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解説漫画はキャラが立たなければ失敗する!井上純一の「キミのお金はどこに消えるのか」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

井上純一の「キミのお金はどこに消えるのか?」が面白い。
漫画の内容も面白いのだけれども、漫画の構成そのものが画期的だと思う。

そもそもなぜ中国嫁日記の作家が経済について語るのか?というクエスチョンがあるのだけれども、そのアンサーの一つとして「解説マンガはキャラが弱い」から、「嫁日記」という強力なコンテンツが流用できる立場になった井上純一氏は面白い解説マンガが描ける!…という理屈がひとつある。
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前回紹介した、雁屋哲の解説漫画「まさかの福澤諭吉」も、問題は色々あるがキャラも弱かった。「真面目か!」って感じの男女の先生が主人公。作画のシュガー佐藤も無味無臭とスピードが売りの作家なので、とにかく薄い。雁屋哲本人を主人公にして、島本和彦に無理やり描かせれば面白くなったのにと思う。

加えて、「キミのお金は〜」は中国嫁こと月さんとの実際のやりとりを漫画にしているので、展開が予定調和にならずリアル。作者の井上純一の思い込みで遠回りに解説しなきゃと思っているところを、段取り無視した月さんのツッコミでダイナミックに話が動いていく。
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雁屋哲の「まさかの福澤諭吉」は、あらゆる反論を想定して、とにかく嚙んで含めるように説明しようとしているので、とにかく冗長だ。悪いことに、その解説に対するリアクションも、自分の脳内から出たものなので、とにかくわざとらしい。
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「まさかの福澤諭吉」の上のコマ、俯瞰でみてみると、自分の書いた作品に対して「わかりやすい!」「素晴らしい!」と自画自賛している構図になっていませんか。(こういうのをみると、佐藤正の「燃えるお兄さん」の最終回を思い出すんだよなあ。。。)

「キミのお金は〜」はこないだ2巻が出たばかり。
そこに登場するマルサスって人が面白かった。
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超天才で善人だったそうで、「人口論」という本を書いた。
食料の生産スピードは一定だが、人口増加スピードは加速するので、将来必ず深刻な食料危機になるから人口抑制のための対策論を訴えたのだという。これは当時、あらゆる国家レベルで影響を与え、悪いところではナチスドイツや、中国の一人っ子政策なども生んだという。

マルサスの死後、70年後にフリッツ・ハーバーの発明で化学肥料が格段に進歩し、マルサスの論は陳腐化した。「キミのお金は〜」では、どんな天才でも100年後は分からないので、身の丈にあった分かる範囲の未来以上のことを考えて現状をダメにするのは本末転倒だと語っている。

「キミのお金は〜」の影響で、俺はマルサスの「人口論」は漫画版を買ってしまった。非常に面白かった。ちなみにハーバーは「栄光なき天才たち」の2巻に登場している。

むかし、美味しんぼで海原雄山が「飽食の時代など、ほんの一瞬の出来事だ!」みたいに語ってたのも思い出す。ある意味マルサス的であり、実に雁屋哲らしい物言いだ。

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