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32年前に描かれた少年ジャンプ最後の巨大ロボット漫画?黒岩よしひろの「魔神竜バリオン」 [名作紹介]

少年ジャンプを愛読していた子供のころ、巨大ロボットものが何故少年誌で連載されないのかということをずっと疑問に思い続けていた。

巨大ロボと変身ヒーローは今も子供が好むものの代表だと思う。
俺が子供のころ、いわゆるサンライズのガンダム系アニメと、スーパーヒーロタイムがセットで土曜の夕方に放送されていた。子供にとって毎週待ち焦がれる夢の時間である。

変身ヒーロー漫画は桂正和が「ウイングマン」「ヴァンダー」などでチャレンジしていた。マジンガーZが少年ジャンプで連載していたことは、奇面組に書かれていたので知ってはいたんだけど、後に続くものが一切ない。何故なのか。ちなみにマジンガーZも掲載まで紆余曲折あったと永井豪の「激マン」に描かれていたような。。。(いま手元に資料がない)

そこに現れたのが黒岩よしひろの「魔神竜バリオン」である。
天才科学者の父が残したバリオンシステムを守るため、悪のひみつ帝国と戦う少年の物語である。
87年のジャンプ450万部時代の作品だ。
ちなみに後で知ったことだが、連載会議で二度落とされたという。

黒岩よしひろはのちに「鬼神童子ZENKI」をスマッシュヒットさせる。しかし当時の黒岩は前年、連載デビュー作のサスケ忍伝でいわゆる10週打ち切りを食らっており、結論からいえばバリオンも同じ道を辿るという、不遇の時代の入り口でもがいていた。

バリオンがあっという間に終わってしまったのは子供心にショックだった。
巨大ロボットものは漫画に向かないのかなーと、おぼろげながらに思い始めていた。
現在、巨大ロボット漫画というジャンルを振り返ってみると、「機動警察パトレイバー」「ファイブスター物語」「ぼくらの」、これぐらいしか成功例無いんじゃなかろうか。やはりアニメのように動かないとダメなんだろうか。漫画とは相性が悪いジャンルなのだろうか。

当時、バリオンの失敗にガッカリして単行本を読み返して思ったことは、「バリオン弱い」である。けっこう1巻から苦戦が続いて息苦しい。爽快感がないと思った。同じことを今読み返しても感じる。作者としては初戦からハラハラドキドキの息詰まる攻防を描きたかったのだろうけれども、裏目に出てしまったのではなかろうか。もちろん個人的な後出しジャンケン的感想である。

 
さて、バリオンの良いところを語っていきたいと思う。

小型アンドロイド、アリス。
バリオン1.png
独立して歩き回って、いざとなったらロボットに接続されて主人公のアシストする。巨大ロボットアニメ、「重戦機エルガイム」のチャムファウ(84年)や、同デザイナーによるファイブスター物語(86年)のファティマシステムを合体させたようなアイデアだが、バリオンと聞いて真っ先に思いつくのはこのキャラクターである。もっと続けば、主役回もあったかもしれないと思うと惜しい気がする。

バリオンのデザインは機甲戦記ドラグナー(87年)っぽい。
バリオン2.png
バリグナーかもしれない。
起動するとフェイスオープンして口が露出。
必殺技の時にフェイスロックするという、逆F-91仕様。

尻尾があるというのはアイデンティティか。これが良いのだ。
バリオン5.png
初期はもっと有機的なロボットを目指していたらしい。
もっとガンダムみたいにしろというジャンプ編集部からの要請があったそうだ。



燃料は水だという。
それを核エネルギーの100倍に変換させてしまうバリオンシステムで動いている。
バリオン3.png
そんな便利なバリオンシステムが悪のひみつ帝国に渡らないように、武装した鎧の中に閉じ込めたがのが魔神竜バリオン!…という設定が秀逸。

操作系統の説明がちゃんとあり、細かい動きはキーボード入力というのが面白い。
バリオン4.png
アリスがいるのだから音声入力でいいとも思うのだけれども、まだ当時はそんな発想がなかったのだろう。(85年のドラえもん映画に登場するザンダクロスってどうだったっけ。。。)

バリオン以外のロボットのデザインは評価が別れるところだと思う。
作者も公言しているが、永井豪の影響が強いスーパーロボット系である。
バリオン6.png
 
単行本のあとがきで、作者が続編の構想をアピールしている。
描かれたのかどうかは知らないが、少なくとも少年ジャンプで巨大ロボットものが描かれたことはバリオン以後、皆無だと思う。

アレルギーはあると思う。編集にも読者にも。
子供っぽさ、が一番のネックなのではないかと思う。ゲーム業界についても以前、「ロボットゲームは必ず失敗する」業界にトラウマを与え重役を老害化させたロボゲー戦犯は何なのか?」という記事を書いた。

 
四半世紀経って、ジャンプが逃した巨大ロボット漫画の大ヒット作が一つあったと気づいた。
諫山創「進撃の巨人」である。

ロボットではないが、フォーマットは同じである。
巨大なものが襲ってきて、主人公は巨大なものに乗り込んで戦う。

これがロボット漫画の正解だったのである。

 

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