ジャンプ打ち切り漫画列伝、オシャレなサクセスストーリー!幡地英明の「スタア爆発」 [名作紹介]
連載中されている漫画の中でアニメ化されてるものが11、発行部数が450万部でさらに上向く87年の少年ジャンプ。新春に新連載3本柱として喧伝された作品は、どれも売れそうもなさそうなものだった。。。(ただしその一つはジョジョ。)
実際に売れなかったし、どうやって連載会議を通ったんだと今でも疑問なんだけど、アンケート至上主義で知られるジャンプが売れ線だけを狙っていたのではなかったことがわかるシリーズ。
今回紹介するのは幡地英明の「スタア爆発」。
俳優ものである。
エキストラの男の子が、売れっ子女優の相手役として見出されるという、分かりやすい逆シンデレラストーリー。
スタア爆発が連載した1987年は少年マガジンで島崎譲の俳優漫画、「THE STAR」も始まっている。こちらは4年間続き単行本24巻のヒットとなったが、スタア爆発は2巻で終了。俳優漫画というコンセプトは悪くなかったが、両者でどうしてこんなに差がついたのか。
「THE STAR」は熱血していて、荒唐無稽でいかにも漫画だったが、スタア爆発はオシャレ感があり、洗練された大人の読み物という感じがする。
主人公の特技は死んだ父親に仕込まれたタップダンス。ただお金がなくてタップシューズが買えないので、スプーンを靴にくくりつけて特訓しており、その時の癖でお守りがわりにスプーンを今も持ち歩いているというちょっといい話。いかにもジャンプ的ではない。
今も印象的なのが「ピークを過ぎた」というセリフ。
エキストラの主人公を急遽相手役に指名する人気女優の幸田エミリー。ふとしたことから自分に対する世間の評価を聞いて傷ついてしまう。それが「ハッキリ言ってあの女優もピークを過ぎたって感じだもんな」というセリフ。
「ピークを過ぎた」って何?
当時、小学生だった俺には聞いたことのないセリフで衝撃的だった。思えばピークを過ぎるほど生きてない頃に読んでいるのである。このセリフから、読者層に合わなかった作品という印象が強くある。同じページにライバルキャラのセリフがあるけども、劇中では社交辞令をキッチリ使いこなしていて大人の態度である。少年漫画だったら、いつでもどこでもオラオラ系を貫きそうなものだ。
いま読み返してみると絵が上手いなあと思う。
しかしバリエーションが少ない。
主人公とライバルは書き分けというほどの差がなく、女性の顔に至ってはほとんど同じで、もはやあだち充の域である。この辺が結構謎である。
映画会社社長や監督など、レギュラーの脇役の造形がテンプレ的で魅力がないというのも、この漫画の弱点だと思う。
それでもこの漫画の印象的なシーンはいくつかある。
その一つは主人公に想いを寄せるサブヒロインの人枝ちゃんとの初デートするシーンだ。
主人公はデート中に上の空で、私に興味がないと女の子を怒らせてしまう。
そんなことないよと弁解する主人公に、人枝ちゃんは目を閉じて、私の目は一重か二重か興味があるなら答えられるはずと迫る。
そこに主人公の唐突なキス。
驚いた人枝ちゃんはおもわず目を見開く。
そこに主人公の「一重さ…!」というセリフで二人は仲直りする。
もちろん人枝と一重がかかっているのもあって、オシャレな良いシーンだなと思う。
(よくよく考えてみると興味ないの図星突かれて誤魔化してるだけなんだけども)
あと、「主人公が金儲けのために映画を台無しにするのか?銀幕は人々の夢を映し出すものじゃないのか?」という趣旨のことを映画会社の重役に食ってかかるシーン。
それに対する重役の返答が良い。要約すると、思い出補正がかかってるだけでそれは常にそういうものなんだよという様なことを言っている。なかなか趣深いセリフだと思う。もうすでに打ち切りが決まったであろう時期に、作者がアンケート至上主義を肯定するニュアンスのネームを描く。深いし、真理だと俺は思う。
