日本初の大ヒット海賊物語の主人公は「俺は海賊にならない!」が口癖。桜多吾作の学研まんが名作シリーズ「宝島」 [名作紹介]
名作アニメ「宝島」のDVD全3巻が、1巻1500円ぐらいの超格安で売られていて古いマニアの間で話題になっている。
アニメ「宝島」は1978年からTV放送。1883年のロバート・ルイス・スティーヴンソンの原作を元に、「あしたのジョー」などで知られる出崎統(でざきおさむ)が大胆に脚色して演出している。
で、この名作アニメ「宝島」を自分は見たことがなかった。
とにかくシルバーというキャラクターがカッコいいという評判だけは、いろんな作家が語っているのを読んできたような気がする。
(画像は萩原一至「バスタード!!」13巻)
この際だからということで、U-NEXTの見放題作品の中にアニメ「宝島」があったので見てみた。
…が、結論から言うと、全話見てみたが、なんかイマイチ乗れなかったのである。
1話はなかなか面白い動きしていて楽しめた。
主題歌とエンディングテーマも良い。
ここんとこ、頻繁に車内で聞いて、歌っているぐらいだ。
なぜハマれなかったのかなと考えるに、子供の頃に繰り返し読んだ、学研名作シリーズ「宝島」の影響があるからではないかと思う。
学研「宝島」は1979年に出版されたマンガで、作画は永井豪原作アニメのコミカライズで知られる桜多吾作(おうたごさく)。表紙と監修を石ノ森章太郎が行なっている。
アレと同じ人物なのか、、、と愕然としたのが、やはり敵役のジョン・シルバーの存在。
アニメのシルバーはロン毛のイケメンだけども、学研版は丸っこいオッサンだ。
アニメでは、シルバーの粋な所作に、主人公の少年ジム・ホーキンスが傾倒していく様が強調して描かれる。出崎統はシルバーを、学校では教えてくれない世間知を教えてくれるチョイワルオヤジとして設定したんだなと言うことがわかる。漫画版のジムは、そこまでシルバーを慕っていない。ページの都合で描けてない可能性もあるけども(ちなみに原作を読むつもりはないので悪しからず)。
視聴者が自分を重ねるジム少年、彼が惚れ込むシルバーがとんでもない大悪党の海賊だったと判明する展開がアニメの大きな山場となる。最近の国民的少年漫画では「海賊王に俺はなる!」と連呼しているのだが、アニメのジムは「うるさーい!死んだって俺は海賊なんかにならないぞう!」が口癖で、真逆なのが面白い。海賊を心底軽蔑しつつも、シルバーの男っぷりの良さに惹かれていく心理はアニメ版の大きな見所になっている。
(漫画版の「海賊なんてならいぞ」の声はワタルの頃の田中真弓で脳内再生されるのだった)
自分があまりアニメ版に惹かれないというのは、理屈というより生理的なものかもしれない。何しろ、漫画版の宝島は当時死ぬほど繰り返し読んだのだ。古書で手に入れて四半世紀ぶりぐらいに読んだのだが、やっぱりよく描かれていると思う。
今回読み返して印象的だったのがシビアな大人たちの描写。
特にスモーレット船長がお気に入り。
出発前にジョン・シルバーの胡散臭さを見抜くが、発起人のトレローニからは小心者扱いでボロクソに非難される。
のちにシルバーの本性が明らかとなり、トレローニから謝罪されるが「私もうかつでした」と謙虚な態度。
なんという洞察力で人格者。
しかしいざ戦いとなればイライラおっさんになるのである。
ガンダムのブライト艦長みたいだ。
他にも、ジム少年に命を助けられたにも関わらず、油断したところを殺そうと狙ってる海賊の描写がいい。話せばわかるの世界じゃないのである。世の中ってものを教えてくれるのだ。
ちなみにこの後、ジム少年は海賊を射殺してしまうのだけども、こういう子供が殺人を犯すシーンは現在の出版コードに引っかかりそうな気がする。襲われたところを身をかわして海に転落させるなどのアレンジがありがちだ。てか、アニメでもそんな感じになってたっけ?
