の「乾と巽」は正直うーん、って思っていた。
外人よりも、日本人を描かせた方が面白いと思うんだよな。

…と思っていたら、この先に「乾と巽」で大杉栄が登場すると「安彦良和の戦争と平和」で作者が語っていて「おお!」と思った。

大杉栄は「天の血脈」で登場していた実在の人物。
悲劇的な最期までは描かれることがなかった。
大杉1.png
大杉栄は「虹色のトロツキー」に登場する甘粕正彦に殺される事になるそうだ。

みなもと太郎の風雲児たちの外伝「松吉伝」で二人の因縁を知って、ずっとどういうことなのか気になっていた。

ネットで文章で読んでもいまひとつイメージが湧かない甘粕事件。
世間的に甘粕正彦は「悪」らしく、「虹色の〜」の甘粕もそれに準じている。
大杉4.png

しかし「松吉伝」は甘粕を好意的に解釈している。
大杉3.png

「虹色の〜」は松吉以前に描かれたものだが、
風雲児の推薦文描いてるぐらいだから、安彦良和も「松吉伝」は読んでいるはず。
その影響で「乾と巽」の描写が変わってくる可能性がある。
どんな落とし所になるのか、今から楽しみだ。

 
ちなみに「天の血脈」のあの結末は、世間で噂されているような打ち切り投げやりエンドではなく、当初からの構想通りで、物議を醸したあのラストは作者は自信を持っているという…。

そりゃないわー。。。
 

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