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実際に売れなかったし、どうやって連載会議を通ったんだと今でも疑問なんだけど、アンケート至上主義で知られるジャンプが売れ線だけを狙っていたのではなかったことがわかるシリーズ。
今回紹介するのは幡地英明の「スタア爆発」。
俳優ものである。
エキストラの男の子が、売れっ子女優の相手役として見出されるという、分かりやすい逆シンデレラストーリー。
スタア爆発が連載した1987年は少年マガジンで島崎譲の俳優漫画、「THE STAR」も始まっている。こちらは4年間続き単行本24巻のヒットとなったが、スタア爆発は2巻で終了。俳優漫画というコンセプトは悪くなかったが、両者でどうしてこんなに差がついたのか。
「THE STAR」は熱血していて、荒唐無稽でいかにも漫画だったが、スタア爆発はオシャレ感があり、洗練された大人の読み物という感じがする。
主人公の特技は死んだ父親に仕込まれたタップダンス。ただお金がなくてタップシューズが買えないので、スプーンを靴にくくりつけて特訓しており、その時の癖でお守りがわりにスプーンを今も持ち歩いているというちょっといい話。いかにもジャンプ的ではない。
今も印象的なのが「ピークを過ぎた」というセリフ。
エキストラの主人公を急遽相手役に指名する人気女優の幸田エミリー。ふとしたことから自分に対する世間の評価を聞いて傷ついてしまう。それが「ハッキリ言ってあの女優もピークを過ぎたって感じだもんな」というセリフ。
「ピークを過ぎた」って何?
当時、小学生だった俺には聞いたことのないセリフで衝撃的だった。思えばピークを過ぎるほど生きてない頃に読んでいるのである。このセリフから、読者層に合わなかった作品という印象が強くある。同じページにライバルキャラのセリフがあるけども、劇中では社交辞令をキッチリ使いこなしていて大人の態度である。少年漫画だったら、いつでもどこでもオラオラ系を貫きそうなものだ。
いま読み返してみると絵が上手いなあと思う。
しかしバリエーションが少ない。
主人公とライバルは書き分けというほどの差がなく、女性の顔に至ってはほとんど同じで、もはやあだち充の域である。この辺が結構謎である。
映画会社社長や監督など、レギュラーの脇役の造形がテンプレ的で魅力がないというのも、この漫画の弱点だと思う。
それでもこの漫画の印象的なシーンはいくつかある。
その一つは主人公に想いを寄せるサブヒロインの人枝ちゃんとの初デートするシーンだ。
主人公はデート中に上の空で、私に興味がないと女の子を怒らせてしまう。
そんなことないよと弁解する主人公に、人枝ちゃんは目を閉じて、私の目は一重か二重か興味があるなら答えられるはずと迫る。
そこに主人公の唐突なキス。
驚いた人枝ちゃんはおもわず目を見開く。
そこに主人公の「一重さ…!」というセリフで二人は仲直りする。
もちろん人枝と一重がかかっているのもあって、オシャレな良いシーンだなと思う。
(よくよく考えてみると興味ないの図星突かれて誤魔化してるだけなんだけども)
あと、「主人公が金儲けのために映画を台無しにするのか?銀幕は人々の夢を映し出すものじゃないのか?」という趣旨のことを映画会社の重役に食ってかかるシーン。
それに対する重役の返答が良い。要約すると、思い出補正がかかってるだけでそれは常にそういうものなんだよという様なことを言っている。なかなか趣深いセリフだと思う。もうすでに打ち切りが決まったであろう時期に、作者がアンケート至上主義を肯定するニュアンスのネームを描く。深いし、真理だと俺は思う。
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タグ:打ち切り ジャンプ打ち切り漫画列伝
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