アニメを見ていて一番引っかかったのが、ジョン・シルバーの超人的すぎる身体能力だ。
片足が義足なのに、めっちゃ強いのである。
パラリンピックを見てもわかる通り、五体不満足でも鍛えまくっている人はいるけども、アニメ版のそれは3mぐらいジャンプしたり、一本足で立ってスナイプしたり、とにかくリアリティに欠けるのである。作風に合っていないと思う。
漫画版を読んでいて気になったのが、縛り首にされるのがかわいそうだからと宝島に置き去りにされる海賊の手下たち。でもシルバーだけはコックとして船に乗っている。
原作では拘束されたまま船に乗せられるが、途中で逃げられるという話になっているんだそうだ。アニメ版もそのようになっていて、数年後大人になったジムがシルバーに再会するという脚色がされている。
年取ってもシルバーは相変わらずカッコよかったって感じの演出がされているが、腕相撲で酒代をせびっているしょぼくれた姿、ジムをシカトする態度で、これがベストの結末だったのかなあと思わなくもない。皆さんはどう思うか。
「宝島 COMPLETE DVD BOOK」vol.1 (<DVD>)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ぴあ
- 発売日: 2019/05/23
- メディア: 単行本
「宝島 COMPLETE DVD BOOK」vol.2 (<DVD>)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ぴあ
- 発売日: 2019/06/20
- メディア: 単行本
「宝島 COMPLETE DVD BOOK」vol.3 (<DVD>)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ぴあ
- 発売日: 2019/07/18
- メディア: 単行本
アニメ「宝島」は1978年からTV放送。1883年のロバート・ルイス・スティーヴンソンの原作を元に、「あしたのジョー」などで知られる出崎統(でざきおさむ)が大胆に脚色して演出している。
で、この名作アニメ「宝島」を自分は見たことがなかった。
とにかくシルバーというキャラクターがカッコいいという評判だけは、いろんな作家が語っているのを読んできたような気がする。
(画像は萩原一至「バスタード!!」13巻)
この際だからということで、U-NEXTの見放題作品の中にアニメ「宝島」があったので見てみた。
…が、結論から言うと、全話見てみたが、なんかイマイチ乗れなかったのである。
1話はなかなか面白い動きしていて楽しめた。
主題歌とエンディングテーマも良い。
ここんとこ、頻繁に車内で聞いて、歌っているぐらいだ。
なぜハマれなかったのかなと考えるに、子供の頃に繰り返し読んだ、学研名作シリーズ「宝島」の影響があるからではないかと思う。
学研「宝島」は1979年に出版されたマンガで、作画は永井豪原作アニメのコミカライズで知られる桜多吾作(おうたごさく)。表紙と監修を石ノ森章太郎が行なっている。
アレと同じ人物なのか、、、と愕然としたのが、やはり敵役のジョン・シルバーの存在。
アニメのシルバーはロン毛のイケメンだけども、学研版は丸っこいオッサンだ。
アニメでは、シルバーの粋な所作に、主人公の少年ジム・ホーキンスが傾倒していく様が強調して描かれる。出崎統はシルバーを、学校では教えてくれない世間知を教えてくれるチョイワルオヤジとして設定したんだなと言うことがわかる。漫画版のジムは、そこまでシルバーを慕っていない。ページの都合で描けてない可能性もあるけども(ちなみに原作を読むつもりはないので悪しからず)。
視聴者が自分を重ねるジム少年、彼が惚れ込むシルバーがとんでもない大悪党の海賊だったと判明する展開がアニメの大きな山場となる。最近の国民的少年漫画では「海賊王に俺はなる!」と連呼しているのだが、アニメのジムは「うるさーい!死んだって俺は海賊なんかにならないぞう!」が口癖で、真逆なのが面白い。海賊を心底軽蔑しつつも、シルバーの男っぷりの良さに惹かれていく心理はアニメ版の大きな見所になっている。
(漫画版の「海賊なんてならいぞ」の声はワタルの頃の田中真弓で脳内再生されるのだった)
自分があまりアニメ版に惹かれないというのは、理屈というより生理的なものかもしれない。何しろ、漫画版の宝島は当時死ぬほど繰り返し読んだのだ。古書で手に入れて四半世紀ぶりぐらいに読んだのだが、やっぱりよく描かれていると思う。
今回読み返して印象的だったのがシビアな大人たちの描写。
特にスモーレット船長がお気に入り。
出発前にジョン・シルバーの胡散臭さを見抜くが、発起人のトレローニからは小心者扱いでボロクソに非難される。
のちにシルバーの本性が明らかとなり、トレローニから謝罪されるが「私もうかつでした」と謙虚な態度。
なんという洞察力で人格者。
しかしいざ戦いとなればイライラおっさんになるのである。
ガンダムのブライト艦長みたいだ。
他にも、ジム少年に命を助けられたにも関わらず、油断したところを殺そうと狙ってる海賊の描写がいい。話せばわかるの世界じゃないのである。世の中ってものを教えてくれるのだ。
ちなみにこの後、ジム少年は海賊を射殺してしまうのだけども、こういう子供が殺人を犯すシーンは現在の出版コードに引っかかりそうな気がする。襲われたところを身をかわして海に転落させるなどのアレンジがありがちだ。てか、アニメでもそんな感じになってたっけ?
アニメを見ていて一番引っかかったのが、ジョン・シルバーの超人的すぎる身体能力だ。
片足が義足なのに、めっちゃ強いのである。
パラリンピックを見てもわかる通り、五体不満足でも鍛えまくっている人はいるけども、アニメ版のそれは3mぐらいジャンプしたり、一本足で立ってスナイプしたり、とにかくリアリティに欠けるのである。作風に合っていないと思う。
漫画版を読んでいて気になったのが、縛り首にされるのがかわいそうだからと宝島に置き去りにされる海賊の手下たち。でもシルバーだけはコックとして船に乗っている。
原作では拘束されたまま船に乗せられるが、途中で逃げられるという話になっているんだそうだ。アニメ版もそのようになっていて、数年後大人になったジムがシルバーに再会するという脚色がされている。
年取ってもシルバーは相変わらずカッコよかったって感じの演出がされているが、腕相撲で酒代をせびっているしょぼくれた姿、ジムをシカトする態度で、これがベストの結末だったのかなあと思わなくもない。皆さんはどう思うか。
宝島―海ぞくの宝をさがせ (1979年) (学研まんが―名作シリーズ)
- 作者: 石森 章太郎
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 1979/10
- メディア: -
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